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防衛強める米国 USスチール買収を大統領が阻止か、金属価格低迷が背景に

 バイデン米大統領が日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画について正式に阻止することを発表する準備を進めていると伝わった。中国の「デフレ輸出」のあおりを受け、米国でも鉄鋼をはじめ金属価格の低迷が続く。製品価格の下落が企業業績を直撃する中、自国産業への防衛意識は強まっている。

 

■鉄鋼価格、米国でも2年ぶり安値水準

 

 

 ワシントン・ポストなど複数の米メディアが9月4日、関係者の話として、バイデン大統領が日本製鉄によるUSスチール買収を正式に阻止することを発表する準備を進めていると報じた。日本でもNHKをはじめとする大手メディアが伝え、林芳正官房長官が9月5日の定例記者会見で「日米相互の投資の拡大を含めた経済関係の一層の強化、インド太平洋地域の持続的包摂的な経済成長の実現、経済安全保障分野における協力等は互いにとり、不可欠である」とコメントする事態となった。

 日本製鉄側も「外国投資委員会からの審査結果は受領していない。関係当局による審査開始以降、この買収が国家安全保障上の懸念がないことをアメリカ政府に対して明確に伝えてきた」とコメントした。


 米国でも鉄鋼価格は下落している。米国内のホットコイル価格は8月25日に$688/tonを付けた。7月初旬には$635まで落ちており、水準としては2022年秋以来ほぼ2年ぶりの安値水準にある。コールドコイル価格も8月29日に$940/tonと約1年ぶりの安値に下げた。

 

過去3年間の米国内ホットコイルとコールドコイル価格の推移($/ton)

 

 

 製品価格の下落で企業の懐具合き苦しい。USスチールは9月4日、経営トップが、「買収が成立しなかった場合、老朽化が進むペンシルベニア州にある製鉄所を閉鎖し、本社も移転させる可能がある」と発言していた。8月1日に発表のUSスチールの2024年1-6月期決算は減収減益。同社は労働組合も日本製鉄による買収に賛成していると発表しており、企業や従業員としては救いの手への渇望は強い。

 

USスチールの2024年1-6月期決算概要

(出所:USスチールホームページ)

 

■重要鉱物でも防衛検討

 もっとも、「中国からのデフレ輸出」に悩まされているのは鉄鋼だけではない。米政治ニュースメディアのポリティコは8月29日、「バイデン政権が、安価な中国産材料の流入によって打撃を受けている米国の重要鉱物プロジェクトを支えるために政府が価格介入することを検討している」と伝えた。

 コバルトやリチウムなどの重要鉱物は世界的に価格低迷が続く。コバルトに関しては今年5月、米国のホセ・フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官が、中国企業の過剰生産が価格下落の原因だと指摘し、中国企業の行為は「略奪的な価格設定のバリエーションだ」と非難したと伝わっていた。

 

関連記事: 米国 コバルト過剰の原因は中国CMOCと指摘 | MIRU (iru-miru.com)

 

■防衛相手、同盟国でも敵対国でも…

 重要鉱物に関しては、米国が進める電気自動車(EV)などのサプライチェーン(供給網)上の脱中国依存を視野に入れた措置で、鉱物価格を下支えすることにより、中国に対し出遅れが目立つ米国の鉱物加工業を振興させたい思惑もある。米国のシンボリックな企業と認識されるUSスチールのケースとはやや意味合いは異なる。

 それでも、長引く金属価格の低迷を背景に、米国の産業防衛意識が強まっている面は否定できない。本音では、防衛する相手は同盟国でも敵対国でも大差はないのかもしれない。ワシントン・ポストは、バイデン氏がUSスチールの買収を阻止するならば「同盟国の企業による買収提案を拒否するという驚くべき決断になる」とも伝えた。

 

 

(IR Universe Kure)

 

 

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