日本トムソン(6480)23/3期WEB決算説明会メモ PBR1割れ、悪材料織込みポジティブ
23/3期9.6%増収39.9%経常増益で過去最高益更新も24/3期は半導体不振等で収益急降下
株価566円(5/19) 時価総額416億円 発行済株73501千株
PER(24/3DO予6.2X)PBR(0.56X)配当ARJ予17円 配当利回り:3.6%
・23/3期9.6%増収39.9%経常増益で過去最高益更新も足元受注急減で受注は21.1%減
・23/3Q4に半導体製造装置、マウンタ、工作機械など不振で受注44%減で収益下降
・24/3期は半導体製造装置の急減速、工作機械減速で9.2%減収31.3%営利減予想と厳しい
・25/3期半導体向け再拡大、EV含め一般機械向け設備投資も回復基調で収益急回復期待
23/3期9.6%増収39.9%経常増益で過去最高益更新も足元受注急減で受注は21.1%減
直線運動用軸受大手で半導体製造装置、電子部品実装装置向け等の小型精密品中心に強味を持つ。5/15に決算が開示され、5/16にWEB説明会が実施された。
23/3期は売上高682.60億円(9.6%増)、営業利益94.59億円(60.4%増)、経常利益104.79億円(39.9%増)、税引利益74.69億円(80.7%増)、受注高619.39億円(21.1%減)と受注が減退も収益は年度として好調に推移した。11/14の増額修正予想に対して売上は2.4億円未達、営利は4.59億円増額、経常利益は3.21億円未達と、為替変動により多少のブレはあったが、ほぼ計画線で着地した。税引利益の伸びが高いのは前期に中国子会社の減損があったため。結果として売上で2期連続最高額更新、営業利益は08/3期の98.53億円に次ぐ2番目、経常利益は08/3期の99.89億円を抜いて初めて100億円の大台に乗せ過去最高益更新となった。
製品別売上では軸受等が615.36億円(10.0%増)。全体の6割強を占める直動製品が半導体製造装置、各種医療機器、5G関連向け等に伸び、工作機械向けも伸びる。ニードル軸受もロボット向け等、クロスローラ軸受などが拡大した。機械部品は売上高67.23億円(6.1%増)と半導体製造装置向けなどに下期反落も精密位置決めXYテーブルなどが拡大。
地域別では全地域で増収を確保した。日本は321.53億円(1.5%増)と一般産業向けや工作機械向けに増加、半導体製造装置、マウンタ向けなどは一服し伸び率は小さい。中国向けは119.37億円(16.9%増)とゼロコロナ政策の影響があったものの、設備投資需要が底堅く推移した。米国は90.02億円(23.6%増)と、精密、医用が好調に推移、円安効果もあり伸び率が最も高くなった。欧州は66.71億円(16.2%増)と、工作機械、市販を含め総じて好調に推移した。海外全体では361.07億円(17.8%増)となり、国内向けを上回った。
業界別では直販・海外代理店分が355.29億円(14.1%増)とコロナ明けで拡大、工作機向けも34.52億円(17.6%増)と工作機械受注好調で増加、輸送機器向けは設備投資緩慢で22.42億円(3.6%増)に止まる。一方、エレクトロニクス向けは119.91億円(5.4%減)と、半導体・電子部品製造装置向け好調も、チップマウンタ、電気機械向けが不振で減収に。
営業利益の増減要因ではプラス面で為替影響が大きく30.18億円のプラス効果(22/3期1$=112.38円が135.47円、23円の円安)、実質増収効果は6.71億円となっている。一方で販管費が人件費増、物流費増などで9.5億円嵩み営業利益のマイナス要因に。なお営業外での為替益は4.68億円(前期は12.19億円)と縮小しており経常利益の伸びが営利の伸びを下回っている。
23/3Q4に半導体製造装置、マウンタ、工作機械など不振で受注44%減で収益下降
23/3期では経常最高益となったが、足元は半導体製造装置、マウンタ、工作機械向けが急降下、Q4受注が122.34億円(同期比44%減、Q3比16%減)と大幅減となった。また生産高も在庫調整の影響が有り149.74億円(同期比3%減、Q3比16%減)と抑制された。
この結果23/3Q4は売上高161.30億円(0.2%増)ながら営利19.73億円(3.7%減)、経常利益は円安一服で21.89億円(24.3%減)とピークアウトした。
