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NSW州政府駐日事務所に聞く!NSWの資源産業と日本

2026/07/23 15:30
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NSW州政府駐日事務所に聞く!NSWの資源産業と日本

石炭からクリティカルミネラルへ――資源大国ニューサウスウェールズ州が描く次の成長戦略

オーストラリア最大の人口を抱え、同国の経済・産業の中心地でもあるニューサウスウェールズ州(NSW)。同州は石炭を中心とする資源産業で長年、日本との深い関係を築いてきた。一方で、脱炭素化や経済安全保障を背景に、銅、金、コバルト、アンチモン、タングステン、レアアースなど、次世代の重要鉱物・クリティカルミネラルへの関心が急速に高まっている。
今回は、NSW州政府駐日事務所の棚瀬商務官に、同州の資源産業の現状、日本との関係、今後のクリティカルミネラル戦略、そして日本企業との連携可能性について話を聞いた。

石炭輸出で日本と深い関係

――まず、NSW州の資源産業の特徴について教えてください。

NSWはオーストラリアの中でも人口が最も多く、シドニーを中心に多様な産業が集積しています。一方で、州の広大な地域では資源産業が重要な役割を果たしています。特に大きいのが石炭です。NSWの鉱山生産額の大きな部分を石炭が占めており、石炭輸出において日本は非常に重要な市場です。NSW産石炭の約半分が日本向けに輸出されているともいわれ、日本との関係は非常に深いものがあります。本企業との長年にわたる取引関係や投資実績は、NSWにとって大きな財産です。

脱炭素化を背景に「石炭から金属」へ

――一方で、脱炭素化が進む中、石炭産業を取り巻く環境は変化しています。

NSWで生産されている石炭の多くは発電用などの一般炭です。そのため、脱炭素化の流れの中で、将来的には石炭の比率が徐々に低下していくことが見込まれます。NSW州としても、引き続き石炭供給の責任を果たしつつ、経済や産業の将来を考えたとき、金属・鉱物資源の比重を高めていくことが重要だと考えています。現在、銅や金、銀、鉛、ニッケル、コバルト、レアアースなど、さまざまな鉱物資源の開発プロジェクトが存在します。中にはまだ探査・開発の初期段階にあるものもありますが、日本の商社などと協議が進められている案件もあります。

NSWにおける鉱物資源の生産額の大半は石炭であるが金属資源にも注力している

例えば、銅については需要の高まりを背景に、既存鉱山や新規プロジェクトへの関心が高まっています。金についても、NSWには有望な資源が存在します。

日本企業が関わる鉱山プロジェクト

NSWには、日本企業が関わってきた鉱山プロジェクトも少なくありません。銅では、住友金属鉱山など日本企業が関与するプロジェクトがあります。また、住友商事などの商社も資源開発に関わっています。日本企業にとって、オーストラリアは長年にわたって重要な資源供給国でした。今後、クリティカルミネラルの安定供給という観点からも、両国の関係はさらに重要になるでしょう。

コバルト、アンチモン、タングステン、レアアース――多様な資源ポテンシャル

NSWでは、コバルトなどのプロジェクトも存在します。ただし、コバルトは現在の市場環境が必ずしも良好ではないため、開発がすぐに進むとは限りません。資源開発は、市況だけでなく、開発コスト、技術、オフテイク契約など、さまざまな要素を考慮する必要があります。一方、アンチモンなど、中国による輸出規制や供給制約を背景に注目度が高まっている鉱物については、NSWでも開発プロジェクトがあります。アンチモンは、軍事・エネルギー・電子機器など幅広い分野で利用される重要な鉱物です。NSWでは、アンチモンを含むプロジェクトについて、すでにオフテイク契約が決まっている案件もあります。
また、タングステンについても、オーストラリア国内で新たなプロジェクトが進展しており、今後の展開が注目されます。タングステンは、現在、多くの日本企業が安定供給に関心を持つ重要鉱物の一つです。これまで資源開発に直接関わってこなかった専門商社なども、新たな供給源を求めて関心を高めています。レアアースに関しても、州内には複数のプロジェクトがあり、昨年JX金属と丸紅が出資を発表したプロジェクトもあります。

「脱中国」と経済安全保障で高まる豪州の重要性

――日本企業にとって、オーストラリアの重要性は今後さらに高まりそうです。

現在、「脱中国」や「ノンチャイナ」という言葉が、資源業界における重要なキーワードになっています。日本にとって、オーストラリアは非常に重要な資源パートナーです。日本はこれまで、オーストラリアから鉄鉱石や石炭などを大量に輸入してきました。今後は、それに加えて、タングステン、アンチモン、レアアース、リチウム、タンタルなど、経済安全保障上重要な鉱物についても、安定的な供給網を構築する必要があります。重要なのは、価格が上がっているときだけ開発を進めることではありません。資源価格が下落したときにプロジェクトが中止されてしまえば、再び特定国への依存に戻ってしまう可能性があります。経済安全保障の観点からは、市況が上がっていても下がっていても、長期的に供給源を維持していくという視点が必要です。

