「家畜ふん尿由来の燃料でロケットを宇宙に」ーーエア・ウォーターが次世代型宇宙港WGに参画
エア・ウォーターの液化バイオメタン製造プラント(北海道帯広市)
家畜のふん尿に由来する液化バイオメタンでロケットを宇宙に――。そんな構想を掲げて、産業用ガス大手のエア・ウォーター(大阪市中央区)が、1日に発足した「次世代型宇宙港」の在り方を検討するワーキンググループに参画した。宇宙往還ができる輸送システムの構築を掲げるスタートアップが立ち上げたグループで、エア・ウォーターは同じく参加した計17社、1大学とともに連携しながら実現を目指していく。
参画したのは、スタートアップ「将来宇宙輸送システム」(東京都中央区)のワーキンググループ。同社は、2028年3月までに人工衛星の打ち上げ実証を行うため、研究開発を進めている。さらなる最終目標として、40年代には、完全に再使用できる宇宙への往還機を使って、高頻度の宇宙輸送を実現させることを掲げている。
次世代型宇宙港は、そうした宇宙輸送を支えるための拠点で、ロケットの打ち上げや着陸のほか、観光向けや商業用の設備を備えた幅広い複合的な施設を想定。陸上だけでなく洋上を含めて検討を進めて、斬新な拠点の設置を構想している。
エア・ウォーターは、1970年代から宇宙ロケット開発に携わってきた。ガス供給設備の納入のほか、産業ガスメーカーとして、ロケット燃料となる酸素やメタンなどの製造、貯蔵、運搬から使用方法まで、豊富な技術を蓄積してきたという。
宇宙産業の脱炭素化に貢献
一方で、同社は、北海道・十勝地方の酪農家らと協力。家畜ふん尿に由来する「液化バイオメタン」の普及に取り組んできた。液化天然ガス(LNG)の代替燃料として脱炭素を推進するためだ。酪農家が飼育する乳牛のふん尿から出るバイオガスが原料となるため、「カーボンニュートラルな国産エネルギー」(同社広報・IR推進室)であり、「地産地消のカーボンニュートラルエネルギーで宇宙産業の脱炭素化に貢献できる」として、この製品に着目した。
これまで同社は、バイオガスからメタン成分を分離、液化する実証などに取り組んできた。製造プロセスが確立し、品質実証などが整うなどしたため、今年5月には「バイオメタン」の製造から販売までのサプライチェーンを構築し、商用化に乗り出した。こうした取り組みは国内で唯一という。
バイオメタンとは、下水汚泥なども含むバイオマス由来のバイオガスから、二酸化炭素(CO2)分を除去して、メタンを主成分としたガスを指す。同社が製造する液化バイオメタンは、酪農家が持つバイオガスプラントから発生した未利用のバイオガスを回収した後に、その主成分のメタンを分離、精製。マイナス約160度で液化している。容積が600分の1に圧縮できることで、輸送が効率化できるメリットがある。
大量生産にはコスト面の課題も残るが、すでに、同社の液化バイオメタンは、純度を高めて、別の企業が進めているロケットエンジンの燃焼試験用ガスとして供給した実績もあるという。
今回発足したワーキンググループには、すでに17社と1大学が参加。鹿島建設や商船三井、JFEエンジニアリング、三菱HCキャピタルなどの民間企業が名を連ねているほか、室蘭工業大学も加わっている。グループでは今後、25年3月にロードマップ案を作成し、同年5月には事業計画案を策定するスケジュールで進める予定だ。
エア・ウォーター広報・IR推進室の福島圭介課長は、液化バイオメタンについて「もともと家畜ふん尿の処理に困っていた酪農家に協力してもらっている。臭いなどの問題があり、いわば、邪魔ものだったものを資源へと変えていくことができた。非常に意義のある取り組みにしていきたい」と話している。
(IRuniverse Kogure)
関連記事
- 2024/09/20 中国の電池輸出額、前年同期比36.5%増の16.7GWh
- 2024/09/20 日本でシップリサイクル復活か
- 2024/09/20 バッテリー産業の発展がニッケルに与える影響―バッテリーデーセミナー①
- 2024/09/20 生産動態統計(24年7月):カーボンブラック
- 2024/09/20 日用プラ製品の天馬 国内プラ成形メーカー初、プラ新法の大臣認定を取得
- 2024/09/19 Rio Tinto社 再生可能ディーゼル製造に向けポンガミア種子農場の開発に乗り出す
- 2024/09/19 ウラン巡り大国の思惑が交錯 「輸出しない」「輸入しない」ロシアと米国、中国が混戦
- 2024/09/19 DOWA HD:廃棄物処理施設やリサイクル施設の見学会を開催
- 2024/09/19 原油価格の動向(9/18)
- 2024/09/19 米国の対中関税引き上げ、やはり選挙戦の材料に 27日からEV100%、重要鉱物25%