需要先別ではエレクトロニクス向けが25.34億円(同期比19%減、Q3比19%減)と急降下、また好調だった市販・海外代理店向けも在庫調整影響もあり84.45億円(同4%増、同11%減)などが影響している。
24/3期は半導体製造装置の急減速、工作機械減速で9.2%減収31.3%営利減予想と厳しい
24/3期会社予想は売上高620億円(9.2%減)、営利65億円(31.3%減)、経常利益67億円(36.1%減)、税引利益45億円(39.8%減)予想。半導体製造装置の急減速、工作機械減速、円安一巡で足元の受注が低迷、ユーザーの受注回復が下期イメージで、同社は年明けからの回復見通しで、大幅収益低迷予想とした。
製品別では軸受等が539億円(12.4%減)予想に対し、機械部品81億円(20.5%増)と増収予想としている。機械部品は超高精度・低断面のリニアテーブルやリニアモータテーブル等のメカトロ製品の本格拡大で売上増を見込む。また軸受等では超小型のリニアウェイ(スライド部分が5mm程度、重さ2g)等を投入、さらに世界で初めて実用化した液晶潤滑剤を利用した真空・クリーン・高温下で利用する「液晶潤滑リニアウェイ」なども用途開発が進む見通しで、売上が伸びない中でも高付加価値化で総利益率を維持する方向にある。
地域別予想では日本が301億円(6.4%減)、海外319億円(11.7%減)予想。中国が110億円(7.9%減)と新エネ関連堅調も全体は市況悪化。北米は82億円(8.9%減)と医用は堅調も他が低迷見通しに。
利益面では営業利益減益分29.59億円に対し、減収影響で19.05億円、為替前提を1$=1130円(5.47円円高)と置き、為替益減少7.55億円を見込む。売上原価では値上げ効果などがプラストなり4.29億円改善効果を見込むも、能力増強に伴う人件費増、営業活動の活発化などで販管費が嵩み7.29億円があるとしている。
実際には為替益減が避けられるとみられ、また販管費も通常多めの見積もりとなっている事などで、全体収益は会社予想を多少上回ると見られる。但しユーザーの在庫水準がかなり高いとみられ、受注の本格回復はQ4にずれ込む可能性がある。
25/3期半導体向け再拡大、EV含め一般機械向け設備投資も回復基調で収益急回復期待
同社は昨年、半導体関連の需要拡大から、2021年5月に作成した“中計2023”について、3カ年平均営業利益45億円目標に対し平均70億円以上と大幅に上方修正した。このため24/3期は58億円で累計営業利益210億円となり中計達成となるが、足元の減速また円安効果が増益の最大要素となっているなど、必ずしも満足する形ではない形での達成にとどまる見通し。
現状、半導体生産がメモリ中心に減退、これを受けて半導体製造装置需要が20%程度減速する見通しのほか工作機械受注も減速、状況が一転し24/3期営利予想65億円は中計平均70億円に対し未達予想となっている。しかし半導体について下期からは回復が見込まれ、これに伴い半導体製造装置受注も年明けには急回復が期待され、同社受注も本格回復が見込まれる。同社は国内工場及びベトナム、中国蘇州での生産体制を増強、24/3期は23/3期比倍増の50億円の設備投資を計画、今後の需要増に迅速に対応できる体制作りを構築する。
25/3期は半導体向けなどの売上回復が進もう。加えてロボット関連では多関節化でクロスローラ軸受の拡大が期待されるほか、医療機器向け等の拡大などで軸受事業は23/3期並みに回復が見込める。一方、メカトロ製品群も新製品群の堅調な拡大が見込まれ、全体として再度売上高700億円にチャレンジする形となろう。
足元、株価は23/3期会社予想EPS62.99円に対しPER9.0倍となっており、プライム機械平均PER17.6倍に対し割安で有り、THKの16.6倍、黒田精工の15.2倍に対しても割安感がある。24/3下期以降、収益の回復が見込まれ、半導体製造装置、チップマウンタ向けボールスプライン、ロボット向けクロスローラ軸受などが拡大するとみられ、収益悪化を織込んだとみられる。しかも現在のPBRは0.56倍と1を大きく下回っており、プライム市場でのPBR1割れ対策も見込まれ、下ブレリスクも小さいとみられ、改めてポジティブに考えたい。
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