Fe Scrap Watch2023#10 下げるに下げられない夏の鉄

国内鉄スクラップ市場は、品薄、プレーヤー過剰で、スクラップディーラー、シッバーでの赤字集荷、出荷が続いている。関東湾岸では、H2でトン当たり49,000〜50,000円、HSで50,000〜52,000円というレンジ。
シッバーは「実際、この値段で買っていたら即赤字ですが、みんな下げないので、うちも下げられない。ちよっとアブノーマルな市場。こういう状態が何ヶ月も続いている」と困惑の夏。。
# H2市中実勢相場の推移 JPY/ton 1年 #
鉄鋼製品需要、輸出ドルベース価格、を鑑みると、決して需給的には強いとは言えないのだが相場は下がらない。4日に韓国の現代製鉄が日本のスクラップを引き上げたこともあり(H2で48,800円、HSで53,300円、いずれもFOB価格).なおさら下げづらい雰囲気が形成されている。
さりとて、現代製鉄のH2買値でもFOBベースで48,800円であるため、50,000で買っていたら赤字であることは明らかなのではあるが
「物量集めるにはこのくらい出さないと集まらない」とシッバーはいう。また、国内でも一部を除いて多くの電炉メーカーは特段の高値を出さない。一部は裏値をつけているとも聞くが「いまはどこに、どんな品物を売っても赤字」(川崎地区シッバー)ということだが、こうした無理に無理を重ねた商売を続けていれば「遅かれ早かれ、第二、第三のモリタ、が出てくる」と前出シッバーはいう。モリタ(守田)とは、先ごろ30億円の負債を抱えて倒産した北九州の鉄スクラップシッバーのことである。
さて、こうした、一種の緊迫感ある市況感のなか、9日には関東鉄源の8月輸出テンダーが行われる予定となっているが、下馬評では前回の7月テンダーと同値水準の49,000円前後で決まる、と思われるが、これでも、現代のFOB価格よりも高い。日本のスクラップが世界一高い、といわれる所以だが、これには為替の円安がかなり影響している。
#台湾の輸入鉄スクラップ(USD/ton)と為替相場(円ドルTTS)の推移 一年
# 米コンポジット価格の推移(USD/ton) 一年
おそらくは、多くのスクラップディーラーが買値を下げたい、多少でも利益の出る単価に下げたい、というのが本音。H2でいえば、47,000円で買えたら、という願望をもっている。あるシッバーは指標となっている関東鉄源で、無理な高値ではなく、シッバー、バイヤーにとっても最適な価格で決まることを望んでいる。そうなれば全体最適化で相場も落ち着く、と先のシッバーは願っている。
(iruniverse)
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