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Americas Weekly31 重要鉱物に向けアフリカ外交を強化する米国 知日派キャンベル氏が引っ張る「ロビト回廊」

 米大統領選は、バイデン大統領からバトンを引き継いだ民主党のハリス副大統領が激戦州でも支持を広げ、共和党のトランプ前大統領を慌てさせている。日本とは違い米国の選挙は相手候補を徹底的に叩くのが通常のやり方で、トランプ前大統領の「毒舌」がなくても、選挙前の米国は分断が深まる。そんな米国の「政治の現場」で、超党派で意見が一致するという、この時期では珍しい光景が首都ワシントンで見られた。

 

 7月30日に開かれた上院外交委員会の公聴会は、米中関係が議題だった。冒頭、民主党のベン・カーディン委員長(メリーランド州)は「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国に、中国に代わる選択肢を提供する必要があることを強調し、「米国は軍事だけでなく、外交や経済発展のためのツールにも投資しなければならない」と述べた。

 

 公聴会の「主賓」はバイデン政権の外交のナンバー2であるカート・キャンベル国務副長官だった。中国と戦略的にどう向き合うべきかという議会側の問いかけに、「中国は米国が直面している決定的な地政学的課題」だと位置づけ、中国に意義を唱えるために、さらなる行動を起こさなければならないと述べた。

 

 キャンベル国務副長官は国際関係論の専門家だ。2009~13年にはオバマ政権下で国務次官補(東アジア・太平洋担当)を務めた知日派である。そのキャンベル国務副長官が示した対中姿勢には、切迫感が伴っており、野党・共和党も文句の付けようはなかった。

 

 キャンベル国務副長官が、中国がアフリカで軍事基地建設を進めていることや、船舶や潜水艦の製造で世界をリードするようになったことなどに懸念を示すと、共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)が同調し、「造船大国」となった中国への対抗措置の必要性を述べた。

 

 この公聴会で焦点となったのは、レアアース(希土類)などの重要鉱物とアフリカだった。米地質調査所(USGS)によると、中国は米国にとって最大のレアアース供給国で約70%を占める。世界レベルで見たレアアースの生産量も中国は約60%で、最大の生産国だ。

 

 キャンベル国務副長官は「電池や半導体製造に必要な微量元素とミネラルの上位40のバランスシートを見ると、それらの供給の大部分は、現在、中国にコントロールされている」と話し、安全保障上の懸念を表明した。

 

 キャンベル国務副長官は2024年2月に就任した後、すでに2回、アフリカを訪問している。4月にナイジェリア、7月にガーナ、ガボン、セネガルで地元政治家らと会談し、地域の安定のほか、経済面での協力について協議した。公聴会では、近く3回目のアフリカ訪問を計画していることを明らかにした。

 

 このところ米国がアフリカ外交に力を入れるのは、レアアースなどの重要鉱物の中国による独占構造を打破するためだ。

 

 米国は2023年9月、アンゴラとザンビア、コンゴ民主共和国(DRC)を鉄道で結ぶ「ロビト回廊」事業をEU(欧州連合)と共同で進めることを発表した。アンゴラの大西洋岸の港湾都市ロビトと、コバルトや銅など地下資源が豊富なザンビアやコンゴをつなぐ約1300キロの鉄道網を整備する。

 

 「ロビト回廊」の主路線となるロビト大西洋鉄道は、産出した銅を運搬するためにポルトガル統治時代に建設されたベンゲラ鉄道が起源だ。

 

 1931年に開通し、1970年代には南部アフリカの基幹鉄道網となった。1973年の従業員数は約1300人で、1企業の雇用者数としてはアンゴラ最大。年間の貨物輸送量は330万トンにのぼり、旧ザイール(現DRC)産の銅の約60%を、ザンビア産の銅の約45%を運搬していた。

 

 しかし、1975年のアンゴラ独立以降、政府と反政府勢力との内戦が長く続き、戦闘などで鉄道網が深刻な被害を受けた。2002年に内戦は終結したが、運行区間は全体の3%程度にとどまっていた。

 

 アンゴラは世界の共産主義圏にしっかりと組み込まれた国であったため、内戦終結後に鉄道修復にあたったのは中国だった。2006年に始まった修復工事は2014年に完成した。

 

 しかし、修復はずさんで、地元では中国による再建工事は失敗だったという評価が一般的に広がっている。ウォール・ストリート・ジャーナルは2024年1月21日に配信した記事で、駅舎を建設した中国企業が、列車の到着や出発の時間を示す掲示板や発券装置のコンピュータのパスワードを鉄道会社従業員に伝えずに中国に引き揚げてしまったため、駅での表示が10年以上も変わらないままになっていることなどを伝えている。

 

 アンゴラでの中国企業に対する信頼度は低下し、アンゴラ政府は2022年、貨物輸送を立て直し、運営まで手がけるとした中国側の入札を拒否し、米国が支援するEUの企業体と契約した。米国政府は税金を投入し、「ロビト回廊」構想を推進している。

 

 公聴会でキャンベル国務副長官は「ロビト回廊」について「米国が必要とする鉱物を満たすことに役立つ」と述べ、計画の重要性を強調した。一方で、対中戦略で重要なアフリカ大陸で14の大使ポストが上院で承認されず、長く空席になっていることについて「米国の戦略的利益に反する」と述べて、野党・共和党をチクリと批判した。

 

 

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Taro Yanaka

街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

趣味は世界を車で走ること。

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