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CRU東京セミナー:ギニア依存を深める中国とアルミ精錬の域外投資、AIデータセンターが押し上げるケーブル・光ファイバー需給(后編)

2026/09/22 09:38 FREE
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英CRUグループが9月18日に東京で開催した「CRU Tokyo Aluminium × Wire and Cable Seminar」では、アルミナ・ボーキサイト市場と中国のアルミ産業に関する講演(前編参照)に続き、Chenfei Wang氏がケーブル産業の需要動向について、Zhuo Chen(Joe)氏が光ファイバー市場の需給について講演した。

Chenfei Wang氏(CRU、ワイヤ&ケーブル・特殊材料市場担当責任者):データセンターとEV、送電網が押し上げるケーブル需要、中国は過剰能力を抱え輸出拡大

1.銅高が促すアルミ導体への置き換え、残る余地は自動車用

後半の部の冒頭に立ったChenfei Wang氏は、銅とアルミの価格比という経験則から話を起こした。LME価格で銅・アルミ比が4を下回ると、導体の銅からアルミへの置き換えが加速するというものだ。過去1年ほどはこの比率が4を下回る水準で推移しており、置き換えも実際に進んでいる。ただし同氏は慎重な見方も添えた。欧米ではすでに可能な用途の大半でアルミ導体が使われており、今後の余地は限られる。残るのは自動車用ワイヤーハーネスで、ここは日韓メーカーが健闘している分野だという。中国の配電用地中ケーブルは依然として銅導体への執着が強いが、銅価格の高騰を受け、一部の事業者がアルミ電力ケーブルを採用し始めたとの情報もあるとした。

2.需要の全体像:年2~3%成長と、広がる地域間の温度差

CRU‘s Powerpoint

ケーブル市場そのものについては、「かなりエキサイティングな局面に入った」というのが同氏の評価だ。5年前は年1~2%程度だった成長率が、近年は年2~3%で推移している。2026年の世界の絶縁メタルワイヤ・ケーブル消費は前年比2.5%増、総量は導体ベースで約2,430万トンに達する見通しだが、地域ごとの温度差は大きい。同氏が拠点を置く東南アジアは今年ほぼ横ばい。世界の約4割を占める中国も、建設不況や再生可能エネルギー投資の鈍化を背景に伸びが減速する。対照的に、インドを中心とする南アジアは過去4年間2桁成長を続け、今年も工業化・インフラ・建設を追い風に2桁近い伸びが見込まれる。東南アジアでも、ベトナムはインフラ整備、マレーシアとタイはデータセンター投資が需要を押し上げている。西欧は同2.4%の回復が見込まれるものの中身は二極化しており、従来型の建設や製造業が弱い一方、送配電網・ユーティリティと再生可能エネルギーが下支えする構図だ。北米はデータセンター・ブームが需要を牽引する半面、住宅など伝統的分野は低調だという。

3.3つのけん引役:データセンター、電動化、高圧・超高圧ケーブル

成長のけん引役として同氏がまず挙げたのが、そのデータセンターである。CRUの推計では、データセンターの導体使用強度は、再生可能エネルギーのなかで最もケーブルを使う洋上風力の約2倍に相当する。しかもこれは母線など他の銅利用を含まない、ケーブルだけの数字だ。世界のケーブル需要に占める割合は2020年にはほぼゼロ、昨年で1.6%(北米では6%)にすぎないが、2030年には世界で約4%、北米では14%まで上昇するとCRUは見る。北米の14%は、自動車分野全体のシェアとほぼ同規模である。

自動車の電動化も需要を押し上げる。CRUの推計では、エンジン車1台あたりの導体使用量が約18キログラムであるのに対し、BEVは33.8キログラムとほぼ倍増する。高電圧ハーネスに加え、モーター用の巻線が必要になるためだ。市場規模では中国が欧州と北米の合計に匹敵する最大市場で、同氏は「今年の中国の新車販売はすでに6割超がEVまたはハイブリッド車」と述べ、4年前に上海へ移って以来、転換の速さを日々実感していると付け加えた。欧州はやや遅れているものの移行は着実に進む。一方で米国は、政治や貿易保護主義の影響で電動化が鈍く、2030年にかけてもBEVよりHEVの比重が高まると見ている。

