英ウッドマッケンジー、24年の鉱物ブリーフィング開催 転換への「5つの柱」提示

英エネルギー調査会社のウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)は5月14日、東京・丸の内の同社東京支社で、「2024の金属ブリーフィング」を開催した。同社シニアバイスプレジデントのジュリアン・ケトル(Jullian Kettle)氏が鉱業セクターのエネルギー転換について解説したほか、リサーチアナリストのプラティーク・ビスワス(Prateek Biswas)氏がオンラインでEVバッテリー産業の現況について語った。
■鉱物需要は「サスティナビリティ」重視に移行
参加者は15人ほど、すべて英語で同時通訳もなく、アットホームな雰囲気のブリーフィングだった。
第1部で登壇したケトル氏は、世界の実質国内総生産(GDP)成長率が2023年の2.7%から2024年は2.5%に減速する見通しだと指摘。主因は中国の経済成長が鈍っているためで、「それ自体は気候変動にはプラス」と話し、鉱物需要も「利益優先からサスティナビリティへと移行しつつある」と指摘した。
世界がネットゼロへと舵を切る中で、鉱物セクターの転換の柱として、同氏は⑴ポリシー⑵サーキュラーエコノミー⑶テクノロジー⑷インベストメント⑸ソサイエティ—の5つの柱を挙げた。政策や技術を向上させつつ、資源の再利用を進めて投資を呼び込み、社会の関心を高める、ということになる。具体例として、特にコバルトで進むリサイクルや、リチウムイオンの技術革新などが話題となった。
■EV、2030年には世界の自動車の半数
第2部ではビスワス氏が世界のEVバッテリーの現況について解説した。足元では景気の先行き不透明感からEVの販売は伸び悩んでおり、西側の景気停滞を受けて中国市場の拡大ピッチも鈍化している。ただし、中長期的には2030年までに世界の自動車の半数はEVになる見通しで、バッテリー需要も倍増すると見込まれていると予測した。特に中国を除いたアジア地域での伸びが期待できるとした。
EV需要の拡大に伴い、やはり重要鉱物が注目されている。リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイト、マンガン、銅などがEV恩恵鉱物に当たる。これらの鉱物は足元では供給過剰。リサイクル状況も国により、また鉱物によりまちまちで、現時点ではリサイクル分野は米国が先行している。ただ、2028年には多くの国でリサイクル技術が向上しそうだ。
EV関連は講演後の質疑応答でも質問が多く、参加者の関心の高さをうかがわせた。講演後にはウッドマッケンジーのシステムの利用法について紹介があった。
ブリーフィング資料:Tokyo Metals Briefing 2024 | Wood Mackenzie
(IR Universe Kure)
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