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タンタルに隠される3つの裏事情 レアメタル研究会代表幹事 岡部 徹氏

2020.10.29 15:54

 レアメタル研究会を主宰する代表幹事であり、東京大学副学長・生産技術研究所教授でもある 岡部 徹 氏は、ニオブとタンタルをはじめとするレアメタルの専門家として30年以上にわたり、製錬やリサイクル技術の研究開発に力を注いできた。「自称レアメタル オタク」という同氏は、タンタルに関する一部の情報は機密情報のように扱われることもあり、紛争鉱物としての社会問題に加え、放射性物質を含む廃棄物が発生するなどの環境問題など、いくつもの裏事情があると語る。ゴルゴ13などの漫画にも登場する実は身近なコルタンに言及しつつ、レアメタルの進むべき方向性を示唆した。ちなみに同氏の趣味は、世界の鉱山と製錬所を巡ること。

 

 

■操作されるタンタル情報

 「過去の文献をみるとニオブ、タンタルには多くの誤解が広まっている」と岡部氏は指摘する。2011年の日経新聞に掲載されたタンタルの記事では、タンタル生産量はオーストラリアが560トンと世界の半分以上を占めている(2009年・JOGMEC)とある。だが実際は当時のオーストラリアの産出はゼロだったのではないか、と疑問を投げかける。

 

 

表

 

 

 まさかと思うが、こういった情報操作がタンタルについては頻繁に行われている。紛争鉱物のことを当時は隠したかったのが主な理由であろうが、米国が軍事上の理由から統計の操作をしているとも考えられる。記事には、米国のドッド・フランク法1502条によって原材料の産地確認が義務付けられ、紛争地域の鉱物は使われていないとある。

 

 その後、JOGMEG統計データは、訂正されているとのこと。統計機関の情報やメディアの扱いと事実に大きな差異があるとは驚きだ。

 

 

■「ゴルゴ13」にも登場

 「タンタルの主要鉱物であるコルタンとは不思議な鉱物だ」と岡部氏は語る。タンタルは希少な元素にもかかわらず、アフリカには高品位の天然鉱物が存在する。まさに地球が生んだ奇跡。コンゴ民主共和国でコルタンという天然鉱石の形で川底から採れるのだが、これを測定してみると、なんとタンタル成分が40%。特異的に濃縮する物性がある。タンタルの主な用途は高級電子材料であるコンデンサなどだが、天然鉱石の方が工業製品より含有率が高いくらいだ。

 

 岡部氏は「川底の天然鉱石を探した方が、工業製品をリサイクルより安くて品位が高いのは、神様のいたずらだ」と皮肉る。それが紛争の火種となる。産出国で取り合いになってしまうのだ。だが「タンタルそのものは悪くない」とあくまでタンタル愛を語る岡部氏である。

 

 漫画「ゴルゴ13」でも「コルタン協奏曲」の中でコルタンが登場する。1キロ採ると末端価格で数万円になるため、コルタン目当てに人が採掘場に集まる。比重が重いので川底をさらうと、タンタルの含有率が40%の鉱石が子どもでも採れてしまう。人が集まると、周りに生息しているマウンテンゴリラを食べるといった問題まで起きている。

 

 児童労働と絶滅危惧種マウンテンゴリラの密漁が問題になり、さらにDRコンゴ政府軍と反政府軍の両方の軍資金となる。だが物流は同じ商社系が行っていたりする。実は日本も同じで、政権が替わろうが、かつてあった銀山での精錬や物流も同じ事業主が握る構図。岡部氏は「古今東西、同じことが行われている」と指摘する。

 

 

写真

 児童労働が問題になっている(左)   絶滅危惧種マウンテンゴリラの密漁問題(右)

 

 

■放射性物質を随伴

 ブラジルには世界のニオブの8割以上を産出するアラシャ鉱山がある。米ソ冷戦時代のウランが必要だったときの探査によって偶然ニオブが発見された。ここに訪問する一部の人は記念植樹を行うといい、岡部氏が20年前に植えた木の苗が、今では背の高い樹木に成長している(写真は10年前に撮影された)。

 

 

写真

          ブラジル・アラシャ鉱山(左)      10年前で小さな苗木がこの高さに生長(右)

 

 

 ニオブは自動車の外板鋼鈑のプレス形成などをよくするために加えられるレアメタル。わずか300ppmが加えられるが、何万トンという金属ニオブが鉄との合金であるフェロニオブとして生産される。アラシャ鉱山のニオブ含有率は0.3%で世界品位。しかも400年以上とほぼ無尽蔵の埋蔵量を誇る。

 

 ただし問題もある。微量の放射性物質ウランとトリウムが含まれている。ニオブを取り出すとときに廃棄物としてこれらの放射性物質が排出される。一般的に、一部の酸化物系の鉱物は放射性元素(NORM)を随伴する特性があると同氏は説明する。

 

 銅や亜鉛の硫化物の鉱石から、ヒ素、水銀、鉛、カドミウムを含む副産物が生成するように、酸化物の鉱石から抽出されるレアメタルにも、あまり話題にしたくない副産物であるウランやトリウムが付いてくる。ニオブ、タンタル、チタンなどレアメタルのスラグ(酸化物)には製錬工程で放射性物質が濃縮され、廃棄物の処理が困難となる場合がある。

 

 これらの放射性物質の問題は鉱石を処理する段階で発生するものだが、処理後に輸入する日本にとって関係がないのだろうか。

 

 これに対して岡部氏は「日本としては問題ないというロジックはどうなのだろうかと考える。リサイクルすれば自然環境を破壊せず、製錬での膨大なエネルギーも消費せず、有害物質も発生させずに済む、というのが私のスタンスだ」と持論を述べる。近年のSDGs(持続可能な開発目標)の浸透によって岡部氏の考えが受け入れられるようになってきたという。

 

 岡部氏がリサイクルの研究で行うのは、酸化物からニオブの粉末を取り出すことだ。2001年からプリフォーム還元法を研究し、2005年には「プリフォーム還元法による電子材料用レアメタル粉末の製造技術の開発」で市村学術賞の功績賞を受賞している。プリフォーム還元法はMg蒸気で還元を行うことで、フッ素を含む廃液を排出しない方法だ。

 

 

写真

 

 

 コンデンサを使った酸化実験では、酸化タンタルを還元し、純度99%の金属タンタルが得られた。次の課題としては、スクラップから回収したタンタルの高純度化だ。真空溶解や塩化反応を利用する精錬などが考えられる。

 

 レアメタルの用途は幅広い。電子材料としての半導体や電子材料、合金用、航空宇宙材料、自動車、エネルギー関連、原子力、医療生体用と、豊かになればなるほどマイナーメタルは重要性を増し、環境調和型のリサイクル技術も必要となっていく。

 

 

図

 

 

 近年は環境問題と言うととかくCO2削減が声高に叫ばれるが、レアメタルなど鉱物資源は別の物差しで評価するべきだ。地球が生んだ奇跡であるレアメタルは、すぐに枯渇する可能性は低いが、多くの問題も引き起こす。

 

 岡部氏は「私たちは、地球の奇跡、資源の価値というものを深くとらえて“資源を消費する幸せの追求”という低次元パラダイムから、一刻も早く脱却しなければならない」と強調した。

 

 レアメタルの奪い合いや紛争の資金源、児童労働、絶滅危惧種のマウンテンゴリラの密漁問題に機密情報…。都市鉱山からのリサイクルがより進むことが、これらの解決へつながる道筋であることは間違いない。

 

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(IRUniverse fukuiN)

 

 

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