新着情報

2024/05/04   MARKET TA...
2024/05/03   バナジウム市場近況...
2024/05/03   新旧民間航空機の受...
2024/05/03   民間航空機受注納入...
2024/05/03   日本製鉄:USスチ...
2024/05/03   アングロ買収、グレ...
2024/05/03   MARKET TA...
2024/05/02   中国の三元系、LF...
2024/05/02   6月19日‐20日...
2024/05/02   東京製鐵:省エネ法...
2024/05/02   住友商事:アンバト...
2024/05/02   加パンアメリカンシ...
2024/05/02   6月19日‐20日...
2024/05/02   チタン:貿易統計と...
2024/05/02   EVバッテリーリサ...
2024/05/02   原油価格の動向(5/1)
2024/05/02   カザフスタン、金属...
2024/05/02   ゲルマニウム価格は...
2024/05/02   中国政府 再生資源...
2024/05/02   中国 自動車業界で...

コンテナ運賃動向(2024年1月)-アジア発北欧州向け運賃が2ヶ月で4倍に

 紅海での商船への攻撃が続く中、海運界は喜望峰迂回ルートに舵を切っている。結果として、アジア発北ヨーロッパ向けの運賃が過去2ヶ月の間に約4倍ほど跳ね上がり、アジア発北米西岸向けの運賃もつられて上昇を続けている。世界の海運が紅海、スエズ運河への配船中止、喜望峰迂回の現状とその影響を探ってみた。

 

 4月以降、コンテナ運賃動向をノルウェーのゼネタ(Xeneta)社のコンテナ運賃情報「Xeneta Shipping Index by Compass」(XSI―C)https://xsi.xeneta.com/ (40フィート・コンテナのスポット運賃で各種サーチャージを含む)で動向を追ってきている。

 

(単位:米ドル)

 

 上図からも明らかなように、紅海危機の影響で東アジア・欧州間の運賃が過去2ヶ月間で約4倍、東航で約2倍に跳ね上がったのが見て取れる。その影響か、東アジア発北米西岸向けの運賃も同期間で2倍以上に上昇している。

 

 Xenetaとほぼ同日のFreightos Baltic Index (FBX) の世界コンテナ運賃指標で東アジア発北ヨーロッパ(ロッテルダム)向けの運賃を見ると、やはり40フィートで5,492ドル、Drewryでは4,984ドルだった。更に、東アジア発地中海(ジェノバ)向け運賃を見ると、FBXが6,773ドル、 Drewryが6,365ドルと更に高かった。地中海向けは喜望峰を経由し、更にジブラルタル海峡経由での地中海入りでさらに割高となっている。

 

船社への影響

 喜望峰経由ルートだとスエズ運河通行料が必要なくなるが、航海日数が2週間ほど余分にかかり、運航費、主に燃料代が重くのしかかる。タイトな週間スケジュールで定期運航しているコンテナ運航船社にとっては、追加の船腹も投入されてはいるが、当然のことながら航海速力を上げて何とかスケジュール調整しているようだ。コンテナ船社は既に迂回により発生する追加費用をサーチャージの形で荷主に負担を求めている。

 

 最近の海外メディアによると、スエズ運河迂回は少なくとも2024年の最初の6ヵ月間ほど続き、危機の期間中、影響を受ける欧州航路の運賃も高止まりするだろうとしている。但し、アジア発欧州行きのスポット運賃指数は、2月10日から中国での春節後の需要が軟調であるとのことから、高値圏から下降し始めている向きもあるとの見方もある。

 

スエズ運河迂回の傾向が続く

 1月16日付け拙稿でIMF主導の“PortWatch” https://portwatch.imf.org/をご紹介したが、それによると1月28日時点での紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡を通過する船舶が一年前の週平均69隻から31隻に半減したとのことである。今後の推移を見守りたい。

 

港湾混雑

 紅海情勢悪化で最も影響を受けているのは、北ヨーロッパの港湾よりも地中海港湾のようだ。ギリシャ最大のコンテナ港であり東地中海最大規模のピレウス港(Piraeus)ではアジアからのコンテナ船の到着が最大で20日遅延し、2万本のコンテナ未着との情報がある。今後、ギリシシャのみならず地中海沿岸諸国ではアジアからの部品調達や生活物資等の到着の遅れに起因するコスト増と物価高が心配される。

 

 ピレウス港には中国海運最大手、中国遠洋運輸集団(コスコ・シッピング・グループ)が2016年に買収、子会社化したピレウス・コンテナ・ターミナル(PCT)が運営するコンテナ埠頭がある。

 

日本発の運賃はどうか?

(公財)日本海事センターが公表している日本発の運賃を見てみると、太平洋横断航路で2月から7月にかけて下落傾向が続いていたが、8月,9月に上昇,10月に一転して下落、11月に入って再上昇した。下図参照。

 

(単位:米ドル/40ft)

 

日本・アジア/米国間コンテナ貨物の荷動き(TEU: 20フィート換算)

 同センターが12月26日発表した2023年11月のアジア(18 ヶ国・地域)から米国へのコンテナ荷動き量は、前年比 10.3% 増の155.4 万 TEU。1-11 月の累計では、前年同期比 14.2% 減の 1685.3 万TEU。   

 国別でみると、日本は 1.2% 減となる 5.2万TEU、中国は 11.2% 増となる85.1万TEU、韓国は 7.4% 増となる10.4 万TEU、台湾は 13.7% 減となる 5万TEU、ベトナムは 18.4% 増となる19.2万TEU、インドは 12% 増となる 9万TEU。   

 地域別では、ASEAN は16.5% 増となる37.8万TEU、南アジアは 7.9% 増となる11.4万TEU。  

 

パナマ運河

 パナマ運河庁(ACP)1月17日、1日当たりの通航隻数を24隻に調整すると発表した。昨年11月の雨量が10月ほど不足しておらず、節水対策や通航制限の結果、1日あたりの通航隻数を従来の22隻から24隻に緩和した。 ACPは、少なくとも雨季に入る今年4月末には十分な水位を確保できるものと予想している。

 

 但し、マースクは既にパナマ運河での遅延・滞船を嫌気して、パナマ運河を経由するオセアニアと米州東岸を結ぶコンテナサービス「OC1」航路で、パナマ横断約80キロを鉄道で結ぶ体制に切り替えている。所謂、パナマ・ランド・ブリッジ(陸橋)の活用で、太平洋側のバルボア港と大西洋側のコロン港で鉄道貨車へのコンテナ荷役が生じる。

 

 スエズ運河の現況を考えると、パナマ運河の今後の通航緩和が期待されるところである。

 

最後にー心配されるエジプト経済

 スエズ運河の通行料収入がエジプトの外貨収入の凡そ三分の一を占めていると言われてきたエジプト経済だが、今の通航料収入の大幅減は、かなり痛手であるに違いない。パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まった10月以来、エジプトは観光業の収入も大幅に減っていることからするとかなり深刻のようだ。

 

 ガザでの紛争のマイナスの余波が世界各地に広がっている。今後も海運、港湾という視点から注視していきたい。

 

 

(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る