ウッド・マッケンジー、24年の金属産業展望を発表 先進国で需要回復、企業はコスト削減
英エネルギー調査会社のウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)は1月30日、ホームページ上で、2024年の世界の金属及び採掘業の展望を発表した。全体には、金融引き締めの終了に伴う先進国経済の回復による改善が見込める。ただ、利益率低迷でコストに神経質になる傾向が高まり、各国の環境関連規制も強まるとの見方を示した。
■先進国の需要回復カギ、中国離れは加速も
レポート: Metals and mining: predictions for 2024 | Wood Mackenzie
同社は2023年に金属相場が下落したことについて、「2021-2022年の急激な価格高騰の反動の面があった」と指摘。2024年はこうした流れが落ち着き、先進国の経済回復と中国も景気刺激策によって、世界的に金属需要は改善するとみる。ただ、「楽観ムードが現れるのには時間がかかる」として、「2024年も多くの時間が悲観ムードで過ぎるかもしれない」とも述べた。
一方で、ウッド・マッケンジーは2024年の金属産業を取り巻く世界情勢について、「紛争の多発や中国離れの鮮明化、重要鉱物の政治利用といった趨勢も強まる」と指摘。中国の信頼失墜もリスクの1つで、中国政府に対しては、「住宅やインフラに用いられる商品需要の喚起も求められる」とした。
■ニッケル、リチウム、コバルトの価格は低迷続くか
個別の金属の価格動向については、「金とバルクコモディティは、地政学的リスクの高まりがプラスになるほか、中長期的な品薄感から堅調が続く」と予想。一方、卑金属と電池金属は、「市場の低迷から脱するには、より厳しい闘いに直面する」とし、ニッケル、リチウム、コバルトの平均価格は、「供給状況を考慮すれば前年比で堅調に推移するが、大幅な反転も期待しにくい」とした。他の金属では、現在の世界経済の低迷が既に織り込まれ、「価格の動きはより緩やかになる」と述べた。
企業レベルでは、コスト高に頭を悩ませる傾向が続きそうだ。ウッド・マッケンジーは、「企業のコストは2024年に入って上昇傾向にある」とした。特に採掘企業は、利益率の圧迫と同業間競争の激化に直面する可能性があるとして、「高コストの鉱山での減産や、プロジェクトの見直し・延期を含むコスト削減を実施する可能性がある」と予測。中でも中国産ニッケルと一部の非統合リチウムの価格動向が関連企業の事業戦略を左右することになるとも付け加えた。
■脱炭素で長期には有望産業
もっとも、ウッド・マッケンジーは金属産業全体の長期展望に関しては「低炭素運輸や代替バッテリー技術、脱炭素システムでの鉄鋼生産などの技術の需要増が見込める」と説明。関連金属の先行きを含め、長期に有望な産業との見方を示した。
(IR Universe Kure)
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