フェニックス2020で急速にV字回復を果たしたARBIZ(アビヅ)
名古屋の総合リサイクラーARBIZ(アビヅ)はこれまでに数々のリサイクル商品を生み出してきては業界を驚かせてきたが、さしものアビヅも今回のコロナショックは痛かった。しかしながら「前年度の下期から業績低下の予兆はあった」(佐野拓也取締役事業本部長)ことで、コロナ真っ只中の4-6月期に「フェニックス2020」と銘打った再生計画をぶち上げ、聖域なき構造改革を行ったアビヅ。その結果、数名の社員も離れることにはなったが、結果的には会社全体としてダイエットが成功し7-9月期では早くもV字回復を果たしている。
―どういった改革を果断に行ったのでしょうか?
「まず、不採算拠点、事業の閉鎖、売却を行いました。北海道事業所は岡谷エコアソートさんに売却、プラリサイクルのPla2Plaはグループ会社のエコネコルに譲渡、国内向けパーツ販売はやめました。労務では残業を減らし、給与制度を変更(DC年金制度)した。
いわゆるリストラは行っておらず、夏のボーナスも満額支給とした。労務、給与規定は親会社のUSSと同様の内容になっているので、リサイクル企業のなかでうちは給与水準は低くはないと思う。従業員の皆さんには相当な負担と我慢を強いた3か月間だったが、早々に盛り返すことができたので感謝している。
今後は生産性と作業環境の向上を同時に進手めていくためにロボットピッキングをメーカーと開発していく。また、新しく開設したDDR(Digital Device Recycle)工場はエアコン完備にしております。」(佐野拓也取締役、以下同)
―なるほどです。
「会社がつぶれてしまっては終わりなので、売上利益を上げ続けていかなければならない。そのうえではじめて社員の待遇を充実させることができる。このELV(廃車)発生が少ないなかではなかなか大変ではありましたが、ELVが減った分を産廃関係でカバーしました」
―現状、ELVの扱いは?
「昨年後半から減少してきました。やはり新車が実際に売れていないとELVは出ない。昨年前半で月平均1800台のELV処理が今は1100台前後。減少の一要因として九州で豪雨災害があったあとに安い中古車がだいぶと九州に流れたこともあったかと思いますが、今後もあまりELVは増えないとみています。ELV以外での事業を拡大させるためにいろんなチャレンジをやり続けているところです」
―確かに。アビヅといえば数々のリサイクルにチャレンジしてきましたが、Pla2Plaはなぜやめることに?
「ノーコメント(笑)といいたいところですが、ASR(自動車シュレッダーダスト)からPPを得ることがきわめて難しかったことと、なによりもどうしても臭素系難燃剤が混じってしまう。これだとまず自動車メーカーは使わない。水より軽い種類を分けるのは非常に困難。またASRから硬質プラはほとんど出てこないこともわかり自動車メーカーに再生品として採用してもらうことは無理と判断した。他社でも似たようなことをやっているが、自動車メーカーが使う気がないのでかなりかなり難しいと思う。現在の我々ではASRからだとパレットグレードまでが限界でした」
「それでも結構、ぎりぎりあきらめずにネバーギブアップで追求してましたよ。しかしASRからだとどうしても油水分含んでいるのでフラッシュが出る。宇部興産さんに協力いただいてテストサンプルをインジェクションして綺麗に成形できたものもあるんですけども認められなかった。自動車メーカーが多少、品質許容度が広ければ採用してくれるかもしれないが、バージンプラ製品と同等のクオリティを出すことはできなかったですね」
―フェニックス計画のなかで一押しは?
「もとからうちで手掛けているリサイクル商品でサーモリアクター(ASR、SRとアルミ灰の混錬製品。特許あり)ですね。これはアルミ灰を利用したエネルギー代替副資材として今は関東の電炉メーカー向けに販売しております。」
→(サーモリアクター関連記事)山積するリサイクル業界の課題に挑戦するアビヅ
―アルミ灰はどの程度のアルミ分のものを使っているんでしょうか?
「30%のアルミ灰を買ってますね。十数円で。。」
―それで採算は合うのでしょうか?
「ASRの再資源化料金も乗りますので採算は悪いことはないですね。アルミ灰の適正処理としても、アルミ灰応用製品としても、またELVリサイクル率向上という観点においてもサーモリアクターは一石二鳥、三鳥の商材だと考えており、今は月間販売量は400トンに満たないところですが1000トンまでもっていきたい。サーモリアクターのニーズは国内外からありますので」
「サーモリアクターの利点は実際、電炉のオペレーション上でもあり、電炉スラグの融点を適度に下げるにはアルミ灰(に含まれるアルミナ)が有効だということは実証試験でわかっており、今使ってもらってる電炉メーカーさんでも結果は出ている。そこからは月を追うごとに需要量は増えている。アルミ灰によってスラグの融点調整を図ることができ、結果として歩留まり向上、炉の保護にも貢献している」
―なるほど。
「15%アルミ分のサーモリアクターも関西の電炉メーカーさんで使ってもらっており、試したところ、効果は30%アルミのサーモリアクターとほとんど変わらないという結果も出ているので販路を拡げたいのが正直なところ」
リサイクルの求道者として、または経営者として佐野取締役はプラント解体のSMARTの代表も兼務しているが、常々リサイクルは入り口と出口を固めないとダメという信念をもつ佐野氏。脱炭素時代の現代でもアビヅマジックで鮮やかなダンクシュートを決めてくれることだろう。
(IRUNIVERSE YT)
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