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東京精密(7729)  24/3H1WEB説明会メモ  ややポジティブ継続

                                                                                                                                                                                   24/3期半導体製造装置部門増額で10.1%減収29%営利減に増額、25/3期中計達成視野に

株価8192円(11/6) 時価総額3445億円    発行済株42059千株

PER(24/3DO予:18X)PBR(2.22X)配当(24/3DO予)182円  配当利回り:2.2%

 

要約

・24/3H1は10.6%減収27.4%営利減%25.8%受注減も、HBM向け等で計画比若干上振れ

・24/3期半導体製造装置部門増額で10.1%減収29%営利減に増額

・新中計予想で先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円視野に

 

 

24/3H1は4.7%減収25.3%営利減35.9%受注減も、売上が想定並みも受注は上振れ

 

 24/3H1決算が11/2に開示され、同日WEB説明会が実施された。24/3H1は売上高635.37億円(期初計画比25.37億円増額、10.6%減)、営利113.89億円(同3.89億円増額、27.4%減)、経常利益120.72億円(同10.72億円増額、27.1%減)、受注高595.09億円(同35.09億円増額、25.8%減)、受注残高977.71億円(同9.72億円増額、19.5%減)となった。半導体部門の投資意欲減退から収益が低迷も、計画比では収益、受注とも若干上振れに。

 

 セグメント別では半導体製造装置事業が売上高469.64億円(同29.64億円増額、15.2%減)、営業利益92.98億円(同期比33.2%減)、受注は423.03億円(同53.03億円増額、30.8%減)、受注残高847.10億円(同23.39億円増額、21.7%減)となった。売上面では民生向けの低迷で検査装置の構成比が若干低下し20%弱の減少、加工装置はSiC向け等も寄与し10%強の減少に止まる。また仕向先では国内が89億円(14%増)と健闘、一方海外はアジア向けが約300億円(27%減)となったが、中国向けは健闘、台湾向けなどが民生不振で大きく減少している。

 受注ではスマホ、PC等民生の低迷でメモリ、電子部品向けが低調に推移した。一方でSiCなどのパワー半導体向け、ウエハ増産向けが下支え、加えてQ2中心に生成AI関連(AIロジック、HBM向け)受注が60億円~70億円あり、Q1比で7.9%増と前Q4の175.38億円をボトムに増加、計画を大きく上回った。なおAIロジック向けはグラインダ、ダイサーが大半で全体の4割程度、HBM向けは6割程度を占めプローバの比率が高いとのこと。また受注に占めるパワー半導体受注が全体の17%(Q1が20%、Q2が14%、Q2はシリコン系パワーが減退)、その中でSiC向けが約半分を占めるなど増加に寄与、加えてウエハ加工向けが堅調だった模様。プローバは民生の落ち込みで減少率が高いも、Q2にはHBM向けの受注獲得でQ1比では増加した模様。受注残高は売上確度が低下した案件10億円について受注残高から消去しており、受注額の増額ほどには受注残高が上ぶれていない。現在の受注残の中で下期に売上予定が50%、25/3H1売上予定が33%、25/3H2以降売上が17%とのこと。機種別納期ではプローバが3~5ヶ月、ダイサー2~4ヶ月(レーザーはさらに長め)、グラインダは半年から1年と長納期化、民生で納入がずれる分で25/3H1に納入するものが含まれるとのこと。利益面ではQ1対比で89.8%増、Q2の営業利益が21.6%と20%超に回帰、収益性も底打ちから回復に向かっている。

 

 

 計測器事業は売上高165.73億円(同4.27億円未達、5.7%増)、営業利益20.90億円(18.6%増)、受注186.13億円(同3.87億円未達、13.1%減)、受注残137.58億円(2.9%増)となった。受注はEVの開発向け汎用計測器が好調、2次電池用充放電試験装置も30%程度増加し全体受注の10%超まで拡大、高成長が続いている。一方でセンサ、ゲージなどの自動計測製品が景気減速で低迷した。売上は会社想定並みに推移しているが、充放電試験相違はほぼ倍増、半期10億円規模に。利益は減収影響、材料高等で2ケタ減となったが、Q1比では0.6%増とボトムを確認した模様。

 

24/3期半導体製造装置部門増額で10.1%減収29%営利減に増額

 

 24/3期、半導体製造装置事業でAI、HBM、SiC向け等の好調を受け、民生部門の不振を補い、会社予想を増額修正、売上高1320億(期初計画比30億円増額、10.1%減)、営利245億円(同5億円増額、29.0%減)、経常利益254億円(同14億円増額、28.0%減)、受注1210億円(11.2%減)予想とした。売上増に対し、営利増が小さいのは下期に新工場の償却負担増がフルに影響すること、人件費増が下期も継続する事等で、為替影響のプラス(下期前提を1$=130円から140円に変更、為替影響が1ドルで半期0.6億円寄与)効果を打ち消しているとした。

 

 事業別では半導体事業が売上高985億円(期初計画比45億円増額、12%減)、受注870億円(12.5%減)、予想としている。現状、下期受注を447億円(前年同期比17%増)と見込むが、Q3については民生の落ち込みが継続する見通しでQ2程度の受注に止まり、Q4では民生の底打ち、生成AI、SiC、CMOSイメージセンサ、中国向けでもチップレット化の拡大が続き好調持続、同期比30%増程度の受注拡大を見込む。なお生成AI関連は下期の中で上期同様の60億円~70億円程度の受注の獲得を見込んでいる。またパワー系では下期は上期の受注構成比17%以上となると想定、特にシリコンパワー半導体向けは一服も、SiC向けの伸長が続くとしている。機種別で落ち込んでいたプローバもHBM向けの拡大で民生の落ち込みを補うとみられる。売上面ではHBM向けなどは24/3期売上になるものも多いとみられるが、足元、Q2では中国向け売上構成比が30%強となっており、中国向けの堅調さが目立つ。計測部門は売上高335億円(期初計画比15億円減額、3%減)、受注340億円(8.0%減)予想。受注は下期168億円(同期比6%減)予想でユーザーの投資抑制が続く見通しで自動継続製品の低迷が続く見通し。但しEV向け汎用計測器受注、充放電試験システムは受注拡大の見通し。利益面でも原価高などで低迷見通しに。

