洋上風力モニタリングデータを国が一元管理の方針、ガイドライン策定に向け検討始まる
オンラインでも配信された「洋上風力発電におけるモニタリング等に関する検討会」の第1回会合
海に囲まれた日本で、再生可能エネルギー拡大の「切り札」とされる洋上風力発電について、施設の工事中や実際に稼働が始まって以降、環境に対して与える影響を監視する方法などを議論する「洋上風力発電におけるモニタリング等に関する検討会」(座長=田中充・法政大学名誉教授)の第1回会合が30日、東京都内で開かれた。洋上風力の導入を最大限にするためには、環境への適正な配慮を確保し、地域との共生を目指すことが欠かせない。モニタリングによって収集されたデータは、将来のさらなる拡大に向けた貴重な資料にもなる。こうした課題を検討するため、検討会では、事業者向けのガイドライン案の策定などを目指す。
洋上風力発電は、先行する欧州などでは導入が広がっているものの、国内では稼働実績が少ない。今後、導入拡大が期待されるなかで、発電事業が環境に与える影響の不確実性に対応する観点から、事業者の事業実施や継続の予見可能性を確保しながら、工事中や稼働中に実際にどう環境に影響を与えるかを把握するモニタリングの重要性が指摘されている。
継続したモニタリングによって、環境影響への科学的知見を充実化させることで、国内全体の洋上風力発電事業の環境負荷の低減と、事業実施時に必要となる最適な環境保全の具体的措置を考案できる。
こうした背景から、海外の動向や最新の科学的知識をもとに、モニタリングにおける国と事業者の役割分担や、環境配慮した稼働に向けたモニタリング結果の活用方法などについて整理し、事業者向けのガイドラインの内容を具体化するため、この検討会が開催された。
検討会は、経済産業省産業保安・安全グループ電力安全課と環境省環境影響評価課が、共同で事務局を務める。この日は、風力発電や海洋生物などの専門家ら約10人が委員として出席した。
冒頭、座長に選定された田中充・法政大学名誉教授は、洋上風力について「特に環境面に関する知見がまだ不足している。事業者や国の協力を得ながら、環境アセスメントの手続きをいかに適切に進めるかが課題になっている」と指摘し、「モニタリングというキーワードについて、検討会の中で考え方、枠組みを明らかにしていく」と述べた。
また、事務局側から、国内でのモニタリングデータについて、全体的な環境負荷の低減のために、モニタリング結果を科学的に分析、検証し、政策などにフィードバックすることを重要視する観点から、国が一元的にデータを管理し、分析する仕組みづくりを検討する方針が示された。
モニタリングの分担や費用負担が課題に
さらに、会合では、先行している欧州での事例が紹介された。英国では、事業者は、海の権益を管理する王室関連の組織を通じて、データ公開をしているという。13年から始めた仕組みで、モニタリングデータの管理システムは、事業者が収集したデータを自由に利用できるようにすることで、データ根拠に基づいた意思決定を行い、英国の洋上再エネ技術課題の解決の一助にすることを目的にしているという。
風力開発の全ての段階で収集したデータが対象で、商業的な機密性に考慮することを条件に、一般公開されることも規定されている。着目すべき点として、データ共有を促進するため、データ標準も定めていることなどが指摘された。
また、オランダでは16年以降、政府が主体的に環境影響評価などに関するモニタリングを実施する「セントラル方式」が導入された。一方で、事業者には、無償でモニタリングに協力することが義務づけられているという。ただ、原則として、収集されたデータの一般公開の時期は、事業者の不利益にならないよう関係者で協議されて決められるという。
委員からは、海洋環境が日本に近い台湾などの事例も参考にすべきだとの意見があった一方で、モニタリングについて国と事業者がどう費用負担をするかなどの具体的問題に言及する指摘もあった。
検討会は今後、今年秋ごろに第2回、冬頃に第3回を開催し、モニタリングデータの取り扱いについて具体的な仕組みなどを検討する。年度内に4回目を開いて、ガイドライン案を取りまとめる予定だ。
(IRuniverse Kogure)
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