日立造船、いすゞ ごみ焼却メタネーション合成メタンの天然ガス自動車燃料への利用検討
日立造船株式会社は、清掃工場(ごみ焼却施設)から排出されるCO2を用いて、メタネーション反応によって合成メタンを生産し、天然ガス自動車の燃料として利用するための検討を、いすゞ自動車株式会社(神奈川県横浜市、代表取締役社長COO 南 真介)の協力を得て行い、この合成メタンが既存の天然ガス燃料の代替となりうる結果を得たと発表した。
同検討は、環境省の「二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業委託業務(清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業)」において行ったもの。この事業は、エックス都市研究所(東京都豊島区、大野 眞里代表取締役)を共同実施者として2018年から取り組んでいるものであり、2023年12月末をもって終了した。
同社は、同委託事業において、2022年度までに清掃工場(神奈川県小田原市「環境事業センター」)から排出されるCO2を用いて125 Nm3/hの合成メタンを生産する実証試験※1を行った。実際に稼働中の清掃工場から合成メタンを製造する取り組みは、世界で初めてとなる。
2023年度は、実証試験で得られたCO2転換率やメタン濃度などのデータを活用し、天然ガス自動車の燃料として利用する場合の排出ガス成分、エンジン出力、燃費等の考察・試験を行うとともに、清掃工場への導入モデルの検討などを行った。
排出ガス成分、エンジン出力、燃費等の考察のための試験※2では、いすゞ自動車のガスエンジン「6UV1-TCN」を使用し、合成メタンを模擬したガスをエンジンに供給・稼働させることで実施した。その結果、合成メタン中のメタン濃度が約96%以上であれば、既存の国内天然ガス自動車の燃料として利用できる事が確認できた。
また、メタン濃度が約82%以上であれば、燃料性状が不安定な海外市場向けの車両に採用実績があるエンジン制御方法を用いる事で利用できる事が確認できた。なお、メタン濃度82%は、2022年度の実証試験での設計値であり、実際に生成できることが確認できている。
【エンジン試験室のイメージ図】
清掃工場への導入モデルの検討では、ごみ処理量300t/日(150t/日×2炉)のごみ焼却施設を想定し、排出されるCO2を回収してメタネーション反応を行うことを条件として検討した。メタン生産量はCO2回収法や水素の供給量によって異なるが、最大で約4,100万N㎥/年の合成メタン(天然ガス自動車の走行距離にすると、約1億4,500万 km/年)の生産が可能となるなどの結果を得ることができた。
この委託事業により、清掃工場にメタネーション設備を導入して得られる合成メタンが天然ガス自動車の代替燃料となりうることの確認や、導入モデルの検討などを行うことができた。
同社は、1965(昭和40)年に日本で初めて発電設備付きごみ焼却施設(清掃工場)を大阪市に納めており、ごみ焼却発電分野におけるパイオニアといえる。また、メタネーションの分野においても1990年代から研究開発を行っており、多くの実証設備を納めている。
※1プレスリリース:国内最大となるメタネーション設備の実証運転開始(20220616.pdf (hitachizosen.co.jp))
※2試験は以下の4つを実施。
①JE05モード試験:天然ガス自動車の排出ガス規制適合性を評価するための公定試験法。車両走行を模擬した過渡試験(エンジン回転速度及び負荷を目標値に追従するように連続操作している状態で行う試験のこと)であり、排出ガス成分への影響評価を主目的として行うもの。
②全負荷試験:アクセル開度全開での定常試験(エンジン回転速度及び負荷を安定させた状態で測定する試験のこと)で、エンジン出力への影響評価を主目的として行うもの。
③マッピング試験:アクセル開度により負荷を調整して行う定常試験であり、燃料消費率への影響評価を主目的として行うもの。
④重量車燃料消費試験:マッピング試験結果から作成したデータ及び試験エンジンが搭載される車両の代表的な車両諸元を使用し、車両走行シミュレーションを行うことで燃料消費率を求めるもの。
なお、概要は以下のとおり。
1. 事業名:二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業委託業務
(清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業)
2. 事業期間:2018年8月~2023年12月末
3. 2023年度の本検討業務における各社の主な役割と実施体制:
・合成メタンの天然ガス自動車燃料としての利用検討:日立造船、いすゞ自動車
・清掃工場への導入モデルの検討:日立造船、エックス都市研究所
【実施体制】
(IR universe rr)
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