JX金属 世界水準LiB完全リサイクル技術完成
世界のLiBリサイクル技術を追うMIRUはJX金属㈱( “JX金属”)や住友金属鉱山㈱など国内のニッケル・コバルト生産技術を有する企業のリサイクル技術開発の動きに長い時間注視してきた。
2021年11月9日MIRUは当時既に技術本部技術戦略部の電池材料・リサイクル事業推進室室長であった佐藤利秋氏に事業開発の経緯と現状の開発中プロセスや課題を伺っていた。
関連記事:JX金属 次世代LiBリサイクル技術確立 日本のLiB循環経済の実現に向けて
(JX金属のLIBリサイクルの沿革)
(JX金属資料より)
2023年4月11日福井県敦賀市のJX金属のリサイクル拠点で同社技術本部技術戦略部の電池材料・リサイクル事業推進室佐藤利秋室長のご案内で、2021年5月創立の同社の“クローズドループリサイクル”を推進するJX金属サーキュラーソリューションズ㈱(JX Metals Circular Solutions Co., Ltd.“JXCS”)を訪問した。
来春、北陸新幹線の敦賀駅の建屋は既に完成しているが、その目の前にJX金属サーキュラーソリューションズがある。17万平米の広大な敷地にはLiBリサイクル設備が稼働していた。
敷地はかつて亜鉛製錬や各種のリサイクル事業が展開されていたがそれらは既に役割を終えて新たなLiBリサイクル設備に変身し、新たなLiBリサイクル設備(廃民生用LiB1000トン/年規模)に変身し、2010年から稼働している電解設備に加えクローズドループリサイクルの実現に向けて、2021年に硫酸ニッケル、2022年に硫酸コバルトそして2023年に炭酸リチウムの高純度製品の製造ラインが相次いで完成している。既に試作品のサンプル供与も始まっているとJXCS技術開発部担当部長の伊藤順一氏が説明してくれた。また、現在敦賀の焼却設備はかつてE-Scrapを焼いていた定置炉を使用しているが、今現在、日立の技術開発センターにてLIB焼却に適した処理設備を開発しているとのこと。
写真:製造中の溶媒抽出・晶析法高純度硫酸ニッケル(JX金属&JXCS提供)
写真:製造中の溶媒抽出・晶析法高純度硫酸コバルト(JX金属&JXMCS提供)
写真:製造中の溶媒抽出後液の炭酸化晶析法高純度炭酸リチウム(JX金属&JXCS提供)
過去のJX金属のニッケル・コバルト製錬事業やe-スクラップ処理技術など2つの生産技術を基盤としてLiBリサイクル技術開発が始まったのは2005年まで遡る。実際にLiB正極材の工程スクラップのリサイクルを開始したのが2010年であるから、今回の完全なLiBクローズドループリサイクル技術が完成するまでにJX金属は19年に及ぶLiBリサイクル技術開発に挑戦を継続してきた。
JX金属とJXCSの開発の全貌を下表に纏めてみた。
既にサンプル出荷されている製品も生産工程内で見学させて頂いた。上記の表はあくまで筆者の見学の印象を纏めたものであり、JX金属&JXCSから伺った内容を解釈したに過ぎないので、諸兄のご了解を頂きたい。
改めて敦賀の日本地図を見て少々驚いた。琵琶湖の北部は福井県が蓋をしたように東西にへばりついている地形でしかも日本海側はすっかり福井県に沿っている。また地図で見てその地形が東北の三陸海岸の様に入り組んだ自然の良港である。大型貨物船が寄港できる場所は正に敦賀の最大の財産ではないだろうか。
人道の港 敦賀
この港にこれまで世界の紛争や戦争の度に多くのポーランド難民やユダヤ難民の子供たちの生存を支援して受け入れてきた港でもある事を今回初めて平井社長のご配慮で知った。日本はこの様な形で欧州の国とも繋がってきたのである。
写真:人道の港 敦賀ムゼウム(Port of Humanity Tsuruga Museum)
JX金属社は、敦賀を世界のLIBリサイクル拠点に位置付けて、既にドイツで自動車メーカーとEVバッテリーの実証試験に着手したばかりだが、この20年近いLiB開発の歴史は、今明確にJXCS社へ受け継がれた事が明確になったと感じた。
→ JX金属:ドイツにおける車載用リチウムイオン電池リサイクル研究開発設備の竣工について
1000年企業を研究している大学の研究者がNHKラジオR1で語っていた。
「ぶれない会社は経糸がしっかりしているから横糸も編んでいける」とした。
日本で初めて完成したJX金属社とJXCS社の結晶を世界の自動車メーカーは同じ目線で是非このイノベーション技術を活用し、カーボンニュートラル時代に商業化で協調して”クローズドループリサイクル“を貫いて頂きたいと老齢元技術者は切願する。
(IRUNIVERSE Katagiri&Tanamachi)
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