福岡県北九州市に拠点を構える日興金属。
ニッケルや銅を中心とした非鉄スクラップのリサイクル事業を展開し、発生元から回収した金属資源(未加工の金属スクラップ)を高品質な金属原料として再生している。
今回MIRUでは、21年から代表取締役を務める武内勇太氏と26年2月に赴任した営業部長・谷野幸平氏を訪問。
工場を案内いただきながら、同社の歴史や強み、そして金属リサイクル業界の未来について話を伺った。
「スクラップを資源に変える」職人たちの現場
現在の日興金属は、ニッケル系スクラップが約6割、銅系スクラップが約4割を占める。
月間取扱量は約1,000トン。しかし、この数字だけでは同社の特徴は語れない。
工場を見学して最も印象的だったのは、徹底した選別作業である。
一般的なスクラップ業者が扱わないような、粉状の加工屑や鋳物工場から発生する研磨粉、製造工程で発生した複雑な混合物なども、日興金属では重要な金属資源として取り扱う。
武内社長は語る。
「我々が扱う金属資源は、いわゆる“裾物”と呼ばれるような分野を含みます。発生元から見ると不要、無価値のものもありますが、成分を分析し、異物を除去し、品質を管理することで立派な金属原料になります。」
工場内では、ベテラン作業員が目視でニッケルを含有する合金を選別していた。
蛍光分析機械に頼るだけではない。形状や色味、加工方法の違いから素材を見極める作業は、長年の経験によって培われた職人技そのものだ。
日興金属の従業員数は約30名。そのうち約18名が現場作業を担っている。
武内社長は就任当初、商社出身者らしく事業拡大を考えたという。
「最初は取扱量を1.5倍、2倍にしようと考えました。しかし現場はそう簡単ではありませんでした。品質管理を維持しながら取扱量を増やすには限界があります。」
実際、同社のビジネスモデルは単なるスクラップ売買ではない。発生元から回収した原料を選別・分析し、ユーザーがそのまま製造工程で使える状態まで加工して出荷する。
数十年にわたり培ってきた独自の経験に基づく品質管理も、商品価値となっているため、安易な数量拡大は品質低下やクレームにつながる。
「1,000トンを1,500トン、2,000トンに増やそうと思っても、人員と品質管理の問題があります。これを疎かにしたら信用を失います。」
その言葉からは、量よりも品質を重視する姿勢が伝わってくる。

阪和興業OB・加藤昇氏が築いた礎
現在の日興金属の事業モデルを語るうえで欠かせない人物がいる。阪和興業OBの加藤昇氏だ。
1990年代後半、加藤氏は当時まだ価値が認められていなかったステンレス系粉体スクラップに着目した。
武内社長:「他社が見向きもしないような現物を見て、『これは資源になる』と考えたのが加藤さんでした。」
当時、ステンレス加工工程から発生する粉体や研磨屑は、いわば雑品屑に近い扱いだった。しかし加藤氏は当時業界大手ステンレスメーカーと連携し、ニッケル源として活用する手法を共同開発。分析技術と品質管理によって再資源化を実現した。
谷野部長:「加藤さんは、日本中どこでどんな金属屑が発生するかを熟知していました。その経験をもとに取引先を開拓し、現在の日興金属の基盤を築きました。」
現在、同社のニッケル系原料の主力分野は、この時代に培われたノウハウの延長線上にある。
日興金属のもう一つの特徴は、発生元とユーザーを直接結ぶビジネスモデルだ。
武内社長は阪和興業時代から受け継がれてきた商売の原則をこう説明する。
「どんなに苦労しても発生元から一次店として仕入れて、ユーザーへ一次店として直接販売する。それが我々の基本です。」
発生元とユーザーの間に中間業者を介さず、調達から販売までを自ら担う。この一貫した商流が同社の強みであり、運転資金管理から販売、回収までを自社で完結する体制にもつながっている。
同社は阪和興業グループの一員でありながら、独立した企業として経営判断を行う。
だからこそ、お客様との長年の信頼関係を維持できているのだろう。
受け継がれる歴史・機械では代替できない価値
日興金属のルーツは1932年に遡る。戦前から北九州で非鉄金属回収事業を営み、地域の金属リサイクル産業を支えてきた。
現在も社名を変更せず「日興金属」の名称を残している。「この名前には歴史があります。お客様も今でも『日興さん』と呼んでくださいます。」
北九州の非鉄スクラップ業界を支え、多くの人材を育ててきた同社。地域産業の発展とともに歩んできた歴史そのものが、大きな資産となっている。
工場内では、女性スタッフを含む作業員たちが丁寧にスクラップを選別していた。
銅線、銅管、ステンレス粉、鋳物屑――。一つひとつの素材を確認しながら分別していく。
「機械化できる部分もありますが、この仕事の本質は人です。」
品質の根幹となる選別作業は、経験と知識の積み重ねによって支えられている。
大量処理ではなく、高品質な再生原料を安定供給する。
そのための地道な作業が、日興金属の競争力そのものとなっている。

オープンファクトリーで築く信頼
日興金属では、徹底した品質管理だけでなく、「オープンファクトリー」という考え方を重視している。
武内社長は、社内外に開かれた企業経営を推進しており、工場見学や情報開示にも積極的だ。実際に、取引先の購買担当者をはじめ、財務・総務などの管理部門関係者、スクラップの発生元企業、さらには同業者まで、多くの来訪者が同社の現場を視察している。
リサイクル業界では、原料の品質やトレーサビリティが重要視される一方で、その実態が見えにくいケースも少なくない。しかし日興金属では、選別工程や品質管理の現場を実際に見てもらうことで、自社の取り組みへの理解を深めてもらうことを大切にしている。
武内社長はこう語る。
「お客様の信頼を得るためには、実際の現場を見ていただくことが一番だと思っています。どのような原料を扱い、どのような選別や品質管理を行っているのかを包み隠さず公開することで、安心してお取引いただける関係を築いていきたいと考えています。」
工場を案内していただいた際にも、その姿勢は随所に感じられた。原料の受入れから選別、分析、出荷までの流れを丁寧に説明し、質問にも率直に答える。こうした透明性の高い企業文化が、長年にわたり顧客から支持される理由の一つとなっている。
リサイクルの未来を支える現場力
人口減少や人手不足が進む日本。武内社長は「拡大一辺倒の時代ではなくなった」と語る。しかし、循環型社会の実現に向けて金属資源リサイクルの重要性はますます高まっている。
その中で日興金属が大切にしているのは、創業以来受け継がれてきた原理原則だ。
発生元を知り、素材を見極め、責任を持って品質を管理する。
一見地味に見える作業の積み重ねこそが、金属資源循環を支える基盤となっている。
北九州の地で培われた職人技と現場力。
日興金属の工場には、日本のリサイクル産業が持つ本当の強さが詰まっていた。
(IRuniverse R.S.)