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Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024 ドローン普及と開発は急務

2024年6月5日から7日にかけて、千葉県千葉市にある展示会場である幕張メッセにて、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)主催の「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2024」が開催された。
今回の記事ではイベントの大まかな状況を幾つかの企業の出展と共に紹介する。

 


株式会社ロボデックスのaigis one。前回よりもシャープな本体デザインである。

 

ドローンの開発促進の為の首都圏へ

 

 ここ数年で飛躍的に開発が進んできたドローン。
一時期は軍事用途での成果が騒がれていたが、それ以上に民間における活用事例としてドローンショーの様な空中を活かしたエンターテインメントプログラムや、配送や計測、検査といった人の手を必要とする領域でますますニーズが高まりつつある。
しかしこのドローンの開発には一つ問題点がある。開発したのは良いものの、テスト出来る環境が早々ないのである。


 これまでは福島ロボットテストフィールドの様な大規模な施設はそこまで多くなく、ドローンの開発のための試験飛行の申請手続きやテストケースのサンプルの用意といったものは、開発企業にもよるがおいそれと用意できる代物ではないのが実情だ。
100g以上の無人航空機は飛ばす場所次第では申請が必要となり、住宅密集地の多い都市圏では許可をもらわなければ逐次飛行が出来ないという点も開発の遅さに拍車を掛ける。
これをなんとかしようと立ち上がったのが、三井不動産株式会社だ。


 

 三井不動産株式会社は、日鉄興和不動産株式会社や板橋区と共同で延床面積25万m2超の街づくり型物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」を着工した。
東京都板橋区舟渡4丁目3-1にあるこの施設は、都営三田線西台駅やJR埼京線の浮間舟渡駅が最寄りとなる河川に近い建物だ。
現在建設が進んでおり、2024年9月に竣工予定のこの大規模なロジスティクスセンターに併設されているのが「ITABASHI DRONE FIELD」というドローンのテスト用フィールドだ。

 

 

 ネットで囲われたフットサルコート程の広さのエリアは、企業や団体のみならず個人であれば申請次第で時間貸しが可能なドローンの飛行用エリアとなっている。
また地上走行テストエリアを設けている他、ピット点検や橋梁点検が可能なエリアも用意。自然環境での風化・修繕具合の生のデータを取得する事が可能だ。
更にセンター内はドローン事業者等への賃貸用R&D区画も用意されており、複数企業の入居が既に決定しているとの事である。
担当者曰く、将来は水上飛行試験も可能なエリアを設けていきたいとの事である。
この手の大型施設は河川氾濫等の緊急時における一時避難場所としても機能する設計というだけあり、その頑健さは折り紙付きと見て良い。
首都圏でドローン開発を進めたいベンチャーをはじめとする各企業・団体においてこれほどアクセスが良く適切な環境が用意されたというのは、板橋区を含めた行政側としても「本気の」取り組みであると言えるだろう。


 ドローンの免許取得の為の講習などのプログラムも用意されており、運用のエキスパート企業であるブルーイノベーション株式会社もこの事業に参画をしているという。
将来的なドローン開発の一大拠点として、板橋が活性化する可能性は大いにある。

 

実用性の高いドローンの開発へ
 

 前回までのJapan Droneではドローン本体というよりはそれを活用した企業のサービスに焦点が当てられる事が多かったが、今回の展示会ではドローンそのものや搭載するバッテリーなどを主軸にした企業が多く出展を果たしている。
そんな中から3社を選りすぐって業界の実勢を見てみる事にする。

 


三菱重工業株式会社が現在開発途中のドローンとしては大きく2タイプ存在する。
1つは独自設計色が強いマルチコプターであり、既存のドローンにはない円筒状の筒でプロペラを保護する「ダクテッドファン」構造を備えている。
更に水平方向を維持したまま前後左右に飛行出来る様に、プロペラ下部に推力偏向用のフィンを装備。
航空機における推力偏向ノズル(ベクタード・スラスト)同様の働きをドローンで実装するというある種の変態性を感じる程の技術を投入し、高所における作業の代替や作業員のサポートなどといった人手不足に対する課題解決を行う事を目標としているという。

 


もう1つのタイプのドローンは、無骨な鉄骨然としたデザインが特徴の開発中の「中型ドローン」であり、会場内にはドローンの片側と本体中央部が合わさる形で展示されていた。
これはエンジンとモーターのハイブリッド駆動を目標としており、なんとその耐荷重は脅威の200kg。一般的なドローンの積載量を遥かに超える重量を扱える上に、移動する着陸ポートへの離着陸を可能とするシステムも装備。
主に艦船での取り扱いを行う政府系機関の様な顧客を開拓していきたいと担当者は語る。

 



 


 株式会社AirKamuyが開発中のドローンは、固定翼機とローター機の両方の形態を持つ可変型ドローン「AirKamuy Σ-1」だ。
マルチロータータイプのドローンは離発着の際にローターを活かして定点で機体を上昇・下降させる事が可能であるが、その航続距離がネックであった。
一方で固定翼機タイプのドローンは長距離を飛行する事が出来ても、離着陸には距離を稼げる滑走路が無ければ運用が行えないという点が取り回しを難しくしていた。
そこでこのドローンはマルチローター形態で上昇後、折りたたんでいた翼を上空で展開する。
滑空しながら長距離を移動し、着陸地点付近で翼を折りたたみ精密な着陸を行うという「いいとこ取り」が出来るのだという。
現在はまだ開発途中であるため製品化は先となるが、10kgというドローンとしては比較的大きなペイロードを活かした柔軟な運用が出来るモデルを目指しているとの事である。

 



 

 古河電池株式会社は産業用の製品に対する電池を開発・販売する企業である。
同社の主なターゲットとしては自動車などのモビリティに対する車載用の電池ではあるが、近年盛り上がりつつあるドローン業界に対しても電池の開発と供給を行っている。
現在ドローン用の電池に関しては、中国のDJI(大疆創新科技有限公司)がそのシェアの大半を握っているが、国内メーカーとして調達の容易さもそうだが安全性や信頼性といったもので差別化を行っていきたいと同社の担当者は語る。

 



 


 ドローン用のバッテリーの開発においては技術における底上げが現状何よりも大事とされている。
というのも、ドローン用のバッテリーに限らずエネルギー密度を増やし長時間使用できる様になればその分最大出力は落ち、また逆に出力の高いモデルになればエネルギー密度が落ちるため短時間のみ利用可能な性能となってしまう。
バッテリーの材料や製造技術の向上により全体の質を底上げし、そのうえでいかにユーザーが望む性能のバッテリーを開発し最適化していくかが必要であるとの事であった。
もちろん全固体電池の様な次世代電池の開発には期待はしているものの、メーカーとしての体力を考えるなら現状のリチウムイオンバッテリーの性能向上が何よりの近道であるという。


 ドローンを活かしたサービスから、ドローンそのものの性能向上や目的別アプローチといった方向性に切り替わった今回のJapan Drone。
今後予想される人手不足や流通コストの向上といった諸要素をいかに抑える事が出来るのか、その実装に向けて開発の勢いが削がれずに続く事を期待したい。

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

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