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山一電機(6941) 23/3期 電話取材・有報メモ ポジティブ継続

23/3期18.7%増収9.1%営利増で最高益も24/3期はTS調整で27.7%営利減予想

株価2366円(6/30) 時価総額 516億円 発行済株21,829千株

PER(24/3期DO予9.0X)PBR(1.34X) 配当(24/3DO予)79円  配当利回り:3.3%

 

要約

・23/3期18.7%増収、9.1%営利増で2期連続最高益更新も半導体需要低迷しQ3より悪化

・24/3期は上期TS事業低迷影響し10.6%減収27.7%営利減予想も円安で増額期待

・新中計で26/3期に売上高500億円、営業利益100億円を目指すが前倒し達成期待

 

 

23/3 期 18.7%増収、9.1%営利増で 2 期連続最高益更新も半導体需要低迷し Q3 より悪化

 

 23/3期は売上高469.85億円(2/3修正予想比5.85億円増額、18.7%増)、営業利益91.34億円(同8.84億円増額、9.1%増)、経常利益94.50億円(同8.50億円増額、8.1%増)、税引利益72.12億円(同12.12億円増額、6.5%増)と収益とも過去最高益更新となった。

 

 事業別にテストソリューション事業(TS)は売上高242.03億円(同2.03億円増額、17.0%増)、営利70.93億円(同5.63億円増額、1.8%増)に。テスト用ソケッ卜がクアルコム向け(83.40億円)を中心にスマホ向けがハイエンドに加えミドルレンジ向けに上期まで好調も下期失速、通期で3%弱の伸びに止まる。バーンインソケットは30%弱の伸びに。メモリ向けは3DNANDの落ち込みをDRAM向けでカバー5%程度の伸び。一方、ロジック向けがADAS向け等車載向けの伸びが6割強あり、非車載向けもIOTデバイス向け等でインテルの不振がある中で3割弱の成長に。利益面ではテストソケットの伸び悩み、MIX悪化で4.4ポイント営業利益率が低下し29.3%となり、営業利益が微増に止まった。

 

 コネクタソリューション事業(CS)は売上高210.81億円(同3.81億円増額、23.3%増)営利16.31億円(同1.01億円増額、21.0%増)に。FA関連がシーメンスを中心にCNC装置向けやPLC向けなどインダストリアル4.0の拡大に伴う重要増などの拡大で2割強の伸びに。車載向けではテスラ向けカードロック機能コネクタなどが拡大し3割弱の伸びを確保した。高収益の通信向けはHUAWEI向けの低迷を欧米向けで補い、売上では欧米向けが上回り、全体で30%弱の伸びに。利益面では増収効果が大きく、材料高などが影響し利益率が0.2ポイント低下したものの利益は本格回復に。

 

 全体を通じ、23/3HIまでは好調も、Q3よりTS事業の減速、季節性要因も重なり四半期では大きく収益性が悪化した。なお為替の円安(ドルで112.37円が135.47円、23.1円の円安)効果が大きく、売上高で57.9億円、営業利益で29.9億円のプラス効果があったとのことで、これを差し引くと、実質では4%増収ながら営業利益は27%減となる。基本的にTS事業は下期の失速があり、円安効果で収益悪化が隠された格好に。

 

24/3期は上期TS事業低迷影響し10.6%減収27.7%営利減予想も円安で増額期待

 

 24/3期会社予想は売上高420億円(10.6%減)、営利86億円(27.7%減)、経常利益64.4億円(31.9%減)、税引利益45億円(37.6%減)予想とした。23/3Q3以降のTS事業の低迷が上期中は継続、季節性でスマホ向けなどがQ2にかけて増加する局面が24/3期は後ずれし、下期本格回復するも挽回ができないとしている。なお為替前提は1$=130円と前期比5.47円の円高想定としている。

 

 具体的にTS事業は売上高205億円(15.3%減)、営利50億円(29.5%減)予想。上期は売上高90億円(同期比42%減)、営利17億円(同70%減)、下期は売上高115億円(同期比33%増)、営利33億円(2.4倍)予想。23/3HIはクアルコム向けテストソケットが大幅増、一方で24/3H1は新モデルの遅延、数量的にも減少見通し。特にQ1ではTSとして売上高30億円(同期比60%減)、営業利益は収支ゼロまで落ち込むとしている。Q2も売上高で60億円(同期比26%減)予想と、通常はスマホ新モデル向けに季節的に最も売上が高くなる時期で大幅減収を見込み、営業利益も17億円(44%減)に止まるとしている。一方で、24/3H2はバーンインソケットでDRAM向けがデータセンタ向けDDR-5の採用増が見込まれるほか、ロジック向けでは引続き車載向けの拡大、非車載でもクアルコム向けも拡大、一方でインテル向けの回復は期待薄とみている。テストソケットも新モデルの期ずれでクアルコム向けが回復、アップルの新モデル向けも多少寄与が見込める。利益面ではMIX良化なども有り、大幅に収益回復を見込む。

 

 CS事業は売上高198億円(6%減)営利15億円(8%減)予想。車載関連はテスラ向けの好調持続で増加見通しも、FA関連が設備投資鈍化から15%程度落ち込む見通しのほか、通信もデータセンタなどの投資で在庫調整の影響が欧米で有り、ファーウエー向けも伸び悩む見通しで5%程度減少を見込む。利益面では通信の減収影響も有り、利益率が多少悪化すると見ている。

