BIR 2022、スペイン・バルセロナで開幕③!〜プラリサイクル現状について聞く〜
中国持続可能プラスチック協会会長を務めるSteve Wong博士は、BIRの理事会役員でもあるため会議の常連だ。またMIRU主催のイベントにも参加していただいており、来日回数も多い親日家である。米国・ロサンゼルスに住むWong博士を展示会場でキャッチ、プラスチック業界の近状を聞いた。同氏はリサイクル会社福富のCEO でもあるが、バーゼル条約をはじめとする国連の活動にもオブザーバーとして関わっており、リサイクル業者の現状と規制の両方に精通している。
Wong博士にプラスチックリサイクルが抱える「チャレンジ」について語って頂いた。
プラスチック業界が直面する問題
まず一番のチャレンジは「サステナビリティ」の推進による世界的な規制の強化だ。プラスチックリサイクル業界では、バーゼル条約の改正により欧州からの輸出が規制され、東南アジア諸国も輸入規制を敷いたため、同地域ではリサイクル原料が不足しているという。現在東南アジアへ輸出している国は米国だけとなっている。規制強化による輸出手続きの難しさも追い討ちをかけ、リサイクル原料のフローは減少している。こうした状況は大きな「チャレンジ」である。
また、輸出規制に伴う原料フローの問題に加え、サーキュラーエコノミーやサステナビリティ推進政策によるリサイクル処理基準における規制の強化や再生材含有率の義務化が各地で施行されている。そのため、これまでのリサイクル処理法では新基準を満たすことが難しい。リサイクルの質を上げるには、分別を徹底する必要があるが、このセクターの開発は遅れている。そこで、分別をそこまで必要としないケミカル・リサイクルがトレンドとなっており、石油化学系の企業は、従来のリサイクル処理より、ケミカルリサイクルへの投資を好む傾向にある。
回収・分別の改善が鍵
世界的なプレッシャーとなっているプラスチックのリサイクル率を大幅に引き上げるには?との問いに、Wong博士は、プラスチックリサイクルにおける一番の障壁は、回収・分別セクターにあると述べた。政策立案者側・メディア・環境保護団体はプラスチック汚染問題に焦点を当て、リサイクル率の向上を推進しそのためリサイクルの下流部門である処理技術ばかりに投資が集中している。
リサイクルは実際の処理段階だけでなく、回収・分別・洗浄過程も全て含めて検討する必要がある。リサイクラーは回収された原料に対しリサイクル率を上げることしかできない。そのためリサイクル率をさらに引き上げ廃プラを削減するには、より多くのプラスチックが回収され、適切な分別システムが(特に東南アジアなど)構築される必要性を強調する。現状の問題はこのセクターへの投資は収益率が低いため投資が集まらないことで、この現状を本当に把握している人は残念ながら少ないという。
リサイクル率については、博士は統計を定期的に追っており、国際機関などで使用されている数字は古いものでこの点を最近の国連会議で指摘したという。実際のプラスチックリサイクル率は、公の数字より高いことを指摘した。
(Y.SCHANZ from Barcelona)
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