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鉄鋼輸出実績 2022年度 概況詳細

 2023年4月28日、一般社団法人日本鉄鋼連盟が発表した鉄鋼輸出概況によると、2022年度の鉄鋼輸出(全鉄鋼ベース)は21年度(3,418万2,222トン)比5.6 %減の3,228万4,359トンと2年ぶりの減少となった。20年度(3,115万9,365トン)比では、3.6 %増となったが、2017年度以降6年連続の4,000万トン割れとなった。中国、台湾及びタイ向けは減少したが韓国、米国、EU及び南アフリカ向けが増加した。

 

仕向け先別(全鉄鋼ベース)では、タイ(509万トン、同10.0 %減)が2年ぶり、中国(348万トン、同30.8 %減)が2年連続、台湾(176万トン、同20.3 %減)が5年連続の減少となった。

ASEAN5向け(タイ・インドネシア・シンガポール・フィリピン・マレーシア)は、前年度(973万244トン)比で6.8 %減の907万515トンであった.

 

一方、韓国(560万トン、同5.8 %増)が2年連続、米国(129万トン、同7.4 %増)が2年連続の増加となった。

 

<2022暦年情報>

 2022暦年の鉄鋼輸出(全鉄鋼ベース)は21暦年(3,440万494トン)比6.1 %減の3,230万3,311トンと2年ぶりの減少となった。20暦年(3,213万5,607トン)比では、0.5 %増となったが、2017年度以降6年連続の4,000万トン割れ。中国向けは減少したが韓国、米国、EU及び南アフリカ向けが増加した。

 

 仕向け先別(全鉄鋼ベース)では、タイ(504万トン、同15.0 %減)が2年ぶり、中国(395万トン、同22.9 %減)が2年連続、台湾(181万トン、同22.7 %減)が2年連続の減少となった。

 

 一方、韓国(543万トン、同10.9 %増)が2年連続、米国(127万トン、同7.6 %増)が2年連続の増加となった。

 

 暦年の情報は、下記別報、鉄鋼・ステンレス 暦年輸出量分析をご参照ください。

鉄鋼・ステンレス 暦年輸出量分析  | MIRU (iru-miru.com)

 

<2022年度情報>

図1に2000年度からの鉄鋼輸出実績(全鉄鋼ベース)年度推移を示す。

 2022年度の鉄鋼輸出(全鉄鋼ベース)は21年度(3,418万2,222トン)比5.6 %減の3,228万4,359トンと2年ぶりの減少となり、2005年度(3,207万トン)に次ぐ量に減少した。

 

 全鉄鋼ベースの輸出量は、2012年をピークに減少傾向であるが、2017年以降6年連続で4,000万トン割れとなった。

 

図1 鉄鋼輸出実績(全鉄鋼ベース)年度推移(2000年度〜2020年度)

 

 2022年度及び2021年度の仕向け国:世界計の品目別数量及び金額を下記表に示す。

 2021年度比で輸出量が増加した品目について黄色マーカーで示した。

 銑鉄、形鋼、厚板、熱延広幅帯鋼、電気鋼板及び継目無鋼管が前年度比で増加した。

 

 

 図2に、全鉄鋼仕向け先別輸出量 年度推移を示す。輸出量は減少傾向にあり、中国向け、台湾向けが減少傾向にある。22年度輸出量はは21年度に比べ、韓国向けが増加した。これは、ポスコの浦項製鉄所が台風で被災し一時休止したことによる代替供給によるものと思われる。2022年度はEU向けが増加傾向であることが特徴的であるが、これは2022年2月のロシアによるウクライナへの侵攻に起因するものと推定される。

 

図2 全鉄鋼向先別輸出量の暦年推移(2017年度〜2022年度)

 

 そこで、四半期推移にて、その影響を見てみることとする。

 図3には、四半期推移を示す。

 

図3 全鉄鋼仕向け先別輸出量の四半期推移(2021年1〜3月期から2023年1〜3月期)

 

 2022年2月24日にはロシアがウクライナへ侵攻し、両国から多くの鉄鋼半製品を輸入してきた欧州市場は混とんとした情勢になり、市況が一時急騰したEU向けは、4月に2000年以降で初めて月間20万トンを超えた。5月及び11月も20万トンを超えた。

 

 EU向けでは、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランド及びベルギー/ルクセンブルクが増加した。オランダ、スペイン、イタリア及びベルギー/ルクセンブルク向けが21年度比2〜3倍、ポーランド向けは10倍となった。特に2022年4〜6月期及び10〜12月期に増加した。スペイン及びベルギー/ルクセンブルク向けは、2023年1〜3月期も増加した。

 