 

 全体として受注環境は生成AI、SiCパワーデバイス、中国トップレット需要増などが追い風で、会社計画通りの受注が見込まれ、為替前提が1$=140円予想のため、通期として多少の収益の上振れが期待される。

 

新中計予想で先端半導体増視野に25/3期売上高1700億円、営利375億円視野に

 

 会社側では新中計として2024年度に売上高1700億円(半導体1320億円、計測380億円)、営業利益375億円(営業利益率22%)を目指す。

 

  事業別戦略では半導体事業で1320億円を目指す。プローバにおいてはHBM(広帯域幅メモリ)の拡大がさらに加速する見通し。特に生成AIの登場でAIサーバーの需要がTrendForce予測によれば、2022~2026年までの出荷台数の年平均成長率が22%と予想、高い伸びが継続する見通し。従来サーバーに対し7~8倍のHBM使用量があると言われ、AIサーバー拡大でプローバビジネスの本格回復が見込まれる。

 

 加工装置ではSiC向けの拡大、アブレーションダイサ投入、化合物半導体向けグラインダの強化拡大を見込む。アブレーションダイシングはレーザーを使用してウエハ表面を蒸発させる方法。ディスコが先行しているが、同社は精密、高剛性などで差別化を図る。化合物半導体についてはSiと比較して難作材であり、グラインダ加工時間が数倍かかり、台数の拡大とともに消耗品売上も急拡大が見込める。同社はシリコンバックグラインダでは18%程度のシェアに止まっているが、難作材加工では機械の剛性でディスコに対し優位性を持ち、この分野では先行、消耗品ビジネスを含め収益性の向上が期待される。さらに現在はSiC基板向けが多いが、今後、デバイス向けの拡大となれば、研削厚みが3倍程度必要となり、グラインダ需要が大きく拡大、消耗品の研削砥石も急拡大が見込まれる。またHBMでは今後、マイクロバンプ方式からハイブリッドボンディングに変革が進む見通し。ハイブリッドボンディングは、半導体パッケージング技術の一つで、2つ以上の半導体デバイスのメタルパッド をCuバンプなど介さずに直接接続するもの。具体的には精密な位置合わせ、表面処理と清浄度、プロセス制御と歩留まり、接合強度と信頼性、熱機械的応力管理、試験性と修理性などが要求される。特にTTV(total thickness variation: ウエハ平坦度の評価項目の一つでウエハ裏面を基準面として厚み方向に測定した高さのウエハ全面における最大値と最小値の差)がデバイスの良品率で重要となるが、同社がディスコに対し優位性を持つ分野で有り、同社の高精度、高剛性のグラインダ、CMP装置の需要の拡大が見込まれる。同分野では既にサンプル、社内評価向けの受注を獲得、26年の本格量産に向け24年後半には大型受注獲得を見込んでいる。さらに後工程で装置内に計測を組み込む計測ビルトインモデルの投入拡大も投入、製造装置、計測装置の両事業を有する唯一の半導体製造装置メーカーとして差別化し高付加価値化も期待される。

 

 計測事業はNEV向けに2次セル電池、150Vまでの高電圧電池モジュールの充放電電池評価の拡大などで、売上拡大を見込む。またEV電動駆動用部品ではE-アクスル向けに歯車、ギア、ケース、E-モーター分野では、キーユニットとなるヘアピンステータ、ロータなどのスタック工程で3次元測定器での管理が必要なほか、シャフトの真円度、同軸度、同芯度評価でも0.01μクラスの精度を測る3次元測定器や真円度・円筒形状測定器が必要。さらにバッテリーの内部計測、不純物検査なども同社の超精密測定器の需要拡大が期待される。半導体向けではナノレベルの表面形状を測定する3D白色干渉顕微鏡などが、ウエハ表面形状や静電チャックの外形寸法、表面粗さ計測など、ソリューション展開の拡大などを目指す。NEV関連全体では年率20%以上の成長を見込んでいる。またICE向けは回復が緩慢見通しも、自動化、保守点検拡大などで安定的な収益確保を目指す。

 

 全体を通じ、25/3期は半導体事業については24/3Q4からの半導体部門のパワー半導体を中心とする検査装置の拡大加速、300mmウエハグリーンフィールド投資向けの受注残高の売上寄与、加えてプローバはHBM向けの拡大、民生の受注回復が見込まれる。また計測装置についてはEV向けを中心に新規分野の拡大が期待される。全体として半導体設備投資の回復、HBMの急拡大やSiCの設備投資拡大、中国では全ての分野でチップレット化の動きなどが有り、2年前に策定した25/3期中計目標では具体的な売上を示していなかった分野の拡大が加わり、当初ハードルが高いとみられていた中計の達成が視野に入ってきたと言えよう。

 

 株価は上方修正、生成AI関連の期待もあり、11/6には784円高の8200円まで高騰した。24/3期会社修正予想EPS441.44円に対し、PER18.6倍は東京エレクトロン35倍、ディスココンセンサス42倍に対し割安で有り、25/3期中計予想に対しても生成AI関連SiCパワーデバイス関連の寄与から達成する期待が高まったと判断、10%の急騰はあったものの、ややポジティブ継続としたい。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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