メタネーション普及に弾み、東京ガス設備が初のクリーンガス認証
化石燃料のガスを脱炭素化する技術として有望視されているメタネーション技術。そのうち、大きな期待がかかるe-メタンの製造設備が、国内で初めて第三者機関によるクリーンガス証書制度の認定を受けた。化石燃料の代替として期待されているe-メタンを製造する東京ガスの横浜テクノステーション・メタネーション実証設備(横浜市鶴見区)だ。クリーンガス普及促進に大きな弾みがつきそうだ。
東京ガスのメタネーション実証設備
メタネーションは、水素と二酸化炭素(CO2)を反応させ、天然ガスの主成分であるメタンを合成する技術。メタン自体は燃焼時にCO2を排出するが、原料として、発電所などから排出されるCO2を回収して利用すれば、事実上、相殺されることになり、大気中のCO2は増加しないとされている。
e-メタンは水素とCO2を原料に製造された合成メタンで、横浜テクノステーション・メタネーション実証設備では、1時間当たり12・5立方メートルのe-メタンを製造できる。2022年3月から、同レベルの製造能力で稼働を続けている設備だ。
横浜市と三菱重工グループが共同で、同市のごみ焼却施設である市資源循環局鶴見工場から出る排ガスからCO2を分離、回収。さらに、再生可能エネルギーである太陽光発電を活用して、水を大規模に電気分解して取り出したグリーン水素を主な原料として、e-メタンを製造している。
加えて、この設備では、今年8月中旬にも、下水処理場である市下水道河川局北部下水道センターで発生する消化ガスや、再生水を活用した製造も間近に迫っている。今年8月中旬にも開始させる計画だ。「エネルギーをより地産地消できる」(東京ガス広報部)メリットがあるという。
クリーンガス証書制度は、今年4月から運用が開始された。燃焼しても大気中のCO2が増えないとみなせる環境価値を持つe-メタンやバイオガスを対象に、第三者機関がクリーンガスとして認証して証書を発行する。クリーンガス証書評価委員会が、クリーンガスを製造する設備や認定を受けた設備で製造されたクリーンガス相当量を認証する。同委員会の事務局は、日本エネルギー経済研究所(東京都中央区)が担っている。
クリーンガスの環境価値をエネルギー価値から分離させることで、移転することができる仕組みで、再エネ電力などで導入されている制度のガス版だといえる。東京ガスは「クリーンガスの入手が難しい企業や自治体などへの環境対策に貢献できるようになる」と、その利点を指摘する。また、クリーンガスの普及を通じて、製造設備の維持、拡大がしやすくなることも、製造事業者側にとっては大きなメリットになる。将来的には、国内でも市場取引などについて展望されているという。
海外でもプロジェクトを多数展開
都市ガス最大手の東京ガスは、エネルギー消費の約6割を占める熱需要を脱炭素化していく手段として、既存インフラをそのまま活用できるe-メタンを重視する。米国では、三菱商事などと共に日米コンソーシアムで世界最大級のプロジェクトを進めているほか、住友商事などとマレーシアで、石油開発大手のINPEXなどと中東のアブダビなどでe-メタン製造計画の検討に着手している。
こうしたプロジェクトとサプライチェーンを整備させることで、国内にe-メタンを大規模に取り込む計画だ。現状ではまだ事実上、活用されていないのが実態だが、30年には都市ガス需要の1%を置き換えていく目標を掲げている。さらに30年代中には、その量を10倍程度に増加させていく方針だ。
東京ガスは「50年までの中間地点として40年時点に、国内供給ガスの5割をカーボンニュートラル化していくことを見据えて動いている」としている。
(IRuniverse Kogure)
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