APEC閉幕、日米ともに対中貿易進展なし、IPEFは重要鉱物の供給網で会合立ち上げ
米西部サンフランシスコで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が11月17日、3日間の日程を終え閉幕し、共同宣言を発表した。同時並行で開催されていた米国主導の新しい経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の首脳会合は11月16日に閉幕し、重要鉱物の供給網(サプライチェーン)の強化に向け、新たな定期会合を立ち上げることなどを盛り込んだ首脳声明を発表した。
■APEC、脱炭素目標を再確認
APEC首脳会議
(出所:APEC事務局ホームページ)
APECには日米中露や台湾、香港など21カ国・地域が参加した。同会は共同宣言に当たる「ゴールデンゲート宣言」で「すべての人にとって強靭で持続可能な未来の創造」を掲げ、「環境問題にも確実に対処しながら、持続可能で包摂的な経済政策を推進するという目標を設定した」とした。
具体的には21世紀半ばまでのゼロカーボン(脱炭素)目標の達成に向けた取り組みの確認や、世界貿易機関(WTO)の規則遵守、汚職撲滅への取り組みでの合意などを挙げ、「APEC協力のための拘束力のない公正なエネルギー移行原則を含む、運輸、貿易、災害管理、食料安全保障、保健・経済、エネルギー、女性と経済、中小企業及び金融に関する2023年の部門別閣僚会合の閣僚級審議を歓迎する」とした。
APEC事務局プレスリリース(英語): APEC Economic Leaders Jointly Agree to Golden Gate Declaration | APEC
会合にと前後して米中首脳会談や日中首脳会談が行われたが、経済・貿易面においては対中国でめぼしい外交結果が得られたとは言いがたかった。
■脱中国のIPEFは「記録的な速さで」声明、日本の産業界にはプラスか
IPEF首脳会合
(出所:経済産業省ホームページ)
一方のIPEFには米国や日本、インド、ベトナム、オーストラリアなど14カ国の首脳が参加した。IPEFは2021年に米国が提案した新たな枠組みで、今回は「記録的な速さで」首脳声明までこぎつけた。
声明では同地域で外交カードとなりがちな重要鉱物を巡り、「本日、我々は、IPEF 重要鉱 物対話を立ち上げ、重要鉱物に関する IPEF サプライチェーンを強化し、地域の経済的 な競争力を高めるためのより緊密な協力を促進する。 我々は、エネルギー安全保障及および技術等の相互に関心を有する分野における協力と対話を推進するための更なる取組を 模索する意図を有する」とした。
またIPEFに関するステークホルダーでは「地域のサプライチェーンの課題と脆弱性について理解を深め、重要鉱物及び物資を 含むクリーンエネルギー技術に不可欠な資源をより多様化され持続可能な形で確保 することにより、我々の市場間取引におけるクリーンエネルギーのサプライチェー ンを強化する」とした。
経済産業省のIPEF関連ページ: 岸田総理大臣のインド太平洋経済枠組み(IPEF)首脳会合への出席(結果概要)|外務省 (mofa.go.jp)
IPEFは脱中国依存を視野とした枠組みであるため、定期会合などの組織の進展は中国リスクに振り回されがちな日本の産業界にとって朗報との見方がある。
(IR Universe Kure)
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