インドの新規大型銅製錬企業Adani社に聞いて察する日本の銅製錬の不安
23日からアブダビで開催されているBIRアブダビ大会にて、来年2月にインドで年産50万トンの銅精錬所を立ち上げるAdani社のAjay Shandong氏に話を聞いた。
Ajay氏によると、来年(2024年)2月にまず年産50万トンの銅製錬所がグジャラート州で立ち上がる。
さらに2028年には追加で50万トンの能力が加わり100万トン体制になるとのこと。
これに必要な銅精鉱は南ア、豪州から購入し、冷材として必要な銅スクラップは今のところインド国内から購入するのだという。
また、今は最初の50万トン立ち上げのため、日本の製錬会社から原料(母材)を購入しているとのこと。
このAjay氏の話を聞いて、ピタリと符合するのは、インド政府が今年の9月以降に銅地金の輸入を今年12月から規制するとの発表であった。インド国内で使う銅地金についてはBISの認証が必要となるのだが、これを取得するのに早くて半年、といわれている。
現時点でBIS認証を取得しているインド企業は1社もない、という。このBIS認証がなければ日本含めた海外からの銅地金も使えない、ということになる。
うがった見方をすると、こうしたインド国内で立ち上がる銅製錬会社を守るための、いわば保護政策ではあるのだが、これによってたちまち困窮するのは実は日本の銅製錬所であろう。いまや日本の銅地金の輸出向け先は中国を上回りインドが最も多い。日本からの銅地金輸出は年々増加しており、かつての50万トン前後から70万トン前後まで増加している。この最大の向け先であるインドに輸出できない、となると、たちまち日本の銅地金需給は緩み、余剰化することは明らか。
先々には銅地金の減産が常態化し「日本のヤマ行きスクラップ購入量も減り、余ってくるのではないか」とアブダビの現場でも聞かれた。
それは、日本にバーチクリフなどを輸出している中近東系の業者にとっても痛い話ではあるが、それはまた一方で向け先がインドに変わる、ということにはなるだろう。
(IRUNIVERSE Tanamachi@Abu Dhabi)
関連記事
- 2025/01/24 光ファイバ:スターゲートの恩恵享受に期待
- 2025/01/24 「予算案や財政投融資の増額は、非常に心強いものと感じている」――日本鉱業協会会見
- 2025/01/23 ザンビア、24年のコバルト生産6倍に 銅も12%増、活気づくアフリカ
- 2025/01/23 日本電線工業会出荷レポート#46銅電線 通信向け需要増加へ 電力向け一転減速か
- 2025/01/23 米新政権関税政策の不透明感でLME亜鉛相場は反落、国内建値9円引き下げの505円に
- 2025/01/22 国内非鉄製錬産業の近未来ストーリーに映り込んだ風景は⁉――「今年がターニングポイント」
- 2025/01/22 三井金属、グループ2社の株式譲渡――台湾のKinikグループに
- 2025/01/22 オートモーティブワールド2025でふと足を止めた気になる企業特選
- 2025/01/22 日本国内電線・ケーブルPSIレポート#18品目編 2024年電力用電線増加 その他減少続く
- 2025/01/22 国内電気銅PSI Report #24 2024年国内伸銅品や銅線の生産伸びない中 電気銅需要緩やかな増加続く