ネットゼロ社会におけるプラスチック資源循環は!?――第1回プラスチック資源循環フォーラム
「第1回プラスチック資源循環フォーラム」(主催:一般社団法人アジアプラスチック資源循環促進協会、協賛:株式会社プラコー)が23日、都内で開催された。国内で排出される廃プラスチック類の再資源化と国内循環の量的拡大や品質の向上を目標に、関連事業者にとどまらず消費者、地方公共団体を含めたステークホルダーに最新の政策、業界・技術動向などの情報を提供し、併せて相互の交流の場をつくることを目指している。NPO法人ごみじゃぱん代表理事の石川雅紀・神戸大学名誉教授らが登壇、最新事情について講演した。
フォーラムでは環境省のリサイクル推進室の矢野克典室長補佐らが来賓として挨拶した。矢野氏は、2022年4月のいわゆるプラスチック新法(プラスチックに関わる資源循環の係る資源循環の促進等に関する法律)の施行で、「廃プラスチック問題への消費者の意識が向上、行動変容に繋がり、温暖化対策にもなってきている」と述べ、その基盤整備へ「(関係業界の)具体的な取り組みが着実に進展してきている」との認識を示した。
(環境省:矢野氏)
「プラスチック新法で何が変わる」をテーマに講演した石川氏は、「(2050年の)ネットゼロ社会が今の社会と違う点は(焼却処理して)CO2を排出すると費用を払わなければならない」点と、まず大前提を指摘。その上でプラスチック新法の施行により可能になった製造事業者による自主回収では均質なプラスチックが回収でき、「高度なリサイクルが実現する」と、生産者が使用済み製品を回収し再資源化して元の製品(群)に戻す水平リサイクルの有効性を訴えた。ただ、多様で広範囲に及ぶ発生源をカバーするため回収コストが高くなる課題も抱えているとし、新たな仕組みを定着させるには同業者や消費者、小売店など他の主体との連携による効率化が欠かせないとした。
(神戸大学名誉教授:石川氏)
講演では石川氏に続いて、4人が登壇した。
日本プラスチック工業連盟の加藤英仁・専務理事(演題:プラ工連のプラスチック資源循環の取り組み)は、プラスチック製造・加工・利用など様々なプラスチックに関連する企業の連盟としての取り組みの方向性を示した上で、動・静脈産業が連携して循環を実現していく重要性を指摘した。
(日本プラスチック工業連盟:加藤氏)
国立研究開発法人産業技術総合研究所の大木達也・首席研究員(同:資源循環における選別技術高度化の基礎)は、リサイクルにおける選別の難しさなど科学的な視点で講演を行った。
(産業技術総合研究所:大木氏)
旭化成株式会社の井出陽一郎・資源循環プロジェクト長(同:プラスチック資源循環デジタルプラットフォームの開発)は、ブロックチェーン技術を活用してリサイクルのトレーサビリティを担保し、全体の見える化をすることによって、消費者・社会の意識改革を目指す自社アプリ開発の紹介を行った。
(旭化成株式会社:井出氏)
株式会社プラコーの古野孝志・代表取締役(同:プラスチックリサイクル装置の最新動向)は、様々なプラスチックの成形技術やそれに関連した装置、リサイクル装置などをビデオを通じ紹介した。
(プラコー:古野氏)
講演の後に行われた参加者交流会で主催者を代表して挨拶に立った本多敏行・代表理事(株式会社和円商事社長)は、およそ160人の参加者に謝意を述べた上で、フォーラムの継続開催に意欲を示した。
(アジアプラスチック資源循環促進協会:本多氏)
(IRuniverse G・Mochizuki)
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