【トップインタビュー】異業種と鉄工所を繋ぐマッチングサービス―サキノ精機・﨑野雄生社長

鉄ログのロゴには「失わない」「普段見えない部分を“狙っていく”」という意味を込めて「矢」の字を使用した
産業機械や金属加工部品の製造を行うサキノ精機(明石市、﨑野雄生社長)は7月に異業種と鉄工所を繋ぐマッチングサービス「鉄ログ」をプレオープンした。すでに数件の案件を受注しており、順調な滑り出しを見せているという。﨑野社長に同サービスの特長や今後の展開を聞いた。
--「鉄ログ」を立ち上げたきっかけは
私は「全ての社会課題は金属加工を中心に解決できる」と考えている。しかしながら、一口に鉄工所といっても、メッキ加工や溶接、研磨など得意とする分野はそれぞれで、事業者が自社の案件に適した依頼先を見つけることはとても難しい。そこで、窓口となるようなマッチングサービスがあれば、世の中がさらに便利になるのではと考えた。
また、高い技術を持っているのにも関わらず、それに見合った評価をされていない鉄工所が多い現状に一石を投じたいというのも同サービスを立ち上げた理由の一つ。下請け事業を否定するわけではないが、価格競争の結果、薄利での受注となるケースも少なくないため、鉄工所に下請け以外の選択肢を提供できればと思っている。
――7月にプレオープンを迎えた
スタートしたばかりの「鉄ログ」ではあるが、漁師や幼稚園などからすでに複数の依頼を受注している。1年目は「鉄ログ」としての実績作りを優先しており、受注した案件はすべてサキノ精機で取り組みを進めている状況だ。まずは100件の依頼達成を目指しており、2年目からは登録鉄工所を少しずつ増やしていくことで、本格的なマッチングサービスの開始を予定している。そして、3年目には「鉄ログ」上に常に仕事の依頼がある環境を創り上げたい。
2年目以降は、サキノ精機が窓口となり、鉄工所とのマッチングを支援する形になると思う。当社は製造・加工だけでなく設計も可能な体制のため、サキノ精機が設計を担い、金属加工を行う鉄工所との共同受注というケースも多くなると想定している。
――「鉄ログ」の特長や強みは
「鉄ログ」の特長は、すでに様々な業種へ向けた製作実績がサイトに掲載されていること。顧客は「鉄ログ」を通じて、まずは製作したい製品のイメージに近い実績を探し、そこからダイレクトに相談ができるようになっている。要は、顧客が「こんな感じの製品を作ってほしい」という意図や要望を、製作側に伝えやすい仕組みになっている。そして、その後はサービスに実装しているチャット機能を使い、具体的な相談を気軽かつ円滑に進めることが可能になっている。
先ほど話した通り、サービスの運営者として、基本的にはサキノ精機が窓口業務を担うことになるが、各鉄工所にとっても自由度の高いサービスとする計画だ。「鉄ログ」を通して、自社商品を持つ「メーカー鉄工所」が増えることを期待している。依頼元の皆様には多くの鉄工所とのやり取りの中で、お気に入りの「My鉄工所」を見つけ出してもらえたら嬉しい。
――どういった依頼が行われているか教えてほしい。
「鉄ログ」のテスト段階での案件になるが、地元の漁師からの依頼を受け、オールアルミ製の海苔漁専用船(ハコブネ)をサキノ精機にて設計製作した。ハコブネは一般的にFRP樹脂で製作されるのが一般的だが、経年劣化が進むと、割れ目や隙間から海水が侵入し、船体の重量が増加するという問題があった。一方、オールアルミ製のハコブネは軽量かつ耐久性があり、海洋環境にも強く、長時間の使用に耐えることができる。
オールアルミ製の海苔漁専用船(ハコブネ)
オールアルミ製のハコブネの製造はサキノ精機が初めてというわけではないが、当社では漁師さんのニーズに合わせた設計や機能を重視して商品開発に取り組んだと自負している。例えば、広い作業スペースや船体の安定性を確保することで、漁師の作業効率向上や身体的な負担軽減に努めた。また、ハコブネの縁(角)の部分を丸めるように加工することで、漁師さんの作業着や作業用ロープの摩耗を抑えるなど細かな箇所にもこだわり抜いた。約1年半前に開発してからこれまでに20隻ほど販売している。
――「鉄ログ」の将来のユーザー(依頼元)となり得る事業者の方々へメッセージを
依頼元の事業者様自らが自社商品を開発したいというケースもぜひ「鉄ログ」を利用いただきたい。設計から支援が可能なため「こういう製品があったらいいな」というアイディアの構想でもまったく問題ない。現在も渋谷のごみ問題を解決したいという学生様から相談を受けており、「モノづくりの可能性、めっちゃあるな」と感心したところ。まずは気軽に鉄ログにアクセスしてほしい。
【鉄ログ】
(IRuniverse K.Kuribara)
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