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磁石同志の会NS会で三徳の岡田社長が希土類について講話

 8月26日14時半、神田小川町にある紫紺館で、NS会2017が開催された。48名が集まった。

 開会の辞として明治大学名誉教授の山本先生から以下のような話が述べられた。

 

 「今年の夏は地球温暖化の影響で、天候不順が続いている。地球温暖化の防止にネオジ鉄ボロン磁石が寄与してくると思う。佐川博士が発見したネオジ鉄ボロン磁石が大きく貢献している。最近では発電機にも使われているのはうれしいこと」と。

 

 

写真

 

 

 今回のNS講和の講師である三徳、岡田社長の経歴などについて説明があった。その際に、資料にある「希土類の用途開発と資源」というタイトルではなく「最近の希土類原料事情と今後の展開」であると訂正された。

 

<NS講和>

 岡田社長から以下の内容について講和があった。なお、説明資料の配布は無く、パワーポイントで映し出された資料に沿って話が進められた。

 

  1、最近の希土類原料事情

  2、三徳について

   ・磁石材料

   ・水素吸蔵合金

   ・コア技術と製品

  3、現在と未来のレアアースの用途

 

 

1、最近の希土類原料事情

 資源のバックグランドとして、将来こうなったらいいなと、3番のところを重点に、今回は1番と3番を中心の説明だった。

 

 03年から17年までのネオジメタルの価格推移について、レアアースショックとして尖閣の時以外は大きな変動をしていない。

 

 

グラフ

 

 

 11年の時にはネオジのメタル価格は470ドルをつけた。今年の春先には、価格が50ドルぐらいに落ち尖閣前とほぼ同じぐらいところになっている。足元100ドルだが、これは、異常か異常でないかが今回の話のポイント。

 

〇日本サイド

 03から16年まで、世界から日本に入ってきている希土類の輸入通関実績の数量ベース。ただ、この中にはストリップキャスティングの合金やDyのような鉄合金は含まれていない。中国・カザフ、ベトナム、エストニア、米国、マレーッシア・・・。

 

 岡田社長が入社したころの希土類の輸入の数字に非常に近い。一時、90%が中国という時があったが、インドやオーストラリアなどから入ってきている。40年前ぐらいには米国、ソ連、オーストラリアがメインだった。中国が入りだしたのは、ここ2、30年前のこと。中国が今のようになったのは30年も経っていない。

 

 ちなみに、中国から最初に塩化希土類を輸入したのは三徳。Euが足りない際にイオン鉱を中国から最初に輸入したのが三徳であった。

 

 輸入の金額を見ると、昨年で400億円ぐらい。だいたいレアアースの輸入金額は400から500億円。ただ、中国、ベトナムのリサイクルもこの中に入っている。06年07年の600億円の当時とは中身が違う。

 

 

価格高騰時は希土類以外のコストも高く

 尖閣の時は、マーケットが決めた価格ではない。中国のEL(エクスポート・ライセンス)と輸出税が乗った金額である。ELは売買されたのでレアアースの価格はより高くなった。例えば、10ドルのCeを輸出するのに20ドルぐらいのELに輸出税25%がのっかったので、Ceは100ドル近くした。これは突発的な事象だった。
 
 
 輸入先別でのシェアの変遷について。06年は希土類の総輸入量が4.2万トン、16年は2.5万トン。先の輸入金額では、ほぼ同じだったが数量は違う。もう一つ違うのが、06年は中国が87%でフランス、エストニア続いたが、今の現状は中国が55%、フランス25%、ベトナム16%と続く。マレーシはライナスの数字になるが、ライナス以外にもフランスから入ってきているものには、中国から原料輸入して加工したものが半分以上ある。こういうことを考慮すると、今でも中国の比率が90%ぐらいある。

 

〇中国サイド

 中国の輸出の通関統計だが、13年に回復してきている。今4.5万トン輸出しており、Ceが圧倒的な量を占めている。

 

 これは13年から16年までの金額。CeとLaは、結構な数字(多い)があるが、減ってきている。これは、La、Ceが安くなってきているため。

 

 中国の統計から平均単価を算出すると、12年から16年にかけて下落傾向が鮮明になっている。それが、春先には、下げ止まってきている。

 

 これは12年から16年にかけて中国から輸出された国別の状況。輸出先として日本、米国で半分ぐらいになる。アメリカ向けは、(日本と)全く中身が違っていて、FCC触媒向けのLaが中心。欧州や米国は、原油のクラッキングなどに使われる。

 

