浮体式洋上風力の「浮き」部材生産などで協業、日揮と住友商事

浮体式洋上風力発電の主な浮体形式と浮体部材(囲み部分)
日揮ホールディングス(HD)は31日、設計から建設までを担う事業会社、日揮(横浜市西区)と住友商事が、遠浅の少ない国内では期待がかかる浮体式洋上風力発電所の浮きの部分あたる浮体部材の詳細設計や製造などについて協業の可能性を検討する合意書を締結した、と発表した。合意は26日付。この部材のサプライチェーン構築に向けて、生産管理などを担い、将来的には年間100基程度の供給体制を目指していく。
浮体式は、海面に浮かした浮きを海底にチェーンでつないだ構造。協業を検討するのは、部材の詳細な設計や部材製造のパートナーとなる鉄鋼系、造船系メーカーの開拓などのほか、洋上風力発電の拠点港への部材の輸送に関する点など。
世界で実用化されているのは、海底に風車を固定する着床式が一般的だ。日揮HDによると、世界における浮体式の発電容量は、2022年は約0・2GWにとどまっているが、50年には269GWに拡大する見通しもある。さらに50年には年間約800基の新規建設が予測されるとの試算もあるという。
浮体部材の技術開発は発展途上であり、サプライチェーンも構築されていないままで、増え続ける需要に対して部材の供給が追い付かいないことが懸念されている。そうした背景から、予測される50年での年間の新規建設約800基のうち、100基程度の部材供給をカバーできる体制構築を、今回の協業で目指していくことになるという。
日揮グループでは、18年に風力発電に関連する専門部署を設けて洋上風力分野への参入を目指してきた。また、中期経営計画で掲げる重点戦略のなかで、洋上風力を「将来の成長エンジンの確立」の注力分野と位置付け、世界の風車メーカーや部材メーカーなど複数企業と協議を進めてきたという。
一方、住友商事は、長崎県西海市江島沖での着床式洋上風力発電事業を、コンソーシアムの代表企業として東京電力グループなどとプロジェクトを進めている。また、洋上風力発電所を建設する際の重量物の運搬船を保有するオランダの企業などに出資し、この分野に積極的に投資を行ってきた。
浮体部材を安定的に製造、供給するためには、一つの造船所のドックの空き状況に左右されないようにすることが重要だという。そのため、今回は、複数の造船所のドックなどでバラバラに作られた部品を拠点港に輸送し、最終的に集めて組み立てることを計画しているという。協業では、住友商事はサプライチェーン全体の統括を担い、日揮グループは各メーカーなどへの割り振りのほか、製造全体のマネージメントやスケジュール管理などの役割を持つ想定だという。
日揮HD経営企画ユニット広報グループは「着床式は今、まさにプロジェクト化が進んでいるが、適した海域が限られているため、適地は次第になくなっていく。浮体式は沖合でも展開できるため、大規模化も想定でき、より大きな発電ポテンシャルが期待できる」と話している。
(IRuniverse Kogure)
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