エネルギー転換の文脈で同氏が有望視したのは、陸上・海底のHV/EHVケーブルだ。住友電気工業や古河電気工業といった上位メーカーにとっても重要な分野である。数量ベースの年平均成長率は、陸上ケーブルが今後10年間で約10%、海底ケーブルは案件ごとの変動が大きいものの2030年までで約15%、2035年まででは約9%と、いずれも一般的な電力ケーブル全体の成長率を大きく上回る。とりわけ海底ケーブルは付加価値が高い。一度海底に敷設すれば修理は避けたいという事情から信頼性が最優先され、いまも銅が主流だ。数量では高圧・超高圧ケーブル全体の3分の1程度にとどまるが、金額ベースでは今年すでに陸上ケーブルと肩を並べる水準に達するという。

4.中国:生産シェアを上回る設備能力と、海外に求める活路

ここでも中国の存在感は大きい。陸上ケーブルの生産シェアは中国が25%で、南アジア、東南アジア、西欧、中東が比較的均等に続く。海底ケーブルでは中国が5割超を占める。ところが設備能力で見ると様相が変わり、陸上ケーブルの世界能力のおよそ半分を中国が握っている。生産シェア25%との差が意味するのは過剰能力だ。受注がないため、本来は220kV以上の製造に使う垂直連続押出ライン(VCVなど)で10kV級ケーブルを流しているメーカーの例も聞かれるという。海底ケーブルでも事情は似ている。従来は3社が握っていた市場に新規参入が相次いだうえ、洋上風力案件を獲得するには地元の雇用やGDPに貢献する拠点を山東省や福建省など各地に構える必要があるといった事情もあり、完全には稼働しないとわかっている拡張が進んでいる。欧州のプリスミアン(Prysmian)、ネクサンス(Nexans)、NKT、住友電工などが5~8年分の受注残を抱えるのとは正反対の状況で、だからこそ中国メーカーは海外市場、まずは近隣の東南アジアへ向かう。欧州市場への参入は今のところ成功していないという。

中国国内に目を向けると、建設竣工面積は2~3年にわたり大幅なマイナスが続き、改善の兆しも見えない。それを支えているのが送配電の分野だ。第15次5カ年計画期間(2026~2030年)の国家電網の投資は年平均8,000億元を超える計画で、今年上期の同分野は12.6%成長した。輸出も10年前から倍近くに増え、アジア向けが23%を占める一方、関税や保護措置で北米向けは縮小している。品目構成も変わりつつあり、かつての低圧ケーブル、ボンディングワイヤ、データケーブルから電力ケーブルへと広がった。中圧が中心とはいえ、過去10年で年平均約10%増という伸びである。

5.欧州・北米・インド:保護措置の強まりと現地投資

欧州では、EUが新たに打ち出した「グリッド・パッケージ」の下で送電の重要ルートを優先する動きがある。域内の国境間送電容量は2030年に約41ギガワットと目標の半分に満たないが、2040年までに180ギガワットへ引き上げる計画だ。英国は海底連系線のハブとなりつつあり、住友電工が高圧直流(HVDC)向けの高付加価値品で関与している。一方で中国やアフリカ(エジプト、モロッコ、チュニジア)からの輸入も増えており、域内製造を後押しする「産業加速法」にケーブルが含まれていないことから、欧州ケーブル協会(Europacable)が対象化を働きかけている。同氏は、プリスミアン、ネクサンス、NKTなど域内メーカーの投資に加え、住友電工や韓国メーカーの英国投資、中国系企業によるポルトガル企業の買収(CCVライン10本の増設予定)といった動きも紹介した。