 欧米が、尖閣の時にWTOに提訴した。

 

 岡田社長いわく「なんでや?」と、これは、彼らの首根っこになるエネルギー、石油関係になくてはならない元素がLaだったから。Laが止まるとガソリンが止まるということになる。だから、メルケル氏が、一番最初に中国の首相と会談をした。

 

 日本の方は、ご存知のように磁石関係が中心になっている。ELの関係で3万トンぐらいが目安。金額を見ると日本が圧倒的に多い。輸出税が撤廃されたので、金額ベースでは25%程度近く下落したという結果が表れている。

 

 

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〇中国の国内事情

 中国は、イリーガル(違法)の規制を一生懸命やっている。バストネサイト系の軽希土と、イオン鉱の中重希土の指令制の数字と違法品といわれているものの数字だが。16年は、見ると違法採掘はイオン鉱が非常に多いということになる。

 

 指令制の数字は、各省・各希土メーカーに割り当てられている。3,000トンとか、5,000トンのキャパがあるのに、対して司令制の数字は1,000トンとか500トンが割り当てられる。中国では省をまたがって集約できないため、司令制の数字をまとうできない。3,000トンのキャパで500取れますよと言われても、採算が取れないから企業として成り立たない。

 

 この結果、南方の希土メーカーが止まってしまっている。

 

 それに対して北方は、効率よく集約していて、包頭だけでコントロールできる仕組みを作り上げている。4~5万トン近い内モンゴルだけの数字は達成可能。四川省もそういう意味では、なかなか難しい。

 

 イリーガルといわれているのは、実はマーケットに対して非常に有効的に働いているというのが、今の現状。

 

 それともう一つは、中国の国家備蓄。これは、ニュースにもなっているが、何のためにやっているのか・・・

 

 17年5月の国家備蓄では成約していないのがジジムとテルビウム。今回Dyに関しては530トンの目標数字に対して530トン成約している。

 

 国家備蓄というのは、国が思っているほどもスムースにいかないというのは、成約単価が安すぎるため、メーカーが出せない。その中でDyが達成したということは、中国内でDyが如何に余っているかということの裏返しになる、と岡田社長。

 

 ここで、中国が国家備蓄という名目でずーっとやってきた訳ですが、どれぐらい成約しているというと、La、Ceで1.2万トンぐらい。Pr、Nd、Dyの磁石関係で同じような数字。Dyで2,400トン、Tbで615トンということになる。表の右に中国の供給比で示したが、Dyで30%ぐらいという数字になる。

 

〇中国以外の動き

 中国以外の動きでは、稼働しているのはインドとオーストラリアのライナス、それとロシアが若干あるかなという程度。尖閣の時にあれだけワイワイって、色々なプロジェクトがスタートしようとしていたがが、米国のマウンテン・パスに関しては破産し、中国が20億ちょいで落札した。

 

 中国は指令制の中で、バランスが崩れていて動けるメーカーと動けないメーカーがある。ライナスの一番のお客さんが中国。中国は委託加工でライナスから原料を持ってきて金属に加工して販売する。

 

 自分ではできないので、海外から原料を持ってくる。中国がモリコープを買収したので、結果を見ると、ほとんど中国が資源を抑えにかかって、それがうまくいっているということが現状。

 

 「これは、ある希土類メーカーのある人間が、そういうように思っていということだから、気を付けてていただきたい。ただ、今、そういうふうに見えるのかなという一面だと思っていただけらと思います」と岡田社長。

 

〇将来に向かって

 皆さんご存知のバストネサイト系のイオン鉱の希土類のバランスを示している。先述したように中国の北方で12万トン、中国全体で17万トン、その他全部入れて18.8万トン。磁石のリサイクルが1万トン弱が供給されている。

 

 それで、計算すると、Laで5万トン、Ceで7万トン、磁石合金関係で5万トン弱、Smで5,200トン、Dyで2,800トン、Tbで440トンという結果になる。リサイクルできているDyは2,800トンのうち800トンぐらいと思っている。

 

 「磁石は、どれぐらい作っているのかとなると、NdとSmの両方を出しているが、Nd系で12万トン、Sm系で3,000トン弱が作られたんじゃないかなと思う。世界の希土類の需要は、13.2万トンということで、この数字から推計するとDyが非常に低いんだなと推測されます。そうじゃないとDyは本来なら余らないということになる」。

 

 希土類の需給バランスを見ると、Laはウエルバランス、Ce、Yは大きく変わらない。Dyが余り気味になるのかなということにある。

 

