週刊バッテリートピックス 「米IRA事実上緩和」「三井住友が台湾ゴゴロと協業」など
2024年4月30日~5月6日は日本のゴールデンウイークや中国の大型連休、世界各国のメーデー(5月1日)の祝日などで営業日が少なく、バッテリー業界の話題は内外ともに乏しかった。そんな中でも米国がインフレ抑制法(IRA)の条件を事実上緩和するなど動きがあった。三井住友の台湾スクーター電池との協業も注目された。
<国内>
●三井住友、スクーター向けバッテリーの台湾ゴゴロと提携
三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は4月30日、自社ホームページ上で、台湾の電動スクーター向けバッテリーのスタートアップである睿能創意(Gogoro、ゴゴロ)、および住友商事との間で、3社によるパートナーシップを締結したと発表した。スクーター用バッテリーの交換システムなど、ゴゴロのサーキュラーエコノミーに向けた取り組みを後押しする。
ゴゴロは「電動スクーター界のテスラ」と呼ばれるスクーター向け電池の革新的企業。バッテリーを買わずに交換するシステムを展開し、台湾では絶大な支持を誇る。
プレスリリース:240430-2.pdf (smfl.co.jp)
●北大など、低コスト・高容量の正極材開発
北海道大学は4月26日、同大院理学研究院の小林弘明准教授、東北大学多元物質科学研究所の本間 格教授、名古屋工業大学大学院工学研究科の中山将伸教授らの研究グループが、低コスト・高容量・寿命の共立が可能なリチウムイオン電池の正極材料を開発したと発表した。レアメタルフリーな鉄を主成分としたリチウム鉄酸化物(Li5FeO4)にシリコンやリンなどのpブロック元素を導入した正極材料で酸素脱離反応が抑制されることを発見した。
プレスリリース:新着情報: 蓄電池材料の低コスト・高容量・寿命の共立に成功~鉄と酸素を有効に利用しリチウムイオン電池の資源リスク回避に期待~(理学研究院 准教授 小林弘明) (hokudai.ac.jp)
大学関連では名古屋大学も4月上旬、フッ化物材料Li₃AlF₆を用い、安定に動作できる全固体リチウムイオン2次電池(LIB)を開発したと発表していた。
<海外>
●米IRA、EV電池材料の一部要件を緩和 グラファイトなど
米財務省は5月3日、2022年から実施しているIRAを巡り、黒鉛(グラファイトなどの電気自動車(EV)電池材料の一部要件を緩和した。従来では中国などに本社を置く事業者が生産した重要鉱物を含むEVは2025年に優遇措置の対象から外す方針だったが、2027年からの導入とし、2年間の猶予を設けた。
●スイス船舶MSC、リチウム輸送の安全向上で実験
2023年7月のオランダ沖事故
(出所:NHKニュース)
スイス船舶大手のMSCは4月25日、自社ホームページ上で、「海運情報プラットフォーム(PF)を運営するグローバルシッピングビジネスネットワーク(GSBN)と提携し、リチウム電池の海上輸送の安全性向上システムを試験的に実施する」と発表した。
ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用し、ブッキング時点で安全証明書を共有できるようにする。リチウム電池輸送を巡っては、2023年7月にオランダ沖でEV車の運輸船で火災が起きたことが記憶に新しい。世界的に安全性向上が課題となっている。
●韓国電池3社、1-3月期は減益や赤字
韓国のバッテリー大手3社の2024年1-3月期決算が4月30日までに出そろった。いずれも減益や赤字で、世界の製造業不振やEV減速のあおりを受けた。
最大手のLGエナジーソリューションは、米IRAを除いた営業損失が316億ウォンとなった。サムスンSDIも純利益が2860億ウォンと前年同期に比べ5.6%減った。SKオンは韓国ウォンの対米ドルでの下落も響き赤字額が拡大したと伝わった。
プレレスリリース(LGエナジー): LG Energy Solution Makes Progress Amid Market Uncertainties, Aims to Strengthen Fundamental Competitiveness This Year – LG Energy Solution (lgensol.com)
プレスリリース(サムスンSDI): PowerPoint 프레젠테이션 (samsungsdi.com)
(IR Universe Kure)
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