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SAF狂想曲に揺れる日本の廃食用油(中)〜SAF需要増に従来のUCO需要家はどうする?

 SAF狂想曲に揺れる日本の廃食用油(前)〜価格は2年前の2倍超!からの続き

 

 SAF(Sustainable Aviation Fuel)の世界的な需要増により、ここ数年で俄然注目を集めるようになったUCO(廃食用油)。UCOは、ほぼその全量がリサイクルされていたが、このSAF需要により、そのサプライチェーンは大きな変化の渦中にある。では、UCOのサプライチェーンがどういう状況にあり、今後どうなって行くのか。その辺を少し探ってみたい。

 

2000年頃から、脱炭素貢献するバイオディーゼルが熱視線を集める

 2000年代初頭くらいから、京都議定書をはじめ、気候変動防止の観点から脱炭素の動きが全世界で高まり始める。その頃から、同目的に貢献する「バイオディーゼル(生物由来油から作られるディーゼルエンジン燃料の総称)」が注目され始めた。前記の通り、UCOからは数%ながら燃料用にバイオディーゼル(BDF)が再生されていた。

 

 そこで、今後市場ニーズが高まるBDFに目をつけ、UCOを、特に事業系のUCOを調達しようとする事業者が多く現れた。しかしこれは、回収スキームが確立され飼料用、工業用など、あらかじめ行き先の決まっていたUCOである。なおかつ、これらは廃棄物であるため、取り扱いには許可が要る‥そこでの彼らが考えたのが、廃棄物ではなく資源として有価で買い取るという方法だ。

 

 しかし当時BDFには規格がなく、品質もバラバラで、たとえばBDFを用いて自動車他のエンジンを動かすなどしても、一斉メーカー補償などもできなかった。そのため、一時は多く立ち上がった同業者だが、5年後くらいにはほとんどいなくなったという。

 

「しかし、こうした動きがあったため、排出事業者には「UCOは有価で買ってもらえる」という認識が広がり、ここで排出事業者は「UCOは有価物」「UCOは廃棄物(処理費がかかる)」という2者に大きく分かれるようなりました。これが大きな混乱を招くことになった要因のひとつです」(塩見氏)

 

 それから20年ほど経った2020年頃から「SAF」という文脈が出てくる。このときになって、ある程度退場したものの、少数残っていたBDF業者は起死回生を狙い、SAF原料用にと再度UCO調達に乗り出し始める。この頃すでに欧州では、脱炭素に向けSAF製造が本格化していた。‥まもなく国内でも国策という錦の御旗のもと、SAFは戦略物資として注視されるだろう‥。

 

行き先(主に飼料)の決まっていたUCOを、SAFに持って行かれる?!

 前稿で記した通り、国際民間航空機関(ICAO)は2022年秋、国際線の航空機が排出するCO2を2050年までに「実質ゼロ」とする目標を設け、これを受け、日本政府(経済産業省)も2030年に国内航空会社の使用燃料の10%をSAFに置き換えることを石油元売りに義務づける方針を示した。そこで、これを達成するには国内でどのくらいのSAFを調達しなければならないか?という目標値が推計されたが、それは170万t程度だろうとされた。

 

 当時、SAF原料には精製などをしっかり行なっているUCOが最も適していると、一般的には認識されていた。しかし、UCOの国内発生量はこれも前記したように40万t程度である。もちろんSAFは、UCOだけが原料ではなくバイオ由来、廃プラ由来のものもあるのだが‥。



「ですが、なぜかSAFに関する官民協議会では、国内で必要となるSAFはUCO利用で全量賄える、と話していたようです。これは議事録にもしっかりと残っています。そもそも、発生量(40万t)的にも無理がありますし、国内UCOは一部を除いてほとんどが飼料用、工業用と行き先が決まっていたものです。UCOがSAF原料に割かれた場合、これまでの需要家はどうするのか?こうした議論が全くなされていないのです」(塩見氏)

 

 

 さらにUCOの需要家の半数以上は飼料メーカーであり、これは食糧競合にもなる。そもそもUCO Japan(全油連)は農水大臣の認可団体であり、廃食用油を飼料原料として安定供給することを目的の一つとして作られた組織だ。

 

「私たち全油連は、UCOをSAF向けに用いることを一斉否定するものではありません。これまでも燃料用(BDF他)に供給もしてきました。しかし、SAF原料としてのUCOの集め方がこれまで業界が法律に則ってきたルールと少々違うのではないかと思っています。SAFの国内生産に向け、いわゆる大手エネルギーメーカーがその実現のために、原料調達に乗り出している。でも、これまでの需要家はその煽りを受けて、原料不足と価格高騰に泣かなければならない。この点を見逃してはいけないと思うのです」(塩見氏)

 

 UCOをSAFに振り向けるということは、「日本の食糧を守れ」ということと「SAFで飛行機を飛ばせ」ということを天秤にかけているともいえる。では果たして、鳥肉・鶏卵を食べる人(UCO利用飼料のほとんどは鶏肉・鶏卵向け)と飛行機に乗る人は、どちらが多いのだろうか?

 

 これは、是非が安直に決められることではないが、しかし現今のように、大きな市場勢力が財力にものをいわせてUCOを買い叩いていくという構図は、是正されなければならない。UCOの発生量が限られている限り、これは国内資源だということを国が認め、その供給を計画的に管理していくことが必要なのではないか?現実に、すでに国内のUCOの1/4は、海外に輸出されてしまっているのだから。(続く)

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

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