多機能型バイオマスカーボンによる重金属不溶化から高機能副資材への展開まで
持続可能な資源循環の実現に向けては、有害廃棄物の適正処理と有価金属の有効利用を両立する技術の確立が重要な課題となっている。
株式会社JEMCOは、こうした課題に対応する技術として、「多機能型バイオマスカーボンによる重金属不溶化技術」を開発している。同社によれば、本技術は基本特許(特許第6827233号)を中核とし、電炉ダスト(EAFD)の重金属を安定的に不溶化するとともに、有価物としての利用価値を維持したまま粗酸化亜鉛原料へ転換することを目指したものである。
さらに同社は、この技術をさらに発展させた画期的な電炉ダスト処理技術について、2日前(7月31日)に国際PCT特許を出願したばかりであることを明らかにした。詳細は公開前のため多くは語れないものの、国内展開にとどまらず海外での事業化も見据えた技術として位置付けられており、今後の動向が注目される。
さらに、不溶化剤としての用途にとどまらず、製鋼用高機能副資材への応用も視野に入れており、資源循環と脱炭素を同時に実現する技術として期待される。
本稿では、JEMCOが構想する技術の特徴と将来的な展開について紹介する。
◾️独自プロセスの核となる低周波処理と低温炭化技術
本技術の特徴は、バイオマスを低周波振動で前処理した後、150~250℃程度の比較的低温域で炭化する独自プロセスにある。
JEMCOによれば、この前処理によってリグニンやセルロースの細胞壁に微細なクラック(マイクロクラック)が形成され、薬剤が内部まで浸透しやすくなるという。
この結果、
- 細胞内部まで薬剤が浸透しやすくなることで反応効率が向上
- キャビテーション効果による油分・有機物の除去
- 従来より低温で炭化できるためエネルギー消費を低減
などの効果が期待されるとしている。
生成される低温バイオ炭は、弱酸性(pH5.5~6.0)で高い吸着性能を持つことが特徴という。
◾️規制4元素を一剤で不溶化
同社技術の最大の特徴は、電炉ダスト中の規制対象となる4元素
- 鉛(Pb)
- カドミウム(Cd)
- ヒ素(As)
- 六価クロム(Cr6+)
を単一の処方で不溶化する点にある。
そのメカニズムは、以下4つの作用を組み合わせた複合的なシステムとなっている。
① Feによる六価クロムの還元
硫酸第一鉄由来のFe²⁺により、有害な六価クロムを三価クロムへ還元する。
② Ca・Naによるアルカリ沈殿
消石灰およびセスキ炭酸ソーダによって最適なpH領域を維持し、Pb、Cd、Crなどを水酸化物・炭酸塩として沈殿させる。
③ バイオ炭・ゼオライトによる吸着
低温バイオ炭とゼオライトが陽イオン系重金属を吸着し、ヒ素については水酸化鉄への吸着によって固定化する。
④ 天然高分子によるキレート・凝集
ポリグルタミン酸など天然アミノ酸系ポリマーが重金属をキレート化し、カルシウムや鉄を介した架橋によってフロック化する。
JEMCOでは、この多重固定システムによって輸送時の再溶出リスクを低減できるとしている。
◾️従来工法との違い
現在一般的に用いられるセメント固化では、
- 廃棄物量が増加する
- 亜鉛品位が低下する
- 経年劣化による再溶出リスクが残る
といった課題が指摘されている。
これに対しJEMCOは、少量添加で4元素すべてを不溶化できることから、
- 粗酸化亜鉛としての価値を維持できる
- 長期的な安定性が期待できる
点を優位性として挙げている。
◾️ウェルツ法との親和性
不溶化後のダストは海外のウェルツ法(Waelz Process)による亜鉛回収工程への投入を想定している。
JEMCOによれば、本技術は受入側にもメリットがあるよう設計されており、
- 塩素を持ち込まないため高品位酸化亜鉛を得やすい
- キルンリングの生成抑制
- CaOによる自己フラックス効果
- バイオ炭利用によるコークス使用量削減
などが期待できるという。
排出事業者にとっては処理コスト削減、受入事業者にとっては操業改善につながる可能性があり、同社はこれを「マルチステークホルダー型」の資源循環モデルとして位置付けている。
◾️製鋼副資材への展開も視野
同社はさらに、本技術を利用したバイオカーボンを製鋼副資材へ展開する構想も示している。
具体的には、
- 窒素ドープ加炭材
- C-Al-Si系複合脱酸剤
- シリコンスラッジを利用した高機能脱酸材
などの開発を視野に入れており、製鋼プロセスの高機能化と脱炭素への貢献を目指している。
◾️今後の展望
JEMCOは、未利用バイオマスやシリコンスラッジなどの産業副産物を活用しながら、資源循環型の高機能カーボンソリューションの構築を目指している。
同社では、基本特許を軸に製法・物質・用途の各分野で知的財産戦略を進めており、電炉ダスト処理だけでなく、将来的には土壌浄化など環境分野への展開も視野に入れている。
電炉ダストの適正処理と有価金属回収を両立する新たな技術として、今後の実証や事業化の動向が注目される。
関連解説リンク:
https://drive.google.com/file/d/1yuhtiv-bnTuo7U3mTyUptGLWl_Y0Fv29/view?usp=drivesdk