Loading...

全固体電池を中核にスマート社会形成 旭化成の吉野氏の提唱するAIEV

2018/10/22 15:00 FREE
文字サイズ

 旭化成名誉フォロー吉野彰氏は、AIEVを提唱する。AIEVは、社会をより豊かにするため、AIやIoTを駆使し、高い安全性と高性能化した無人自動運転のクルマと、それを中核に多方面のツールとして活用された姿である。ただ、バズワードに注意してほしいと言う。

 

 吉野彰氏は、ご存じリチウムイオン電池(LiB)の生みの親で、今も全固体LiBの最前線の開発に携わられている。AIEV(Artificial Intelligence Electric Vehicle)は、今年1月、IRuiverse主催のIRRSG2018年第1回例会新春記念 講演会に登壇されて、そのときにも吉野氏が強く述べられていたものだ。そのAIEVについて、この10か月間でより鮮麗な姿となって、10月19日、都内、東京ビックサイトで開催された洗浄総合展にて語られた。

 

→(関連記事)IRRSG LIVE REPORT20180129 LiBサミットは大盛況で終了&旭化成吉野氏講演

 

 

【1】やはりリチウムイオン電池の次の節目2025年に変わりなし

グラフ AIEVの話の前に、まずLiBの概況を述べられた。吉野氏は、全固体電池の置き換えとは別に、LiBの次の節目が2025年だと、1月の講演から変わらずに語った。そして、2025年の前に2017年が一つの節目になったとも言う。2017年のLiB市場実績として、クルマ向けのLiB容量の年間累計が、パソコンやスマートフォンなど民生用家電向けのLiB容量の累計を超えた。また、吉野氏が電池開発のモチーフとしてのクルマに挙げている日産のLeaf(リーフ)を見ると、2017年に航続距離の目標をそれまでの200キロメートルから400キロに上げた。このように、2017年はLiBの第一次世代から第二次世代へのシフトの年だったと、吉野氏は言うのだ。

 

 でも、実際に今現在、第二世代の電池として、全固体LiBが市販のEVに搭載されるまでに至っていない。クルマの糧初は5年以上かかるため、今後5年以上は、全固体LiBが市販のクルマ搭載されることはない。つまり、当面、クルマ向けのLiBは、全固体でなく液体電解質が続く。ただ、次々世代のクルマが市販化される2025年、この年に向けてより高性能、高い安全性のLiBが開発されて、次の節目になるだろうと、吉野氏は考えている。

 

 ただ、このLiBについて、今回、吉野氏は全固体LiBに置き換わると言及していない。同氏は、全固体電池向けの新材料が出て来ているが、それらが何時、実用化されるかとの質問や回答はあまり意味がないと言う。その背景には、吉野氏が、最初のLiBについて、1980年代の開発当初から2000年代のクルマ向け市販までの長い道のりと、その間のゲートを知っているからだと思われる。ただ、今年4月にTDKが小型の全固体電池の市販化を行った。他社も続いている。今後、10年かけて全固体電池の大型化に向けて開発が進められるだろうと同氏は言う。

 

 

【2】バズワードに注意してAIEV導入してほしい

 吉野氏は、今回の講演において、AIEVによる社会を考える前に、Buzzwords(バズワード)に注意すべきだと、聴衆に喚起していた。バズワードの事例として、同氏は、1980年代の頃のマルチメディアについての人々のイメージが、曖昧で実際のモノや定義とかけ離れていたことを挙げられた。1980年代とは、スピルバーグのバックトゥザフューチャーが公開されて、スティーブジョブズがまだ子供だった。そして、吉野氏はLiBを開発中だった。その当時、マルチメディアに搭載されるインターネットについても、具体的な定義ができていなかった。最近までコードレスとワイヤレスの違いも分かっていなかった(今でもわからない人がいるかも)。そして、携帯電話をコードレスフォンとは言うが、ワイヤレスフォンとは言わなかった。携帯電話が普及して、コードレスとワイヤレスの使い分けが厳格になってきた。それを使ったマルチメディアも同じである。当時、テレビが主要なメディアだったからテレビそのものを指すと言う人もいれば、机上のコンピューターとネットの組み合わせを指す人、携帯電話など小型化した機器も指す人がいた。その間も単語自体は使われてきた。でも、なんとなく使っていた。こう言うことが起きることは、恐ろしい、要注意だと、同氏は言う。

 

 そして、ここ数年、バズワードは、クルマの周辺で多く見られると言う。例えば、EV、AI、IoTに始まり、CASEやCar Sharingなど、最近クルマに関連して、そこに用いられるツールから、応用面まで多くの言葉が生まれ、それぞれ定義されているが、人によって認識や言葉の使い方が異なることがある。つまり、バズワードである。

 

 

図

 

 

 AIEVとは、ここに挙げられた言葉の内容を全て包含した言葉である。そして、AIEVが、蓄電用専用につくるのではなく、巨大蓄電システムをつくりあげることを可能にし、駐車スペースの活用、交通事故や渋滞を無くし、福祉や過疎にも対応できる交通手段となり、そして当然、環境負荷を減らす役目を果たすことができる。AIEVの活用について、これまで何度も吉野氏が述べられてきたことをあらためて語られた。

 

 また、このAIEV達成に向けた動きとして、同氏は、最近行われたソフトバンクとトヨタの提携について「世の中(世界各国の企業)は、既にこうした動きが進んでいる。日本は遅い。」と辛口のコメントをされていた。同氏は続けて、このままではクルマメーカーが、下請けになってしまうと、メーカーに対する危機感を訴えていた。

 

 最後に、吉野氏は、将来のAIEVの世界について7分間のムービーを宣伝された。ムービーは今週水曜日(10月24日)の夕方、リリースされる予定であると言う。

 

→(KRI)http://www.kri-inc.jp/index_e.html

 

 

図

 

 

 図は、全て今回の吉野彰氏の説明資料をもとにIRUにて加工。

 

 

(K.AKIYAMA)

 

 

関連記事

新着記事

ランキング