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東港金属創立120周年〜サイクラーズ福田隆社長スペシャルインタビュー(中)

写真 福田社長が、社長就任後に一番大きく様変わりしたと感じている事柄に「社会の環境に対する目」がある。新聞記事の一面に、環境問題がこれほど大きく扱われたりすることは、10数年前はなく、見出しが躍るようになったのもこの7〜8年くらいのことだ。リサイクル企業、資源再生事業者は、もっぱら「環境貢献企業」のように認識されるが、しかし福田社長の本質的な関心は、使用済み製品の二次的な利用、市場、流通のあり方を「考える」ことだという。

 

 

関心の第一は、商品の二次マーケットの仕組みを考えること

 こういうことをいうとポリコネ(ポリティカルコレクト=偏見・差別を含まない、中立的な表現をすること)的に少々差し障りがあるかもしれないが、と前置きしつつ、福田社長は、

 「環境に対する視線よりも、本質的に興味を見出しているのは、商品のセカンダリーマーケット、2次流通における商品の活かし方、リサイクル法、処理方法などなのです。これが第一義としてあり、この追求の結果が環境負荷低減につながることになる。僕としては環境を1番最初に持ってくると息苦しくなるような感じがするので、興味とか楽しさを先に持ってきたいんです」と語る。

 

 同氏がいうセカンダリーマーケットとは、例えば一例として挙げるなら、最近人気を集めている「セカンドストリート」や「トレジャーファクトリー」などの中古品売買の新しい波がある。ここには価格や品質、また品揃えなどに対する、従来にない新たな驚きがある。またネットのフリマ市場を開拓した「メルカリ」「ヤフオク」などもそうだ。

 

 金属の再資源化にしても、その手法はさまざまにあり、またいろいろな組み合わせもできる。いかに料理して、付加価値を持たせるか。そしてその製品(原料)は輸出しても、国内企業に供給しても、あるいは商社に販売しても、まったく自由だ。プラスチックであれば、マテリアルリサイクルもあるし、ケミカルもサーマルもある。諸般の事柄を考えた場合、焼却、埋立という方法も選べる。

 

ロゴ 選択肢をあれこれ考えて、また生み出して、組み合わせてやっていく、それはすごく面白いこと。そういったところに大きな興味を感じるし、また可能性も、まだまだ探る余地がある。「いってしまえば、社長に就いて以来、ずっとそれを考えて実践してきたに過ぎない」、 そう福田社長は語る。それを具現した事業のひとつが、サイクラーズ子会社であるトライシクルが展開するReSACO<リサコ>(不用品買取り、リサイクル、買取先マッチング、廃棄処分まで行うワンストップサービス)であるのだ。

 

 

リサイクル業の環境貢献は、結果に過ぎないか?

 「環境負荷低減に貢献」‥このフレーズを聞くとき、一体「みんなどれだけ本気なの?どれだけ自分ごととして考えてるの?」と感じることがある。リサイクル業は、確かに環境に貢献してはいる。しかしそれは事業として、生業として行った結果として、生み出された「環境価値」に過ぎない。実際には「まず環境ありきではない、のでは?」と、福田社長。

 

 もちろん環境面で不幸な状況にある人々のことは限りなく憂うが、環境の本質やリアルを理解しないで、通り一遍のメッセージを発信することにはいささか疑問を感じる。

 

 例えば「最近知った環境のリアルに、レジ袋の使用制限があると」同氏。レジ袋に関して、利用禁止または有料化など、制限を設けている国は世界に130ヵ国ほどある。これは先進国で進んでいるものと思いきや、発展途上国でも多く採用されている。

 

 初めてレジ袋の使用を禁止したのはバングラディシュで、それは2002年のことだった。理由はレジ袋が排水路につまり、下水が溢れ出すなど、もともと衛生環境が保たれていないところに、さらに悪影響をもたらすといった理由による。プラのリデュースを訴求するならば、こういった切実な実情も知っておくべきである。

 

 また、いまサーキュラーエコノミーを実装する上での議論が盛んに行われているが、その実現に向けては、さまざまな規格やルールを作ることがまず第一になる。しかし、現状で運用されている規格は旧態然としたものばかりで、スクラップに関しては40年もの間変わっていないという。

 

 今後は、例えば鉄スクラップにおいても、どれだけ脱炭素に貢献しているか標準化が必要なはずで、H2でいえば、貢献程度の高い順にH2a、H2b、H2cなどと規格分類されなければならない。いうなれば「スクラップ2.0」だ。しかしこれはなかなか難しい議論ではある。サーキュラーエコノミーを標榜するのであれば、こういった「本質的に難しいもの」という認識は必須条件として持つべきだ。

 

 このような難しい側面にコミットした上で、メッセージを発信している企業が、どれだけあるか?本来なら、真に難しい課題に取組んでいる企業でこそ「環境」を冠した発信をするのに相応しい。しかし、社会的に環境意識が高くなっているいま、環境メッセージは「120%有効に使わせていただく」と、福田社長は正面切っていう。

 

 環境意識は2番目といっていた同氏だが、しかしプロモーションやマーケティングには特別の関心を寄せているという。発したメッセージが、どのような印象を与え、どう認識され、大げさにいえばどう意識改革され行動変容につながるか。そういったマーケティングの手法やデータ分析などには非常に関心があるという。

 

写真 サイクラーズでは、昨年、前記サービス「ReSACO」のプロモーション映像を作った。サービス内容を端的に表し、時代の切っ先をいくキャラクターも起用、エモーショナルな内容に仕上げた。しかし、これは思った以上の成果は上げなかったという(写真:ReSACOプロモビデオより)。

 

 「本来BtoBサービスであるものが、そうしたニーズのある層にリーチしなかった。実質的には失敗と思っていますが、しかし学んだことも多い」。後述するが、サイクラーズは120周年の節目にグループ会社でロゴマークの統一を図った。会社のプロモーション、またマーケティングに注力する同社の今後の動きも注目していきたい。

 

 

地球環境に貢献する‥それは「環境マウント」か?

 さて、話を少々戻すがそうした意味で「環境」をキーワードにメッセージを発信することは、効果も十二分に期待できることから、進んで行いたい、と同氏。しかし前記したように、この切り口は、ややもすると受けた側からは反感、疑問などネガティブイメージを買いかねない。微妙なバランス感覚が必要になる。

 

 例えば、廃棄物をテクスチャーに、アート作品を制作するアーティストなどが、しばしばメディアに登場するが、どこかしら釈然としない感情を抱くこともある。それはなぜなのか?結局、環境意識の高みという「上から目線」という要素が見え隠れするからではないのか。つまり環境マウントだ。

 

 「結局センスの問題なのだと思います。仕上がったものが、作品として公開されたとき、オーディエンスが面白いと思えるかどうか。クリエイティビティーを感じるものなら、受けて手も好感を抱くでしょうが、そうでなければそれまで。センスの問題なのです」(同氏)

 

 環境、というテーマをモチーフに、情報発信するとき、そこには優れたセンスとクリエイティビティーが必要になる。そこで真の「共感」が得られたときこそ、マーケットは動くのだ。これには筆者も激しく共感。

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

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