ニッケル協会主催 ニッケル・オンライン・セミナー2020 その2 ニッケル、NPIのLCAについて
ニッケル協会主催で11月25日に開催された「ニッケル・オンライン・セミナー2020」の続き。
→(関連記事)ニッケル協会主催 ニッケル・オンライン・セミナー2020 その1 LCA観点からの資源利用
ニッケル協会の専門家としてニッケルデータの無償公開に取り組んでおられるマーク・ミストリー氏。ニッケルLCA情報の開示に伴う活動の詳細について、ISO(国際標準化機構)規格に準拠したデータ収集プロセスについてのご説明、続いてニッケル銑鉄に絞り二酸化炭素排出量データに関し述べられた。
既にVOLVOやBMWなどのメーカーでは財務諸表とは別にLCA開示資料が公開されまたサプライヤーに対し排出データ開示を義務付けているなど、企業運営にとってLCA評価がなくてはならないもの、市場へ提供しなければならないものになりつつある。
ニッケルの場合特に、下表に示されるように他の資源と比べ一次エネルギー需要及び二酸化炭素排出量に大きな幅を持つため、元データの選択が調査結果に影響を与えるという特徴を持つ。
ニッケル協会としては、ニッケルのLCAデータ情報開示を進めるにあたってISO(国際標準化機構)企画に準拠したデータ収集プロセスを踏んでいる。
※LCA開示に関するISOとしては1997 年に ISO14040 が発行、2006 年に見直し作業(ISO14040、14042、14043 の再編)によりISO14040、14044 が発行されている。
(参考)
このISOに準拠した形でニッケル協会は、下図のとおりデータ収集を行っている。すなわちインベントリー分析段階で製造工程へのインプットとアウトプットを特定。次にアプトプット項目について、影響評価段階で15種類設けられたインパクト分類に従って算定を行う。下図は実際に行われる算定プロセスの具体例。
インプット項目に関してはニッケル生産図を示した下チャート左側に羅列されるとおりである。
算定に際しては、下図で表現されるようにニッケルは他資材と異なり生産ルートが幅広く存在するためインプット項目が多数にのぼる。
下図は2008~2018年のニッケル生産量推移を示したものだが、各製品群のバランスがこの10年で大きく変わってきていることが分かる。
ニッケル協会ではこのような経緯を踏まえてデータ収集定義を決めていったわけだが、下記ではそのプロセスを紹介したい。
まず対象には、協会メンバーに製造業者がいないニッケル銑鉄を除いてニッケル金属、フェロニッケル、硫酸ニッケルを置いた。
2018年にデータ収集開始し2020年夏に公開へ至っている。来年には学会誌に掲載する予定だ。
下図は協力していただいた参加企業の分布。日本からは住友金属鉱山が加わってくれた。
(緑:ニッケル金属 黄:硫酸ニッケル 赤:フェロニッケル)
中国が含まれないのはニッケル協会のメンバーに中国企業がおらず、参加を働きかけたものの興味がないとのことで協力いただけなかったことによる。
世界全生産量に占めるデータ収集割合は下図のとおり。
上で述べたように中国には協力いただいていない。ニッケルメタルとフェロニッケルについては中国、インド以外の主要生産者に協力いただけている。硫酸ニッケルについてはデータ収集が15%に留まっており、この15%データが残り85%の生産者に適用されるかについては不明確なところではある。
データ収集結果については次のとおり公開されており、ニッケル協会HPからダウンロードできる。
続いて、皆さんが興味を持っておられるであろうニッケルの二酸化炭素排出量についての算定数をお伝えしたい。
卑金属の中でニッケルはアルミニウムよりやや高い二酸化炭素排出量を示している。
しかし機能レベルで測定した場合異なるデータとなる可能性が高く、このデータは一指標にすぎない。
そしてこちらはメタル1tあたりのCO2排出レンジ。
ここで、ニッケル銑鉄に絞って確認したい。
先の表で分かるようにニッケル銑鉄はここ10年の間でステンレス精鋼のための最も重要なインプットとなった。つまりニッケル銑鉄が二酸化炭素排出総量に占める割合を理解することが重要となってくるわけだが、ニッケル銑鉄LCA情報に関しては製造業者からの公開情報はなきに等しくニッケル協会メンバーにもいない。そこで我々は、冶金ソフトウェアでのモデル処理及び中国文献上でのデータ比較、専門家との意見交換を元に情報を集めた。
その結果算出されたニッケル銑鉄CO2排出量の理論値が次のグラフ。レンジは58~150kgとされる。
また下図は、ニッケルメタルとフェロニッケルとの比較。
最後に、データ収集の結果得られた下図を紹介する。
各国のニッケル生産
ニッケル生産による地域別推定温室効果ガス排出量
卑金属別二酸化炭素排出量の合計
(IRUNIVERSE USAMI)
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