 では、レアアースにとってどういうバランスが良いのか、という見方をすると、100%が全てバラスよくいっているとすると、TbとかDyはウエルバランスになる70%のところで良いとするとCeとYが非常に余っていることになる。希土類の将来という意味ではCeとYが重要なカギを握っていることになる。

 

 「原料関係のまとめですが、尖閣以降、脱中国、チャイナフリーとか、アウト・オブ・チャイナとか盛んに言われたが、中国がいまだかつてショートとしたことは一回もない。いろんなことが言われたが、指令制の数字にしても、ELにしても、7万トンを輸出した時期、5万トンを輸出した時期、これで足らなければ、世界の需要を賄えていなかた。だから、中国からの原料に対してどういう見方をするのか、皆さんに考えていただきたいというのが大きなポイント」。

 

 

自動車の電動化で磁石需要はさらに増大する

 「中国が90%と変わっていないと話しましたが、将来に向かって、それでいいのか。車の電動化とかを考えると、磁石の需要というのは、2倍、3倍となるなかで、本当に中国一辺倒でいいのかと、これから考えていかなければならない。違法生産に関しては、やっぱり環境対策も含め中国政府としては確実にやらなければならない中で、ワールドワイドで需要と供給のバランスをどうとっていくか、やっていかなければならないのか」。

 

 「ライナスもモリコープも・・・ライナスは日本のバックアップで生き残っていますが、儲かってるとはいえない。中国のメーカーも疲弊しているのは、今の現状である」。

 

 「LaやCeの価格是正が課題。FCC触媒に関して、脱ガソリンになっていくわけですから、当然ながらLaはそんなに必要ではない。
違法の管理の仕方を、鉱石のトレーサビリティだけでなく、副資材も含めて厳密にさせている。我々(三徳)の中国工場も公安がしょっちゅう来る。(中央政府は)いろんな産業の数字を確実に抑えにきている。中国政府は、いろんな意味で締め付けを厳しくしている」。

 

 

中国の希土類資源コントロールについて

 「先ほど国家備蓄の話をしましたが、価格に関して安定化させようとしていますが、本当に必要かとの話が出てきている。また、司令制も本当に必要なのかとの話も出ている。ニュースにもなったが、数字を見直す、あるいはやり方を考えるということは、中国の大手メーカーが率先して行動していると聞く」。

 

 「尖閣後どうなったかというと、アベレージ価格の2010年、2017年の比較をみると、10年の北方で10.9ドル、南方で26.1ドルが17年に北方で11.5ドル、南方で27.9ドルとなっている。今の価格であればLa、Ceが価格が安いとしてもNdが、あるいはDyが肩代わりして中国メーカーもやっていける。10年には問題も起こっていなかったので、そういう見方もできる」。

 

 

希土類の将来

 「これからのエネルギーの中で水素エネルギーとカーボンにどういうふうにかかわってくるか。風力発電のモータで磁石がかかわってくる。水素では、水素吸蔵合金、電池もある。いろんな希土類は、うまく使えば非常に将来にとって役に立つ。

 

 レアースのポテンシャルは高い。例えば、鉄鋼添加物としてLaやYなど。環境の面では、二次電池。Liの原料は塩湖をベースにしたもので、鉱石は不純物の関係であまり使われていない。このままのペースで使われるとあっという間にLiが枯渇します。というのは3年前に中国で電動バスに補助金が出たとたんにLiの価格が5倍から10倍になった。排ガス触媒、これはCeがたくさん使われているが、ガソリン系、ディーゼル系に伸びていく。しかし、電気自動車が出てくるのでどうなるのかな。燃料電池にも希土類が使われている。さらに、CO2の吸着材では、Ceを使うと特性が向上する」。

 

 

水素吸蔵合金で活躍するLa、抗菌機能でCe

 「水素吸蔵合金では、La27系が従来の3割も水素吸着能力がアップする。エネファームが伸びると都市ガスの地域では水素を直接つなぐようになると水素吸蔵合金が考え方の一つになる。常温常圧でつかえるので非常に良い。

 

 Ceは排ガス触媒需要が無くなっていくが、燃料電池の改質触媒として横滑りで使える。あと抗菌効果があるので、現在メインに使われている銀であるが、ナノ技術が進むとCeの需要が広がる。UVカットでも使われている」。

 

 

グラフ

 

 

 終了予定時間を若干過ぎたが、大同特殊鋼顧問の佐川氏から乾杯の音頭の後、NS会食に。

 

 

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(IRuniverse 井上 康)

 

 

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