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ニッケルが動かすインドネシア総選挙 三つ巴に2億人投票、14日夜に大勢判明へ

 インドネシアの大統領選の投票が2月14日、始まった。同日夜には大勢が判明する見通しだ。現職ジョコ大統領の政策を引き継ぐ本命プラボウォ国防相を含め3人が立候補。争点となる首都移転計画には、同国のニッケル政策が深く関わる。

 

 選挙を争っているのはプラボウォ氏のほか、アニス前ジャカルタ州知事とガンジャル前中部ジャワ州知事。有権者2億人が票を投じ「世界最大の直接選挙」とも呼ばれるが、2月初旬の世論調査ではプラボウォ氏の支持率が50%余りと、ほかの2人を大きく引き離している。プラボウォ氏は当選の暁には、ジョコ氏の長男を副大統領に据えるとしている。

 

政府の選挙ポスター

(出所:インドネシア政府ホームページ)

 

■首都をジャカルタからボルネオ島へ

 今回の選挙で争点の1つとなっているのが、首都を現在のジャカルタから、約1,300km離れた東カリマンタン島(ボルネオ島)のヌサンタラ新都市に移転するという「首都移転計画」だ。ジョコ氏が進める計画で、プラボウォ氏とガンジャル氏は継続の方針、アニス氏は一部見直しを公約に掲げている。

 廃棄物などでジャカルタの汚染が進み、地盤沈下など災害の恐れも高まる中、首都移転計画は2019年から言われていた。現職のジョコ大統領の下で法案が正式に可決され、このままいけば2045年には移転が完了する予定となっている。

 この壮大な計画を成し遂げるには金が必要だ。推進派はこの資金の調達手段として外資誘致を掲げ、その呼び水として同国が世界でも最大規模の埋蔵量を誇るニッケルを挙げている。

 

■ニッケルの高付加価値化を目指して

 ただ、計画を立案したジョコ大統領自身もただニッケル資源を外資に売り渡すだけで満足しているわけではない。目指しているのは電気自動車(EV)向けバッテリー、そして完成車の生産までを手掛ける「垂直型のニッケル・サプライチェーン」の構築だ。米ブルームバーグ通信は調査会社のアナリストの話として「インドネシアは少なくとも精錬されたニッケル産業を持ちたいと思っているでしょう。そうすれば、世界の舞台でより価値が高まるためです」との見方を伝えた。

 実際、インドネシアは2020年にニッケルの輸出を全面的に禁止したが、これに伴い中国企業が現地での加工に乗り出し、インドネシア内のニッケル精錬産業が拡大した経緯がある。ジョコ大統領らインドネシアの高官は2023年、国際会議などで「ニッケルOPEC」や「ニッケル指数」など世界でのニッケルの付加価値を高めるためのアイディアを盛んにアピールした。

 

関連記事:インドネシア、「ニッケルOPEC」再提案 G7で | MIRU (iru-miru.com)

禁輸措置もニッケルだけにとどまらない。インドネシアはボーキサイトや石炭の輸出も様々な場所で制限しており、銅鉱石の輸出禁止措置も2024年5月に発効する。資源政策を使い海外との交渉を有利に進め、自国の発展につなげようとする意図が見て取れる。

関連記事:インドネシア、ニッケル政策で朝三暮四 製錬が一部停止の可能性、輸出禁止は延期か | MIRU (iru-miru.com)

 

■ニッケル産業への依存で環境破壊懸念も

 もちろん、こうした政策には反対もある。ニッケルをはじめ金属産業への過度な依存は森林破壊など環境破壊につながりやすいからだ。中国の青山集団が同国の運営するニッケル精錬所で2023年末に死亡事故が起きたことは記憶に新しい。

 

関連記事: インドネシアのニッケル工場事故、中国・青山集団が運営 13人死亡、工業団地が謝罪 | MIRU (iru-miru.com)

 

 首都移転計画に慎重なアニス氏は「米テスラなど世界のEV大手はニッケルを使わないバッテリーの開発に傾いている」とも指摘する。海外では、インドネシアのニッケル増産が世界のニッケル価格の下落につながっているとの批判もある。

 だが、推進派は「ニッケルがインドネシアの最大の強みだ」との姿勢を崩していない。選挙結果によっては世界のニッケル価格に一段と影響する可能性もある。

 

(IR Universe Kure)

                               

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