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脱化石燃料シナリオのスケジュール感の違い浮き彫りに――G7環境閣僚会合 閉幕 

 札幌市で開かれていたG7の「気候・エネルギー・環境大臣会合」は2日間の日程を終え16日、共同声明を採択して閉幕した。エネルギーの安定供給と脱炭素へ盛り沢山の項目が並んだが、日本の国益目線で見た声明の焦点は「排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させる」とした点だろう。石炭に新たにLNGも追加され電源構成の足元7割を占める分野で対策を急ぐ必要に迫られたようにも映るからだ。新合意で脱化石燃料を巡る他国とのスケジュール感の違いも浮き彫りになった。

 

 共同声明のポイントについてはすでに報道されつくした感もあるが、概要を改めて確認しておこう。

 

 温暖化ガスの排出削減に関しては、2035年までに「19年比で60%削減」するとの目標数値を盛り込んだ。IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が3月に、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える「パリ協定」の目標達成に必要として発表した内容に準拠している。

 

 その上で、①排出削減対策が講じられていない化石燃料の使用を段階的に廃止②G7の保有車両からのCO2排出量を35年までに2000年比で半減させる可能性に留意③レアアースなど重要鉱物は鉱山開発やリサイクルにより安定した供給網を構築④30年までに洋上風力発電を21年実績のおよそ7倍に。太陽光発電は3倍に拡大⑤:原子力エネルギーの使用を選択した国々は、化石燃料への依存を低減し得る低廉な低炭素エネルギーを提供し、世界のエネルギー安全保障を確保する原子力エネルギーの潜在性を認識する。――などの項目を並べている。

 

 カーボンニュートラル社会の実現に欠かせない重要鉱物問題では、資源国と連携して安定供給網を構築するため、G7として130億ドルを支出し、鉱山の共同開発や使用済み製品からの回収・再利用の取組を進めるという。

 

 共同声明の柱は以上になるが、注目しておくべき点はやはり①の「排出削減対策を講じていない化石燃料炭などの使用を段階的に廃止」という点だろう。わが国の電源構成における化石燃料(石炭・LNGなど)の比率は下図の通りで、足元70%近くを占める。

 

(2010年度から21年度までの電源構成グラフ:経産省)

 

 国のエネルギー政策の基本方針を定めた現在の第6次エネルギー基本計画(=下外円グラフ)にある、2030年時点におけるその比率を見ても、なお石油も含めて化石燃料依存度41%の姿が想定されている。今回の共同声明に掲げられた①は、そんなエネルギー政策の抜本見直しを迫る要素もはらんでいることになる。

 

(前回値(内円)・第6次(外円)エネルギー基本計画電源構成の比較)

 

 過度の化石燃料依存体質に陥ったきっかけは、2011年の東日本大震災である。その時点で電源構成のおよそ3割を依存していた原発が一斉に稼働停止に追い込まれ、緊急避難措置として石炭火力にその調整弁を求めたわけだ。石炭より環境負荷が少ないとして、LNGの利用も進んだ。

 

 ただ、COP(気候変動枠組条約締約国会議)など、国際会議の場でもたびたび、その依存体質は批判されてきた。何度かエネルギー政策を転換する場面はあったはずだが、原発再稼働への模索が続く中、再生可能エネルギーへの転換も後手に回り、現実的な選択肢としてさらに化石燃料に依存する悪循環に陥ってしまった。それがエネルギー政策の直近の10年史である。

 

 22年5月にドイツ・ベルリンで開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合での議論を引き継ぐ形で、今会合でも脱石炭火力に動く欧州勢はその廃止時期の明示を求めたが、今回も日本が反対し見送られたという。「LNGも対象に」という流れは、そんな中で飛び出してきたのかもしれない。

 

 議論の中では、石炭火力発電の脱炭素を進めるカギとして日本が力を入れるアンモニアとの混焼モデルについても、石炭の温存につながるとの厳しい指摘もあったという。いずれにしても、2050年をカーボンニュートラルのゴールにして脱化石燃料のシナリオを描いていた日本にとっては大きな誤算なのではないか。

 

 5月のG7サミット(主要国首脳会議)、その後に控える11月30日からのCOP28(ドバイ開催)にどう臨むのか。エネルギー政策の長期的な視点での見直しを含め脱炭素戦略の早急な修正が必要だろう。このままではG7議長国としてのリーダーシップばかりでなく、脱炭素を巡る国際交渉の場でも後れを取りかねない。

 

(IRuniverse G・Mochizuki)

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