北米で成長分野となっているのは、日本メーカーも注力するデータセンター向けだ。同分野のケーブル消費量は今年約25万トン、2030年には40万トン超と、韓国のケーブル消費量全体に相当する規模になる。もっとも、トランプ政権下でも国内メーカー保護の動きは強い。昨年発表された銅の232条関税では、精錬銅が対象外とされた一方で下流のケーブル製品が対象に含まれ、すでに多くのケーブル製品が50%の関税の対象となっている。しかも対象は中国に限らない。アルミの232条関税でもアルミ電力ケーブルや架空線が対象に入っている。これを受けてプリスミアンやサウスワイヤ(Southwire)など既存メーカーが現地での増設に動く一方、域外メーカーの投資はアルミケーブルや韓国メーカーを除けば慎重だという。インドでも、需要拡大を背景に増設や新規参入が相次ぎ、タタやアダニのような大手グループまで参入している。

最後に同氏が示したのが、世界のケーブルメーカー上位50社のランキングだ。中国企業の割合は3割台にとどまる。世界の生産の5割を占めながらこの数字にとどまるのは、国内に1万社を超える生産者がひしめく分断された産業構造のためで、統合が進む余地はまだ大きい。データセンター、再生可能エネルギー、EVという新たな需要要因が出てきた一方、欧州はユーティリティ、米国はデータセンターと需要の中身は異なる。ただ、関税や反ダンピング措置による地域の保護色が強まっている点は共通している、と総括した。

Zhuo Chen(Joe)氏(CRU、ワイヤ&ケーブル担当アナリスト):光ファイバー価格は年初比4~5倍、データセンターと光ファイバードローンが2つの柱

1.価格:年初比4~5倍に急騰、中国が世界最高値に

セミナーの最後は光ファイバー市場がテーマとなった。中国の価格は年初から急騰しており、標準的なG.652Dは1芯キロあたり20元前後から90元超へと4~5倍になった。G.657はA1が150元超、A2が200元超と、それぞれ20~30元前後からの上昇である。地域別の価格を並べると、3月以降に中国が世界で最も高い水準に転じたことがわかる。長年にわたり中国が世界で最も安かったことを思えば、これは大きな変化だ。もっとも7~8月には中国が横ばいとなる一方で欧州、アジア、米国も上昇し、欧州のG.652Dは中国を上回る水準に達している。背景にあるのはデータセンター需要と、光ファイバーを使うドローン(光ファイバードローン)の2つだと同氏は説明した。

2.需給の地図:北米への一極集中と、中国が握る供給余力

需要の地図を見ると、突出しているのは北米だ。ケーブル需要の伸びは今年ほぼ40%、来年も約30%に達する見通しである。中国は今年4.4%減、来年は14%増に戻るとはいえ、低い水準からの回復であり絶対量は2025年を下回る。アジア太平洋も堅調で、通信インフラ整備の継続に加え、米国や中国のハイパースケーラー、現地資本によるデータセンター投資が需要を押し上げている。投資先はマレーシアからタイへ、電力がひっ迫すればベトナムやインドネシアへと移り、日本、豪州、韓国でも建設が活発だという。供給側では、北米の光ファイバー生産が数年来フル稼働のため伸びがほとんどなく、ブームに対応する即時の余力がない。これに対し中国は今年、世界の供給の約55%、来年は57%を占める見通しで、この伸びが需給ひっ迫を緩和する鍵になるとした。

需給の数字には奇妙な差も現れる。2027年の世界の光ファイバー供給が約8億5,000万芯キロであるのに対し、ケーブル需要は約6億8,800万芯キロ。1億芯キロ超の開きがある。同氏はこれを、ケーブルへの加工時のロス、各工場の在庫、そしてケーブルを使わず光ファイバーのみを使う光ファイバードローンという新しい用途で説明した。今後5年間の世界の需要は年平均7.4%増、北米は約15%増となる見通しで、2028年には中国のケーブル需要2億6,100万芯キロに対し米国が2億6,400万芯キロとなり、米国が初めて中国を上回って世界最大の需要市場になるとCRUは見る。

