ヨコオ(6800) 25/3Q1決算メモ ニュートラル継続
25/3期回路検査や無線通信黒転も25/3H2回復緩慢で4.0%増収19.1%経常減予想に減額
株価1670円(8/19) 時価総額398億円 発行済株23850千株
PER(DO25/3期予16.2X)PBR(0.73X) 配当(25/3予)48円 配当利回り:2.8%
要約
・25/3Q1は回路検査、無線通信営業黒字転換で14.8%増収、営利10.56億円、経常74.5%増
・25/3H2半導体、無線回復緩慢で25/3期予想を4.0%増収19.1%経常減予想に減額修正
・中期経営目標で27/3期に売上高965.5億円、営利109.5億円目指す
25/3Q1は回路検査、無線通信営業黒字転換で14.8%増収、営利10.56億円、経常74.5%増
25/3Q1決算が8/8に開示され、同日説明資料が開示(説明会は無し)され、売上高208.77億円(14.8%増)、営利10.56億円営業損失(13.14億円増、黒字転落)、経常利益20.17億円と回路検査、無線通信が営利黒字し、円安継続で経常利益も増益。
セグメント別では車載通信機器(前期よりVCCS)が自動車生産の正常化で売上高144.33億円(12.9%増)となった。地域的には日本44.13億円(15.3%増)と主力ユーザーのトヨタ向けが堅調に推移、欧は74.03億円(21.9%増)と円安寄与、SUV向けの堅調が寄与。一方、アジアは26.16億円(9.1%減)と日系メーカーの中国での販売不振が影響した。利益面では中国、ベトナム生産拠点で円安影響による労務費増などがあったものの、増収効果などで営利6.53億円(4.21倍)となった。
回路検査コネクタ(前期よりCTC)は売上高36.06億円(5.6%増)、営利3.78億円(5.09億円改善、黒字転換)となった。セグメント別ではクアルコムを中心とする前工程向けはターンキービジネスが緩やかな回復、主力の後工程のテストソケットはインテル向けが不振継続で減少、一方でNVIDIA向けを手掛けるOSAT向けなど生成AI関連の取り込みで増加、SAWフィルタなど高周波対抗電子部品向けのYPXはスカイワークス向けがアップルの伸び悩みで減少、全体として増収を確保。利益面では増収効果、90%が海外売上で円安効果が寄与し営利黒字転換に。
無線通信機器(前期よりFC・MD)も売上高27.49億円(46.8%増)、営利2.25億円(3.44億円増、黒字転落)となった。高収益のスプリングコネクタがPOS向けで在庫調整一巡から増収、サムスンワイヤレスイヤフォン向けも増加に転じ増収に。医療用は順調な拡大が続いている。利益面では従来同部門の90%近くの利益を占めていたPOS向けの回復が大きく、医療機器向けの黒字拡大も寄与し営利黒字転換に。
前期より、インキュベーター事業として旧車載通信機器から分離したプラットフォーム事業と先端デバイス(光通信関連)は売上高0.87億円(20.9%減)、営業損失2.05億円(0.25億円悪化)と開発先行で赤字拡大に。
全体を通じ、車載通信機器は円安影響でコストアップがあり営業利益率が25/3Q4の7.8%から4.5%に大幅悪化も同期比では生産効率アップで黒字体質が定着。回路はインテル向けの不振は継続ながら利益では正常化(同期比では従来方式の不採用から大幅減影響で大きな赤字)し円安効果がフルに寄与。無線通信機器も収益性の高いPOS向けの回復が寄与した結果、3事業とも営業黒字に。なお経常利益は計画比円安影響(前提1$=145円に対し155.79円)が加わり、為替差益9.67億円(同期比では4.79億円減)計上、経常利益でも8.61億円の改善となった。
25/3H2半導体、無線回復緩慢で25/3期予想を4.0%増収19.1%経常減予想に減額修正
25/3期会社予想は、昨今のインテルの不振継続、加えて自動車産業での一部顧客の生産調整の発生懸念を考慮、また為替前提も変更したことから予想を減額修正した。25/3H1は売上高400億円(変更なし、8.7%増)、営利18億円(変更なし、黒転)で経常利益11.5億円(1.5億円増額、32.4%減)、税引利益7.5億円(1億円増額、21.8%減)予想とした。また25/3H2を売上高400億円(11.5億円減額、0.3%減)、営利23億円(4.5億円減額、32.4%増)、経常利益18.5億円(9億円減額、7.9%減)、税引利益12.5億円(6億円減額、126.0%増)予想とし、結果として25/3期を売上高800億円(期初計画比11.5億円減額4.0%増)、営利41億円(同4.5億円減額、153.4%増)、経常利益30億円(同7.5億円減額、19.1%減)、税引利益20億円(同5億円減額、32.3%増)予想とした。
25/3H1のセグメント別ではVCCSを売上277億円(変更なし、同期比4.6%増)ながら営利を13億円(4億円減額、81.3%増)とした。これは円安により売上が為替分で水増しされたが円安による原価高が影響、利益率が悪化し利益減額予想に。CTCは売上高72億円(3億円減額、16.4%増)、営利6.5億円(4億円増額、11.11億円改善し黒字転換)予想に。ソリューションユニットの前工程向けがクアルコム向けに堅調な推移、主力インテル向けの低迷が続くも、円安で売上の嵩上げ、利益も円安効果が大きく、収益性が回復し営利黒字予想。但しQ2はスマホ向けが季節性もあり、インテル向け不振のままQ1比較で減益となる見通しと想定している模様。FC・MDは売上高49.5億円(3億円増額、26.8%増)、営利3億円(変更なし、3.46億円改善し黒字転換)予想。主力のスプリングコネクタがPOS、ワイヤレスイヤホン向けに回復、黒字転換とはなっているが、中国勢などの追い上げで収益性が悪化している模様で、円安効果があっても利益は計画並みにとどまる見通し。
