LME、香港に新倉庫を設置へ CEOが表明、中国顧客の増加に対応 LME Asia Week 2024開催
香港証券取引所集団(HKEX)は6月27日、香港で、子会社のロンドン金属取引所(LME) のアジア総会「LME Asia Week 2024」を開催した。同日の香港経済日報(電子版)などの報道によると、LMEのマシュー・チェンバレン最高経営責任者(CEO)がこの総会の講演で、「香港に新たな倉庫を設置する」との計画を表明。中国顧客の取引増加に対応する考えを示した。
■中国の金属メーカー、トラックに載せるだけで倉庫に輸送
講演するLMEのチェンバレンCEO
(出所:HKEXホームページ)
プレスリリース(英語):HKEX Hosts LME Asia Week 2024
報道によると、チェンバレン氏は香港の新倉庫設置計画について「(1)法的根拠と税務調査(2)倉庫の設備と場所の選定(3)倉庫業者に向け倉庫の使用を許可—の3段階に分けて準備を進める」と表明した。
チェンバレン氏は、香港は英国法による統治がまだ生きているため、「(1)は数か月で完了する」との見方を示した。(2)についても既に香港で倉庫事業を手掛けている業者もおり、「香港が便利な港湾であることは認知されている」と話した。
また、HKEXのボニー・チャンCEOも新倉庫について、「中国の金属メーカーはトラックや列車に金属を載せるだけですぐに香港の倉庫に輸送できる。香港にはエネルギーや鉱物を扱う商社の拠点設置も多い」と、利点を説明。「香港のLME倉庫が実現すれば、中国本土の現物金属市場とLMEの国際価格との結びつきを強化し、より多くの市場裁定取引の機会を生み出すだろう」と効果を期待した。
ただ、両氏ともに計画の具体的なタイムスケジュールは明かさなかったとされる。
■ネックは家賃、スペース、そして中国の締め付け
LMEは2012年にHKEXの傘下に入って以来、長年にわたり香港での倉庫設置を検討してきたが、ネックになってきたのは土地の狭さと家賃の高さだ。
LMEは世界の32か所で金属倉庫を運営するが、香港の土地代はその中で最高クラスに属する。港湾スペースも既にアジア最大規模の富豪である李嘉誠氏の企業であるCKハチソンホールディングスなどが場所を占め、東インド会社の時代から伝統的に食料や日用品の取り扱いが多い港だ。6月27日のロイター通信は、LMEの計画に対する反対意見には「香港は金属を大量に消費する都市ではない」との指摘があるとも伝えた。
また、最近の中国政府による香港への締め付けに対する警戒もくすぶる。ロイターは、「香港内の外国企業や個人に対する中国の影響力の増大に伴うリスクを理由に、この計画に懸念を表明する人もいる」とも指摘した。香港を巡っては、業種によらず中国の顧客に利便性を図ることは、中国政府や香港政府が志向する両地の一体化政策に沿うところだが、その方向性を示すほどにグローバル色は薄れるというジレンマがある。
LME自体は世界的に倉庫ネットワークを増やしたい構えだ。香港のほかにもサウジアラビアのジェッダ港を追加する計画もあるとかねて伝わる。
■2000人参加でアジア総会
今回のアジア総会には約2000人が出席。セミナーでは香港政府のマイケル・ウォン副財務長官らが基調講演を行い、上海有色網(SMM)のヤンチャン・ワン氏やトラフィグラのヘンリー・ヴァン氏らが講演した。また、ディナーパーティにはHKEXのカールソン・トン会長、LMEのジョン・ウィリアムソン会長らが顔をそろえた。
LMEディナーパーティ
(出所:LMEホームページ)
(IR Universe Kure)
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