3.データセンター:北米が世界需要の7割、現地生産では足りない

そのデータセンター需要を、同氏はハイパースケーラーの財務から読み解いた。アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフトの4社の設備投資は2024年第1四半期から今年第2四半期にかけて増え続けている一方、フリーキャッシュフローはほぼ底まで低下している。これはリスクであると同時に、データセンター投資に対するコミットメントの表れでもあるという。設備投資とデータセンター向けケーブル需要には相関があり、北米の同用途の光ファイバー需要は2026年に約9,000万芯キロ、2027年に1億2,000万芯キロ、2028年に1億4,000万芯キロと積み上がる。北米はデータセンター向け光ファイバー需要の約7割(2026年に68%、2031年も67%)を占める計算だ。北米のケーブル需要は2026年で約2億芯キロ(うちデータセンター向け約9,000万芯キロ)に達し、2031年には現地生産だけで約1億4,500万芯キロの不足が生じる。ただしコーニング(Corning)の中国・ポーランド工場、プリスミアンのフランス工場、日本メーカーなどからの供給で補える可能性があり、実際、今年6月までの1年で北米の光ファイバー輸入は急増している。リスクがないわけではなく、米国では許認可、地域住民、電力供給を理由にした建設遅延が相次いで報告され、英国の電力不足やノルウェーでの問題も聞かれる。それでも足元の7~9月は米国、アジア太平洋とも建設が活発で、リスクはまだ顕在化していないと述べた。

4.もう一つの柱、光ファイバードローンと通信事業者入札

もう一つの柱である光ファイバードローンの需要は、2025年の5,700万芯キロから今年約1億3,000万芯キロへ急増する見通しだ。同氏は今後は徐々に減少すると予想しつつも、地政学情勢に大きく左右されるため見通しが急変する可能性があると釘を刺した。データセンター向けも昨年の約7,000万芯キロから今年約1億2,000万芯キロに増えており、この2分野だけで1億芯キロを超える追加需要が生まれたことが、今年の大幅な価格上昇につながったとした。

従来最大の需要家だった通信事業者の入札は、相対的に存在感を落としている。それでも中国移動(チャイナモバイル)は今年これまでの9カ月で6,900万芯キロの入札を終え、年換算では昨年並みの水準になる。中国電信は今月か来月に約2,000万芯キロの入札を出すと聞いており、省子会社経由の2,500万芯キロと合わせて計4,500万芯キロになる見通しだ。ただ、ドローンやデータセンター向けの納入に追われる供給側は、この通信事業者向け入札への対応に大きな負担を感じているという。

5.供給の隘路は母材、次世代品はマルチコアと中空コア

供給の隘路は母材(プリフォーム)にある。線引き能力やケーブル化能力には余裕がある一方、プリフォームが不足しており、その増設規模が新たな光ファイバー供給量を決める。CRUが中国のプリフォームメーカーほぼ全社にヒアリングを行ったのはこのためだ。欧米メーカーの増設は2028年以降が中心で、市場に即応できるのは中国しかない。結果は下方修正だった。5月時点では2026年末までに9,500万芯キロ分の能力が加わると見込んでいたが、有力案件の試運転が順調に進まず立ち上げが2~3カ月遅れており、8月時点の見通しは8,200万芯キロになった。ただし2027年12月までの累計では約2億3,000万芯キロが市場に出てくる見通しで、これが実現すれば今の逼迫は緩和に向かうと見ている。中国以外ではコーニング、プリスミアン、スターライト(Sterlite)などが増設を計画しているが、最も早いコーニングでも2028年初め、その他は2028~2029年、場合によっては2030年になるという。

講演の最後に紹介されたのが、マルチコアファイバーと中空コアファイバーという次世代製品だ。マルチコアはスペースの制約、中空コアは遅延の問題への対応策として、データセンター開発で重要になる。2031年の市場規模は中空コアが約130万芯キロ、マルチコアが約350万芯キロとCRUは見ている。中空コアがデータセンター間接続(DCI)用途に集中するのに対し、マルチコアはDCIに加えてデータセンターのサーバールーム内などにも用途が広がり、より多様な使われ方をするとの見通しを示した。

Keikoo

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