三菱ケミカル 全国初の濃縮バイオ液肥施設で約20倍の肥料成分濃縮に成功
サステナブルで効率的な循環型農業の実現をめざして濃縮バイオ液肥製造プロセスを事業化へ
三菱ケミカルグループは、三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社(MCAS)が、公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター(リ総研)の支援を受けて、九州大学、福岡県築上町などとの共同研究プロジェクトを完了し、濃縮バイオ液肥製造プロセスを事業化すると発表した。産学官で連携した本研究の成果を、2023年7月6日に福岡県北九州市で開催される「エコテクノ2023」で発表する予定。
福岡県築上町は、し尿や浄化槽汚泥を液状の肥料(液肥)にする循環型農業に取り組んでおり、すでに水稲や麦などの栽培に使用されている。浄化処理して河川などに流す代わりに液肥にすることで、排水処理費用の削減と資源循環を実現している。
今回のリ総研共同研究プロジェクトでは、築上町が新たに築上町有機液肥製造施設内に建設した全国初の液肥濃縮施設で、濃縮技術の向上に取り組んできた。
その結果、膜分離による懸濁物質の除去と電気透析を行うことで、肥料の主要成分である窒素およびカリウムを通常の液肥に比べて約20倍に濃縮することに成功した。濃縮により、肥料成分を農作物に与えたい濃度に調整することができるようになり、化学肥料を使用した場合と遜色ない生育を確認している。さらに、液肥の輸送コストや保管スペースを削減でき、また、水稲や麦などの大規模土地利用型農業だけでなく、これまで利用できなかった施設園芸や家庭菜園での利用が可能となった。
MCASは、リ総研共同研究プロジェクトの研究代表者として、施設の設計や性能確認および事業化の検証を行い、濃縮工程に同社グループ製の中空糸膜エレメントを導入している。今回の成果を踏まえ、今後、他の自治体や事業体の液肥製造工程へのソリューション提供を進め、循環型農業を推進し、サステナブルな社会の実現に貢献していく。
■リ総研共同研究プロジェクト「濃縮バイオ液肥製造に関する事業化プロジェクト」
し尿・浄化槽汚泥を原料とする液肥の濃縮を行い、農業利用できる濃縮バイオ液肥の製造を行うことを事業化するプロジェクト。濃縮バイオ液肥は農林水産省「みどりの食料システム戦略」(2021年5月策定)において2050年までの目標とされている化学肥料の低減等の取り組みに貢献する技術であり、循環型農業の普及・促進をめざしている。
研究期間:2020年4月~2023年2月(3年間)
メンバー:MCAS(研究代表者)、九州大学、静岡県立大学・福岡県築上町・福岡県みやま市
実施場所:福岡県築上町
■三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社(MCAS)
MCASはあらゆる産業分野において、高い技術と長年培ってきた経験を基に、排水の種類・組成に合わせて最適な処理システムを提案している。同社グループ製中空糸膜を用いたMBR(膜分離活性汚泥装置)を主軸に、官需(下水、ゴミ浸出水)、産業排水(食品、化学、畜産)、難分解性COD処理等のあらゆる分野に、様々な技術のソリューションで対応し、持続可能な社会に貢献している。
築上町が建設した 全国初の液肥濃縮施設(福岡県築上町)
(左)通常液肥(右)濃縮バイオ液肥 濃縮バイオ液肥は懸濁物質の除去で透明度が増し、
さらに電気透析で肥料成分が濃縮されている
三菱ケミカル製 中空糸膜エレメント
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