 

 現状、TS事業については23/3期受注が178.72億円(9%減)、BBレシオ0.74、受注残18.73億円(77%減)となっており、ほぼ1.3ヶ月分しか受注残がない中で、Q1は会社想定通りTS事業で円安ながら収支均衡水準まで落ち込もう。但し、為替が1$=140円を超える状況で、Q2には円安による利益増効果が現われ、上期より利益の増額が見込まれる。下期についても為替前提が10円程度円安の140円で推移、MIX良化も伴い、さらに収益の上振れが期待される。CS事業については米国比率が低く、TS事業ほどの為替メリットがない見通しも、テスラ向けの好調、加えて生成AI等の拡大でデータセンタの設備投資、超高速電束ニーズの高まりなどが期待され、こちらは多少の売上増額が見込める。全体として、為替前提に対し円安効果がフルに寄与(ドルに対し1円円安で売上高2.1億円、営業利益1.2億円の寄与)、会社想定を上回り、減益幅が縮小しよう。

 

新中計で26/3期に売上高500億円、営業利益100億円を目指すが前倒し達成期待

 

 同社は今回、新中計として24/3期~26/3期3年間の累計で売上高1390億円、営業利益250億円を目指す事とした。また最終年度の26/3期に売上高500億円、営業利益100億円の大台乗せを目標とする。

 

 事業別ではTS事業を26/3期に売上高263億円、営業利益76億円、CS事業を売上高217億円、営業利益23億円目標とした。TSにおいてはトップシェアのバーインテストでロジック向けでは車載ADAS向けに加え、自動運転向け等の次世代半導体向け、メモリでは世代交代に合わせた対応の強化を目指す。バーンインテストは、半導体製造の最終工程で行われる「温度電圧試験」で、高温環境下で数時間ほど温度・電圧の負荷をかけ信頼性向上と歩留まり向上目的で初期不良をスクリーニングする。特に最近伸びている車載向けでは「CASE」の技術革新にともない高性能な半導体の開発が進められているが、半導体の不良は大事故につながるため、厳しい条件下でのバーンインテストが欠かせず、ソケットも高い耐久性が求められ、製造の難易度から同社の優位性が高まっている。またテストソケットではスマホ向けに加え、微細化、多ピン化、RF対応など、次世代ロジック向けテスト市場への拡大を図る計画。

 

 

 CSでは通信分野の高速伝送技術で先行、次世代プラットフォームへの対応でグローバルニッチトップ製品の拡大を図る。また車載分野ではテスラ向けに加え、自動運転向けの高速次世代電装企画製品のラインナップ、EV関連の拡大を目指す計画。またFAではシーメンスを中心に欧州市場の拡大、さらには半導体製造装置関連製品の拡充を行う計画にある。

 

 

 25/3期については半導体生産の拡大が本格化、シェアの高いバーンインではメモリにおいてDRAM分野でデータセンタ向けDDR-5の本格拡大が期待される。5Gや生成AI、拡張現実やメタバースにより、サーバーでは大容量データの高速処理がカギとなるが、サーバー駆動と冷却に大電力量を消費するため、高性能かつ低消費電力のDDR-5が不可欠。同メモリは微細化、多ピン化、複雑化が進んでおり、付加価値も高まる見通し。またフラッシュメモリもキオクシアが218層の新設計の3DNANDフラッシュを発表、マイクロンも232層の量産化を始めるなど次世代製品の量産拡大が期待される。ロジックでは車載向けの拡大に加え、インテルの次世代サーバーCPU向けの本格量産の開始が見込まれる。加えてクアルコムのIOT/組込み機器向けスナップドラゴン等の需要も拡大が見込まれる。またテストソケットではクアルコム向けが遅れている5Gミリ波対応の本格化で2025年スマホモデルでは改めて需要が高まろう。なお数量は少ないものの、アップル向けでも2025年モデルは新機能搭載が見込まれ、売上拡大が期待される。

 

 

 CS事業は車載ではテスラの数量増、FAについても自動化投資のニーズは高く、緩やかな需要回復が見込まれる。通信についてはGAFA等が自前で世界的な高速大容量光伝送投資を行っており、昨今の生成AI等で需要が高まると見られ、400G対応の光電装システムの導入加速、さらには800G対応の動きもある。同社は長距離伝送で400G対応製品を他社に先駆けて投入してきたが、データセンタでの400G対応にも注力する。またデータセンタ機器の112Gや224G電装への高速化対応でも、データセンタ内の情報機器で使用されるOSFPコネクタをラインガードに垂直接合するVLC機構用に垂直型「OSFP-VLC」コネクタを開発、高密度実装と高速伝送を低コストで実現する製品を投入、事業分野の拡大も目指す。このような状況で、CSについても収益の拡大が見込める。

 

 全体として、25/3期は改めて最高益更新の期待がかかり、さらに26/3期は能力増強投資の寄与も有り、新中計を上回る収益が期待される。現在株価は同社24/3期予想EPS217円に対しPER10.9倍と、プライム電機PER19.1倍に対し、割安感がある。また類似事業を行うヨコオPER21.6倍に対し割安、エンプラスの10.3倍とほぼ同じ水準にある。現状、会社想定に対し円安に推移、増額修正見通しにある。Q1は厳しい数字が開示されると判断するも、Q1で悪材料を織込むと判断、その後は増額修正期待、25/3期の収益上伸期待でポジティブな動きが見込まれる。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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