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アントワープ港(ベルギー)で大規模な滞船発生

今年に入って断続的に続いているベルギーでの公共部門でのストだが、ここに来てフランダース地方の水路・水門の労働者、特に水先案内人(パイロット)もストを決行し、欧州ではロッテルダムに続いて2番目の規模を誇るコンテナ港であり世界有数の化学品取扱高を誇るアントワープ・ブルージュ港の操業が混乱している。

 

アントワープ港の現状

英国のイーザイン「ロードスター」等の海外メディア報道を総合すると、パイロット不足により大規模な滞船が発生している模様で、それがいつまで続くかは予測不可能とのこと。

 

英国を拠点とし世界的に海運・港運サービスを提供するインチケープ・シッピング・サービス(ISS)は、12月7日時点でアントワープでは49隻の船舶が発着待ちと発表、8日時点では8隻が入港、4隻が出港と発表し、港湾での操業が完全に止まっていない様子だ。

 

ドイツ船社のハパック・ロイドは、荷主に対しては状況をモニター中と伝え、デンマーク船社のマースクは、最低48時間の待ち時間と船舶スケジュールの更なる変更が予想されると伝えた。

 

ゼーブルージュ港の現状

インチケープ・シッピング・サービス(ISS)の8日時点での発表は6隻が入港、2隻が出港で、こちらもパイロット不足が深刻ながらわずかに操業している模様。

 

ゼーブルージュ港は欧州最大の完成自動車取扱量(年間約280万台)を誇っており、近年は中国製のEV輸入が増加している。更に、コロナ禍と半導体不足の解消による世界的な自動車生産の復活による自動車専用船(PCC/PCTC)の船腹不足と用船料の高騰が依然として続いており、今回の同港での混乱の影響が注目される。

 

2022年4月、アントワープ港とゼーブルージュ港の運営が合併され、アントワープ・ブルージュ港が誕生。同国の内陸水路輸送は、ベルギー国内のみならずドイツ、フランス、スイスなど欧州主要地域と接続されており、年間約5.2万隻のバージ船が利用するなど、鉄道と陸路との連結もあわせ総合的な物流の中継地として機能している。

 

ストの発端

事の発端は、物価高騰と政府によるデモを禁止するフランダース公務員法改正案に抗議したベルギー労働総同盟(FGTB/ABVV)の呼びかけに呼応した結果との見方だが、労働組合によってはストを実施していないところもあり見解が分かれている模様で一枚岩ではないようだ。

 

地元紙のThe Brussels Timesによると今週末には鉄道の48時間ストが行われる予定で市民生活にも大きな影響が出ており、特にクリスマスを控えたこの時期でのストによる混乱は同国経済にとっては大きなマイナスだ。

 

頻発する欧州港湾での時限スト

週明けの火曜日には政府代表と労働組合代表との交渉が予定されているとの報道だが、欧州港湾では今夏からストが頻発しており、ドイツのハンブルク、ヴィルヘルムスハーフェン、ブレーマーハーフェン、ベルギーのゼーブルージュ港、英国最大のフェリクストウなど主要港で相次いで時限ストライキが実施されており、その都度滞船によるサプライチェーンの混乱が生じている。

 

最後に

時の英国首相の故マーガレット・サッチャーがイギリスの再生のため1980年代に推し進めた改革、特に英国港湾の民営化は記憶に新しい。今回の事例では改めて欧州での労働組合の強さをあらためて実感したと同時に、船舶の入出港に不可欠な水先案内人(パイロット)のスト決行がその発端となった珍しい例と思う。

 

今後の進展状況を注視したい。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

 

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

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