東京製鐵は3日、鉄スクラップ価格を改定した。名古屋サテライトの全品種を500円下げとし、他の拠点・品種はほぼ据え置きとした。今回の名古屋の下げは在庫調整によるもので影響は一時的とみられる。全体的にはスクラップの発生量減少の傾向が続いており、スクラップディーラーにとって厳しい状況が続いている。
東京製鐵の関係者によれば、名古屋サテライトの500円下げはスクラップの持ち込み量が増えたことによる在庫調整のためとのこと。関係筋によれば、愛知県名古屋市中川区小碓通に本社を置く電気炉メーカーの中部鋼鈑にて何かしらのトラブルがあったらしく、同社に納品される分が東京製鐵に回されたという。いずれにせよ、影響は一時的なもので、相場状況の大筋には影響がないとみられる。

鉄スクラップ(HMS 1&2 (80:20), cfr Vietnam)を見ると5月中旬から下げ基調が続いている。ただし、前回の前回の本連載でも言及した通り、「日本とベトナムのサプライヤーの間で価格の駆け引き」が行われている構図は変わらないようで、ベトナム価格の下げ傾向がそろそろ一旦止まるのではという見立てもある。足元のベトナムの輸入価格の上げがその前兆であるかは定かでないが、引き続き動向を注視していく必要がある。
海外市場での駆け引きが続く一方で、足元の日本国内に目を向ければ、価格変動の根底にあるのは、より構造的な供給難という深刻な問題である。国際価格の揺れ動き以上に、国内におけるスクラップ発生そのものの停滞が、現在の鉄鋼業界における需給の歪みを決定づける大きな要因となっている。

全国的な鉄スクラップの発生量は厳しい状況が続いており、関西地区の電気炉メーカー3社が炉休しているにもかかわらず需給はひっ迫という異常事態にもなりつつある。今に始まったことではないが、発生源の主力である建設関連の「元気がない」状態が続いているという。国土交通省が発表した5月の建築着工統計調査報告をみても、新設住宅着工では前年同月比で上回っているが、民間非居住建築物は事務所、店舗、工場,倉庫が減少したため,全体で減少となった。
現在の鉄スクラップ市場は、建設セクターの低迷による慢性的な供給不足と、輸出価格の不透明感という二つの圧力にさらされている。東京製鐵による今回の改定はあくまで一時的な在庫調整だが、長引く建築着工の減少が今後の発生量に及ぼす影響は無視できない。国内供給網の脆弱化が進む中で、市場関係者は局地的なトラブルや海外情勢に敏感に反応せざるを得ない局面が続くと予想される。強含みの兆しを見せる海外価格と、回復の兆しが見えない国内発生量の乖離をどう埋めていくのか、市場の先行きには依然として警戒感が求められている。