G7広島サミット気候・エネルギー・環境大臣会合が15日に開幕――石炭火力問題の行方はいかに!?
G7広島サミットの一連の日程の口火を切る形で、「気候・エネルギー・環境大臣会合」が15日から札幌で始まる。2日間にわたって、脱炭素、循環経済、自然再興を統合的に実現するための議論が交わされるという。ただ、掲げた高い理想とは裏腹に足並みの乱れを誘いそうな材料が、議長国の日本自身が抱える石炭火力問題だともされている。わが国のエネルギー政策の足元を揺さぶる同問題をどう裁き、G7(主要7か国)議長国としての責任を果たすのか、間もなくその幕が開く。
G7では環境負荷の大きい石炭火力発電の廃止時期がこれまでも繰り返し、議論の俎上に載せられてきた。22年の会合の際には、議長国のドイツが30年までの石炭火力の全廃を声明に盛り込む方向で各国に打診したが、日本、米国の反対で、これが見送られたとされている。
さて、今回である。すでにG7気候・エネルギー・環境大臣会合の議長声明の内容が原案などの形で報道されているので、石炭火力問題をどう整理しようとしているのか、そこから見てみたい。この問題に直接触れた記述はなく、「35年に電力部門の大部分を脱炭素化する」という関連するテーマに落とし込んでいるように映る。
ドイツで開催された22年の同会合の声明には「電力部門の大部分の脱炭素化」の記述に続けて、次のようにあるからだ。「我々の2030年のNDC(国別削減目標)、電力部門の移行に関するコミットメント及び我々のそれぞれのネット・ゼロのコミットメントと整合的な形で、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を最終的にはフェーズアウトさせるという目標に向けた、具体的かつ適時の取組を重点的に行う。このために、クリーンエネルギーへの移行に必要な技術や政策を迅速に拡大していく」と。
政府の争点化を避けたいとの意図は理解するにしても、やはり今会合でも、表には出てきていない後段の部分が議論の大きなポイントになってきそうだ。事前調整の段階でも、欧州勢にはその廃止時期の明示を求める意向が強いとされており、どう展開するのか、波乱要因の一つであるのは間違いない。
そもそも、3月にIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が発表した第6次統合報告書にある「産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える国際枠組み『パリ協定』の目標達成には温暖化ガス排出量を2035年に19年比で60%減らす必要がある」との提示を前提にするなら、石炭火力廃止問題は避けて通れない。
なぜ、国際的に批判を浴びるほど、日本は石炭火力への依存してしまったのか。その起点は2011年の東日本大震災にある。電源構成のおよそ3割を依存していた原発が、大震災で一斉に稼働停止に追い込まれ、緊急避難措置として石炭火力に調整弁を求めたためだ。原発再稼働への模索が続く中、再生可能エネルギーへの転換も後手に回り、現実的な選択肢として、さらに石炭火力に依存する悪循環に陥ってしまった。それがこれまでの失われた10年の経緯である
国のエネルギー政策の基本方針を定める現在の第6次エネルギー基本計画では、電源構成(=右図)について再生エネルギー比率を一気に36~38%に引き上げる方向が打ち出されたが、一方で2030年時点においてなお石炭火力に19%を依存する姿が描かれている。20~22%を想定する原子力についても、再稼働に向けて道筋を描き始めたが、先行きの不透明感はぬぐえない。石炭火力の廃止を迫る欧州勢と共同歩調を取りにくい現実が、そこにあるわけだ。
(第5時(内円)・第6次(外円)エネルギー基本計画電源構成の比較)
ただ、G7議長国であり、ここで国益優先のスタンスで臨めば、11月30日からドバイで開催されるCOP28など、国際交渉の場での主導権も失いかねない。どう議長声明をまとめ上げるのか、政府の総合調整能力が試されようとている。
(IRuniverse G・Mochizuki)
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