電池用原材料の安定した供給はEVビジネスに必要不可欠 BenchmarkMineralIntelligence
Battery Sumit 2023で1月31日、市場調査・コンサルティング会社Benchmark Mineral Intelligence(英・ロンドン)のCOO、Andrew Miller氏は「BUILDING SIPPLY CHAINS FOR THE LITHIUM ION ECONOMY」と題してプレゼンテーションした。以下に概要を紹介する。
電気自動車の急速な普及により、リチウムイオン電池の需要は今後10年間で急増すると予想される。これにより特に原材料や精錬された電池材料にまつわる新たなサプライチェーンリスクが発生する。このリスクを減少する為には、サプライチェーン全体の垂直統合と戦略的なパートナーシップに加え、サプライチェーンの現地化とバッテリーリサイクルに一層注力する必要がある。
電動モビリティの主要部品はバッテリーパック。近年、急速な技術進歩と生産量の拡大が相まって、EV 用電池の性能が向上し、その大半は生産コストが低下している。原材料の高騰や半導体不足の影響でここ2年ほど一時的に価格が高騰していた反動である。
バッテリーのコストは、使用するセル技術、生産場所、原材料の価格に大きく影響される。セルコストは、バッテリーパックの総コストの約75%を占めている。正極活物質や負極活物質などの材料が各セルのコストの70%を占め、コバルトやニッケルサルフェート、リチウム塩などの原材料や精製材料はセルコストの30%以上を占めている。バッテリー市場は年平均成長率30%を示し、2030年には年間総容量が3,000GWh以上に達すると予想されている。
しかし、これは1kWhあたりの生産コストをさらに削減することによってのみ達成できる。では、OEM やセルメーカーは今後数年間、バッテリーのコストを下げ続けることができるのか。セルの化学的性質や設計とは別に、コストを削減する方法もある。例えば、モジュールのサイズを大きくしてパックあたりのモジュール数を減らすことや、製造技術を向上させて CAPEX と OPEX を削減することなどが挙げられる。これらの対策により、1KWhあたり約30〜40ドルのコスト削減が可能だと考えている。
世界的にEVの普及が進んでいる中、最も大きな成長が期待できるのはヨーロッパだ。2030年には、自動車販売台数の半分以上がEVになると予想されており、これは北米(29%)の2倍にあたる。中国では、2030年にEVが自動車販売台数の38%を占めると予測されている。
バッテリーメーカーが電気自動車の需要急増にうまく対応するためには、サプライチェーンを進化させる必要がある。現在使用されているプロセスの大部分は、バッテリーがEVではなく家電製品に使用されていた10年以上前にさかのぼる。生産レベルでは、冶金と化学をより統合したアプローチが、供給の確保とコスト削減に貢献する。また、バッテリー製造の複数の工程をより地域化・共同化することで、持続可能性の向上と地政学的なリスクの低減、そしてコスト削減を実現することができる。
戦略的には、OEM とバッテリーメーカーは上流のサプライチェーンへの関与を強め、リスクを軽減する必要がある。これは、長期供給契約からパートナーシップ、あるいは投資に至るまで様々な形で可能である。主要なEV OEMやセルメーカー、CAMメーカーは、すでに高いレベルの垂直統合を目指しており、採掘段階まで関与するようになってきている。サプライチェーン上の重要な制御点を占有することは、強力な競争優位性をもたらすが、高度なコミットメントが必要。上流のLiB供給ネットワークをシミュレーションする能力は、勝利するバッテリー戦略を開発する上で非常に重要である。
英語記事はこちら
(Iruniverse Marcin)
関連記事
- 2024/04/20 岸田首相訪米の成果 米→日本へのEscrap輸出促進から重要鉱物対策まで
- 2024/04/19 工作機械工業会3月受注確報 3月3.8%減1356億円、23年度14.8%減1兆4531億円
- 2024/04/19 阪和興業(香港)藤田董事長「安定した鉄鋼事業の構築に自信」 食品ビジネスにも期待
- 2024/04/18 二次電池PSI-Report#158リチウムイオン二次電池 安価な車載向け販売数大幅減少
- 2024/04/17 コバルト市場近況2024#4 落ち着き目立つ、LME価格は英米の対ロ制裁が影響
- 2024/04/17 マクセル リブのみ発泡させEVなど部品軽量化と強度向上を実現する新発泡成形技術開発
- 2024/04/16 国内電気銅PSI Report #15 電気銅の販売量増加基調へ 販売平均単価上昇も続く
- 2024/04/16 国内伸銅品PSI実績Report #48 銅製品の需要回復待ち 黄銅に続き青銅・洋白も回復へ
- 2024/04/16 日立造船他 LNG 燃料のメタンスリップ削減率 93.8%を達成 GHG排出93.8%削減
- 2024/04/15 民生用電子機器輸出入Report#35薄型テレビ輸入 輸入減少底に 2024年増加の兆しか