環境産業の市場規模、過去最高118兆円で復調鮮明に――環境省の22年統計
環境省は、成長する再生可能エネルギーや蓄電池、リサイクル技術など国内の環境産業の市場規模などについて、2022年の推計結果をまとめ、公表した。市場規模は、過去最高となる118兆8824億円で、前年比4%の増加。新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んだ状態からの復調が鮮明になった格好だ。00年と比べた場合は、約1・9倍に膨らんだ規模で、全産業に占める環境産業の22年の市場規模の割合は、00年の6.6%から10.7%まで増加した。環境省は「環境産業が、国内の経済成長に大きな影響を与える存在になっている」と指摘している。
調査は1999年から始め、毎年、公表している。基本的には、政府などの業界団体などの統計結果を積算してまとめている。調査では、環境産業を具体的に、大きく4つに分類している。化学物質汚染防止など「環境汚染防止」や、クリーンエネルギー利用などの「地球温暖化対策」のほか、廃棄物処理・リサイクルといった「廃棄物処理・資源有効活用」、緑化・水辺再生などの「自然環境保全」の分野がある。
これまでの統計を振り返ると、2000年は60兆円強だった市場規模は、右肩上がりを続け、08年には96兆円を超えたものの、翌09年には世界的なリーマンショックのあおりを受けて環境分野への投資が減少。80兆円を割るまでに縮小した。その後、少しずつ回復が続き、13年には100兆円台に乗せ、さらに22年は過去最高となった。
これまでのピークだった19年は115兆5390億円。コロナ禍の影響で翌20年には、前年比5・5%減の107兆3209億円にまで落ち込んだ。省エネ設備の導入などが鈍ったためだという。その後、21年、22年と連続で前年を上回って、拡大傾向を取り戻したことが明らかになった。
ただ、これまでのピークだった19年には、40兆円超に達した地球温暖化対策は、22年には37兆円程度にとどまっている。「省エネルギー化や自動車の低燃費化の回復が遅れている」(環境省環境計画室)ことが要因という。だが、従来から最多を占める廃棄物処理・資源有効利用が前年から4・3%伸びて59・8兆円にまで拡大し、全体を押し上げた。具体的には、空き瓶や空き缶、鉄スクラップなどの再生資源卸売業などが、ウクライナ情勢で資源面が高騰していることを背景に、規模が拡大したという。
また、政府目標や整備計画、国際情勢などを勘案して、50年までの将来推計も示された。国内の市場規模は、カーボンニュートラルを目指す50年に向けて拡大傾向を維持すると見込まれ、22~50年の年平均成長率は0・5%と推定。50年に約135兆8800億円にまで成長すると試算されている。
新たに創出する産業は考慮せず
今後、再エネなどが急拡大するといった指摘もあるなかで、22年と比べ50年の市場規模が単純計算で14・4%程度の拡大にとどまる結果になった点について、環境省は、推計は既存産業の変化のみを対象とし、新たに創出されると推測される産業は考慮していないほか、再エネなどについて、国の整備計画が具体化されておらず、調査に反映されていないことなどを理由として挙げている。
統計を担当する同省環境計画室の大津道子室長補佐は「50年カーボンニュートラルに向けて、今後、対策を強化して再エネなどの国の整備計画が出そろっていったとすれば、市場規模はさらに大きくなる可能性はある」と指摘する。
50年の市場を分野ごとでみると、廃棄物処理・資源有効利用が最多の70兆311億円で、構成比では最も高い51・5%を占めた。次いだ地球温暖化対策が、48兆6959億円。自然環境保全(8兆8582億円)、環境汚染防止(8兆2947億円)と続いた。
23年以降は、廃棄物処理・資源有効利用と、地球温暖化対策が順調に右肩上がりで拡大する一方、水質や土壌、大気などの環境汚染源が解消することなどが想定されるため、環境汚染防止は市場が縮小傾向を示すとされた。自然環境保全でも35年ごろから、減少に転じると見込まれている。人口減少に伴って、水質の浄化に関連する産業が縮小するとみられている。
一方、雇用規模も右肩上がりに増えている。22年は前年比4・6%増の約296・3万人で、00年に比べ約1・5倍に膨れている。特に、地球温暖化対策の伸びが著しく、00年から22年にかけて、約6・8倍に拡大している。「各自動車メーカーがハイブリッド自動車やディーゼルエンジンなどの開発を進めた」(同室)ことや再エネ固定価格買い取り制度(FIT)により太陽光などクリーンエネルギー利用などがけん引したという。
大津室長補佐は「イベントリスクで縮小することはあるが、全体としては伸びていっている。環境を無視して事業を行っていくことは非常に難しくなっている。その意味でも確実に拡大していく産業だ」と指摘している。
(IRuniverse Kogure)
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