25/3H2のセグメント別では為替前提を1$=145円から140円に円高想定としたため、期初計画を減額している。セグメント別でVCCSを売上高274億円(期初計画比5.5億円減額、同期比5.8%減)、営利17.5億円(同変更なし、同26.6%減)予想としている。売上が円安で嵩上げもトヨタの不正影響から一部生産調整があるとして減額、利益は円高方向で原価高が抑制され期初並み確保予想に。但し、同期比では為替円安影響が大きく、営業利益率低下を見込む。CTCは売上高76億円(同4億円減額、同18.8%増)、営利5.5億円(同4億円減額、同8.83億円増で黒字転換)予想と、インテル向けの低迷継続、電子部品向けYPXも回復が遅れ、為替前提見直しもあり売上減額、利益もインテル向け不振、為替前提変更で減額へ。FC・MDは売上高48.5億円(同1.5億円減額、8.5%増)、営利3.5億円(同0.5億円減額、同2.15倍)予想と、為替前提変更影響で多少減額予想に。
全体として25/3H2について収益の減額を行っているが、現状は期初計画の1$=145円に近い推移の方が妥当性ありとみられ、会社25/3H2について、インテルの不振継続とスプリングコネクタの収益性回復の緩慢さはあるものの、期初の25/3H2予想に近い収益が見込め、25/3期としては修正会社予想を若干上回る収益が期待される。
中期経営目標で27/3期に売上高965.5億円、営利109.5億円目指す
同社は中期経営計画として27/3期に売上高965.5億円、営利109.5億円、29/3期に売上高1087.5億円、営利137.5億円を目指す経営目標を公表している。
成長戦略として従来事業の成長・収益基盤強化に加え、新事業の獲得、他社との協業、M&Aも実行し、売上高1000億円超を目指す。VCCS事業は高付加価値品の投入、ADAS製品への参入、CTCでは新たなテストニーズの獲得、M&Aも含め事業拡大を図る計画。通信コネクタではスプリングコネクタのコスト削減、従来参入していなかった価格帯への製品投入でシェア拡大を目指すとした。医療向けではベンチャー等と協業し、新規需要を取り込む。インキュベーションセンターではサブスクビジネスなどで29/3期の収益化を見込む。
現状はCTC事業について、主力の後工程でHPC向けインテルの不振継続が痛手となっているが、非インテル向けの強化、とりわけAI半導体向けは台湾OSAT向けプローブピン供給拡大ではなく、テストソケットでの投入がカギを握る。同社は光電融合などでもアンテナ技術を生かし新製品の開発を行っているが、実用化にはかなり時間を要するとみられる。なお前工程ではクアルコム向けがスマホ向け以外のデバイス向けにも拡大の可能性がある。さらに同社が得意とする高周波対応デバイスでは、ミリ波対応5Gスマホなどの普及でテストソケットニーズが高まろう。またYPXでもSAWフィルタデバイイスなど向けに回復が見込まれる。いずれにしても半導体生産が本格回復からピーク更新に向けて拡大が見込まれ、26/3期にはCTC事業の伸長が期待される。VCCS事業はADAS対応などで新製品投入の計画があるが、具体的に案件が開示されておらず、製品投入は26/3期以降になるとみられる。このため当面はSUVなどに搭載比率の高いシャークフィンアンテナなどの拡大、生産効率の改善による収益確保は可能も、大きな成長は見込みにくい。FC・MD事業はPOS端末向けスプリングコネクタで中国勢などとの競争激化で収益の伸び悩みが続くとみられる。当面はMD事業の拡大、黒字化から収益性向上が見込まれるが、規模的にインパクトが小さく、同事業部門も緩やかな伸びに止まろう。このように、全体としてCTC事業が当面の成長ドライバーとなるが、これだけでは新中計の目標達成はかなり難易度が高いとみられる。
株価は5/14の本決算で24/3期低迷も25/3期営利変化率が高いことから大幅上昇、5/14安値1625円から6/26には2197円の年初来高値更新となったが、その後は半導体関連株の下落、加えて市場暴落で同社も8/5には1482円まで売られた。その後、8/8の25/3Q1決算で25/3期減額修正の開示があり、反発力が弱いままで推移している。現在、25/3期修正会社予想EPS85.80円に対しPER19.5倍はプライム電機PER25.3倍に対し割安であるものの、類似企業の山一電機PER9.9倍、エンプラス15.9倍に対して割高となっている。CTC事業の主力ユーザーがインテルであり、AI半導体向けはピン供給が主であり、前工程のクアルコム向けはブレが大きいなど、26/3期収益拡大期待も最高益更新には届かないとみられる。PBR0.73倍と下値不安は小さいとみられ、ニュートラル継続としたい。
(H.Mirai)
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