鉱物資源とインフラを一体で確認できるデータベース

NSW州政府は、資源開発を促進するためのさまざまな情報や支援策を提供しています。地質情報や探査データに加え、道路、鉄道、水道などのインフラ情報も確認できるデータベースが整備されています。どこにどのような鉱物が存在するのか、プロジェクトが現在どの段階にあるのか、品位はどの程度なのかといった情報を確認することができます。資源開発では、鉱床そのものだけでなく、周辺インフラの状況も非常に重要です。さらに、探査を促進するための助成金や、ロイヤルティー支払いの延期など、プロジェクトを支援する制度もあります。日本の商社や金融機関が投資を検討する際に、こうした情報や制度を活用できる環境を整備しています。

鉱物資源とインフラを一体で確認できるデータベース

許認可や先住民との関係もサポート

資源開発においては、環境面の許認可や先住民との関係構築も重要です。NSW州政府は、プロジェクトを進める企業が、どの行政機関と相談すべきか、どのような許認可が必要なのかといった情報提供も行っています。単に「資源がある」だけでは開発は進みません。環境、地域社会、先住民コミュニティとの関係を含め、さまざまな課題をクリアしていく必要があります。そうした点でも、政府として企業をサポートしています。

資源開発だけではない――スタートアップと新技術

NSWの資源産業で今後注目されるのは、鉱山開発だけではありません。リチウムの新たな抽出技術や、鉱石・残渣・スラグなどから特定の金属を回収する新技術など、資源・製錬分野のスタートアップ企業も存在します。シドニー中心部の近くには、かつての工場や倉庫を活用したスタートアップ拠点もあり、そこでは新しい製錬・資源回収技術の研究開発が進められています。まだシード段階やシリーズA前の企業もありますが、将来的には資源開発のあり方を変える可能性があります。こうした企業には、政府の補助金や民間からの出資が行われているケースもあります。日本企業にとっても、鉱山そのものへの投資だけでなく、資源回収・製錬・リチウム抽出などの技術への投資や協業は、今後大きな可能性を持っています。

日本企業向けに「資源の現場」を見てもらう

――日本企業との今後の連携についてはいかがでしょうか。NSW州には、資源開発の現場だけでなく、シドニー近郊のスタートアップや研究開発施設など、日本企業に紹介できる場所があります。資源開発の現場は、どうしても都市部から遠い場合があります。そのため、すべての鉱山を訪問するのは容易ではありません。一方で、シドニー周辺には、リチウム抽出や資源回収、製錬技術を開発するスタートアップ企業もあります。日本企業がNSWを訪問する際には、国際会議への参加に加えて、関心のある企業や研究施設を訪問し、実際に技術を見てもらうことも可能です。必要に応じて、企業同士の紹介やオンラインでの面談につなげることもできます。

【お知らせ】10月開催のIMARCで資源業界が一堂に会する

NSWの資源産業を知るうえで、毎年10月にシドニーで開催されるIMARC(International Mining, Resources & Energy Summit)も重要な機会です。オーストラリア最大級の資源関連イベントの一つであり、鉱山会社、資源企業、投資家、商社、政府関係者など、世界中から関係者が集まります。IMARC2026は10月27日から29日に開催される予定です。投資家向けのプログラムもあり、オーストラリアの資源企業や新しいプロジェクトに関心を持つ日本企業にとっても、情報収集やネットワーキングの場となります。NSW州政府としても、同イベントを活用し、日本企業とNSWの資源企業との接点をさらに増やしていきたいとしています。また、イベントの前後に企業訪問や施設見学を組み合わせることで、単なるカンファレンス参加にとどまらず、実際の技術や事業を知る機会をつくることも可能です。

資源大国NSWと日本の新たな関係

NSWと日本の関係は、これまで石炭を中心に築かれてきました。しかし、今後はその関係が大きく変わろうとしています。脱炭素化、経済安全保障、サプライチェーンの多様化を背景に、銅、金、コバルト、アンチモン、タングステン、レアアース、リチウムなど、多様な資源への関心が高まっています。さらに、資源そのものだけでなく、製錬技術、リサイクル、資源回収、スタートアップなど、連携の可能性は広がっています。石炭からクリティカルミネラルへ。長年にわたって築かれてきた日本とNSWの資源関係は、今、新たなステージに入ろうとしています。

Risa.S

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