 鉄鋼連盟が発表した四半期情報より、2015年からの四半期別の前年同期伸び率寄与度(%)の推移を示す。 前年度比ではその他のみ増加した。

 EUはその他に含まれる。

 

 上記第20図におけるその他の、EU以外では、南アフリカ向けが含まれる。南アフリカ向けは約2倍の14万437トンと10万トン台に達した。南アフリカ共和国がホットに対する緊急輸入制限措置(セーフガード・SG)を撤廃したことにより、輸出量が増加したものと考えられる。

 

 日本のアフリカ向け鉄鋼輸出は2013年度に記録した127万トンが過去最高であった。品目では、その多くは熱延コイルが占めた。22年度は85.4万トンと当時には及ばないものの、南アフリカ向けが安定的に増加した。

 

 また、日本製鉄や伊藤忠丸紅鉄鋼と関係が深いマバチ・ローリング・ミルズなどがある東アフリカ最大市場のケニア向けも42万7,874トンと20年に記録した42万1,992トンを超えた。

 

 業界紙によると、2022年は金利上昇やドル高が新興国経済にも波及したが、鉱山資源が豊富な南アフリカやコーヒーなど農作物を輸出する東アフリカでは外貨不足の影響が限定的だった。地域的に近いインドミルの影響があるものの、海上運賃(フレート)を加味しても日本から東・南アフリカへの輸出は一定の競争力があるようだ。

 

 ケニアを始め東アフリカでは冷延ミルや亜鉛めっきラインを増設する構想が進んでおり直近ではウガンダのケンバラで単圧工場を操業するルーフィングス・ローリング・ミルズがイタリアの製鉄プラント会社ダニエリへ、冷延などの設備増強を発注した。24年半ばにも、めっき鋼板で年産10万トン、カラー鋼板で年産5万トン増産する計画のようだ。構造対策で日本の鉄鋼輸出余力は限られるものの成長市場のアフリカで将来の需要をどう取り込みかが今後の課題になるかもしれない。

 

 図4には、月別推移を示す。

 

図4 全鉄鋼仕向け先別輸出量の月別推移(2022年1月から2023年3月)

 

 2022年9月にポスコの浦項製鉄所が台風で被災(台風第11号により浦項製鉄所が冠水して、全高炉が停止するなど、経済的被害をもたらした。)して一時休止した代替供給もあって10月から韓国向けが増加した。11月には韓国向けが50.1万トンと増加したため、12月(41.6万トン)輸出量は、前月比では16.9 %減となったがその後も増加が継続した。

 

 タイ向けは2022年に入って、増加傾向であったが、下期に入って減少傾向を示した。

 

<EUへの輸出概況>

 8月のEU向けは前年同月比75.9 %減の4.4万トンと、月間最多の20万トン超えを記録した4月及び5月から大幅に減少した。

 9月及び10月は取り戻し、10万トン台を維持し、11月は再び、21.7万トンと、20万トン超えとなった。特にイタリアへの輸出量が増加したのが特徴的であった。

 12月以降は、20万トンを下回った。

 

 図5に全鉄鋼・半製品・熱延広幅帯鋼の輸出量及び金額(円及びドルベース)の推移を示す。

 

図5 全鉄鋼・半製品・熱延広幅帯鋼の輸出量及び金額(円及びドルベース)の推移

(一般社団法人 日本鉄鋼連盟 鉄鋼統計要覧より)

 

 円ベースで鉄鋼輸出金額が過去最高を記録したのは08年、当時熱延コイルの輸出価格が一時はトン当たり1千ドルを付けたが、9月のリーマンショック以降はアジア市場でトン当たり400ドル〜500ドルまで急落した。この年の鉄鋼輸出量は、年度で3,415.3万トン、金額は円ベースでは4兆4,602億円、ドルベースでは439億ドルであった。

 2022年度の鉄鋼輸出量は3,228.4万トン、円ベースで5兆869億円、ドルベースで378億ドルとなった。

 数量では2008年度に比べ、186.7万トン程減るが、円換算では5兆円を超えた。1ドル=134円程度まで円安が進み同じ単価でも3割近く円価が膨れるのが主因だが、当時と輸出品目や輸出先は変化している。

 

 2023年2月までの鉄鋼輸出総括表を下記に示す。

 

 

 1ドル145円程度の円安は、1987年以来。この年の鉄鋼輸出は通貨危機でアジア向けが厳しいなか、米国、ロシア及び欧州向けを大幅に増やした。

 

 現在は、貿易救済措置、アンチダンピングやセーフガードにより厳しい情勢である上、輸出先もそれぞれ問題を抱えており、先行き不透明感は拭えない状況。世界経済は減速しており、厳しい輸出環境が継続する見通しとなった。

 

 品種別詳細については、別報とする。

 

 

(IRUNIVERSE tetsukoFY)

 

 

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