チタン原料市場市況2024年4月 上昇、二酸化チタン1年8ヵ月ぶり高値
2024年4月のチタン原料市場は上昇している。チタンの原材料全体の9割近くを占める塗料向けの二酸化チタンが3月29日に仲値$2400/tonと心理的節目の$2400台に乗せ、2022年8月以来およそ1年8か月ぶりの高値を付けた。チタン精鉱や四塩化チタンも上昇し、全般に好調ムードが広がっている。
チタン精鉱
過去3か月間のチタン鉱石価格の推移(TI02 50% Fe203.14%)(US/ton)
チタン鉱石は上昇。3月末に仲値$400/ton台に乗せ、4月11日には$405を付けた。2023年11月以来およそ5か月ぶりの高値水準にある。中国専門メディアのFerroAlloyNetによると、中国のチタン精鉱業者は春節休暇後のメンテナンスを終え通常の生産量となっている。ただ、アフリカのモザンビークなどで天候不順による供給遅れがあるほか、ベトナムの輸出規制が厳しく、供給が細りがちという。
ルチルは2023年4月から値動きなし。
過去3か月間のルチル価格の推移(95% Ti02 bulk Fob豪州)(us/ton)
二酸化チタン
過去3か月間の二酸化チタン価格の推移(ルチルTi02 93%min Fob China)($/ton)
世界的な製造業の回復傾向を受け、工作機械などの塗料に使われる二酸化チタン需要が回復し始めた。中国専門メディアの上海有色網(SMM)によると、発展途上国での建材需要の回復を受けて特に低価格帯の二酸化チタンの需要が国際的に増えている。一方のメーカー側はこれまでの価格低迷を受けて在庫が薄くなっているほか、特に中国企業は春節後のメンテナンス期間に当たっていたことから、需給バランスのタイムラグが起きているもようだ。
SMMは、中国の一部二酸化チタンメーカーは4月の受注分がいっぱいとなり、受注受付を先延ばししていると伝えた。
チタンスラグ
堅調。FerroAlloyNetによると、中国のチタンスラグ工場のほとんどが注文をこなしている状態で、新規受注まで手が回っていないという。ただ、同業間競争も起きている模様だ。
チタンスポンジ
過去3か月間の一般産業向けスポンジチタン価格の推移( China)($/kg)
金属チタンも上げているが、塗料向けに比べると勢いは鈍い。中国の一般産業向けで4月4日に$7.4/kgに上げ、2023年12月以来4か月ぶりの水準にある。FerroAlloyNetによると、スポンジチタン工場は短期的には在庫が充足しており価格の見積もりは安定している。大手取引先から安定した注文が入っているケースが多く、価格を引き下げる動きは見られないという。
航空機向けスポンジチタンの価格は横ばい。
過去3年間の航空機向けスポンジチタン価格の推移($/kg)
四塩化チタン
過去3か月間の四塩化チタン価格推移(99.99%min EXW China)(Rmb/mt)
やはり上昇基調。4月11日に仲値RMB6600/mtと2023年8月以来の水準にある。
フェロチタン
過去3か月間のフェロチタン価格の推移(Ti 70% EU)($/kg Ti)
4月11日に$7.5/kgと2023年6月以来の高値水準に付けた。製鉄所からの注文は安定しているが、メーカー側も在庫が十分で、価格を大きく変動させる要素は乏しい。ただ、悲観ムードもなく、全般に明るいムードが漂う。
(IR Universe Kure)
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