4-6月よりも7-9月のほうが不安 さる銅系原料問屋の不安 対照的に元気なE-Scrap系
目下のところ、相場的にはLME銅相場はトン5,100ドル台で推移、国内銅建値はトン60万円(キロ600円)をつけており、相場水準としては恐怖指数(VIX)も最高に高まり、NY株価、原油ともに歴史的な暴落劇をみせた3月下旬頃の荒波からすると、足元は穏やか、ではある。しかし
「売上的には3月はまだ前年比でトントンというところだったが4月で3割~4割減、5月はもっと悪い。発生が落ちているので結果、売り上げはダウン。4-6月期は伸銅メーカーさんなどへの長契分を納めるのに四苦八苦しているが、今度7-9月は間違いなくメーカーの購入枠が落ちてくるので夏場は仕入れも売りも大変。。なので弊社も新たな事業を模索しているところです」とは関東地区で月間500トン前後の銅系スクラップを扱うT社。こちらでは新たな事業としてシュレッダーミックスメタルの選別を行うとしている。
NY株価の推移(USD)3か月
NY原油相場の推移(USD/barrel)3か月
LME銅相場の推移(USD/ton)3か月
一号ピカ線相場の推移(JPY/kg 市中実勢)3か月
当然のことながら製造業が本格的に回復しないことには原料系のリサイクル業は立ち行かない。発生があり、原料需要も伴ってはじめて完結するため、素材産業での原料需要が落ちれば原料リサイクルディーラーの売上げはたちまち落ちていく。特に今は自動車、建設が落ち込み、さらに個人消費も落ち込む、というなかにあってはモノは売れない。素材産業では高炉、特殊鋼、普通鋼電炉、ステンレス、アルミ合金、圧延、伸銅品と多くのコモンメタル系の需要は崩れている。大企業は雇調金を得るべく休業、減産を選んでいるゆえ、原料需要は増えようがない。輸出という逃げ場があるアイテムはまだましだが、それとて、必ずしも輸出採算が合っているものばかりではない。真鍮系などは集荷に苦慮していると聞く。
景気が良いのはE-Scrap系。これはヤマ(銅製錬所)が相手であるゆえ、銅製錬が動いているかぎりは(鉱石処理が出来ているかぎりは)E-Scrapは流れていく。特にJXは日立(茨城県)での前処理ラインが稼働していることで低品位のE-Scrapも大歓迎だという。
→(関連記事)JX金属日立訪問記② 世界のスマホに欠かせないJX銅箔&Recycle
E-Scrap専業ディーラーは買い意欲満々であり、E-Scrap破砕大手のW社も鼻息荒く、全国で買い漁っていると聞く。E-Scrapに関しては全国の銅製錬所が買いポジションである(もちろん各社で独自のコスト計算があるため単価はバラつきあるが)。
一方、鉄、アルミ系はどうかというと、各社思わしくない。やはり発生減の需要減で相乗効果で売り上げは急落している。鉄スクラップも輸出相場はいいが、国内高炉は言わずもがな(日鉄は自社スクラップを輸出販売するほどなので)、電炉も減産体制が続いている。過日、12日の関東鉄源5月テンダーが上がったにも関わらず国内電炉はスルーしたことが何よりの証左。輸出上がってもそれに乗じるほど需要はない。アルミ系、就中、アルミ合金系はその需要の太宗を自動車に依存しているゆえ現状はかなり厳しい。合金メーカーでもアーレスティ、啓愛社(溶湯)が今月いっぱい原料買い止め、としているように他でも原料スクラップ需要は軒並み弱い。このままでスクラップディーラーは大丈夫なのだろうか?
「みんな表だって言わないけど、政策金融公庫はじめ色々コロナ融資に走っているはず。スクラップ業は今回、飲食店ほどではないにしても相場下落に仕入れ減、販売減のトリプルパンチでどこも大幅に売り上げを落としている。なかにはあえて前年比で売り上げ50%減にして持続化給付金(→ https://www.jizokuka-kyufu.jp/overview/)の200万円をもらってるところもある。会社2つもってるところでは200万円×2=400万円とか。。」(都内アルミ系原料問屋)
といった緊急対策もとってはいるが、あくまで緊急対策で実際、焼け石に水、的なところがある。産業活動の低迷が長引けば長引くほどリサイクル業界へのダメージは深くなることは火を見るより明らかである。今年の夏は過去にないほどの異常な猛暑になると予想されている。炎暑のなかで原料リサイクル業界もどこまで踏ん張れるのか、7-9月期が最初の正念場となろう。
(IRUNIVESRE)
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