世界の鉱業企業は資本不足に悩む 景気低迷下で利益圧力強く、英EYレポート
世界の鉱業企業は資金不足に悩んでいる—国際会計事務所の世界的大手である英アーンスト・アンド・ヤング(EY)が10月1日に公表したレポートによると、世界の鉱業企業が考える2025年の経営リスクでは「資本(Capota)」がトップだった。世界景気の低迷が長引く一方で株主からの利益に対する目が厳しく、利益確保に悩む企業が多いようだ。
2025年の経営について鉱業企業が考えるリスクトップ10
前回調査ランキング
(出所:いずれもEY社ホームページ)
プレスリリース:Top 10 risks and opportunities for mining and metals companies in 2025 | EY Canada
■スリム化で資本不足に対応、地政学リスク警戒
「資本」は前年の同調査の2位から順位を上げた。EYは「利益追求の重圧を受け、各企業は非中核事業をそぎ落とし、他社買収や合弁などを積極化したいと考えている」と説明。「先行きの景気見通しも楽観できないことから、企業は大規模プロジェクトの負担を軽減したいと考えている」とした。
地政学リスクへの警戒も強い。「地政学(Geopolitics)」は前回調査の7位から3位に急伸。ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東紛争、米中対立などを背景とした資源ナショナリズムの高まりが警戒されている。EYは「地域の政府によりプロジェクトに対する姿勢が違う恐れがあるため、企業は特定のプロジェクトに対し異なるアプローチを試みなければならないケースがありそうだ」とした。
■資源枯渇がランクイン、ESGは経営には重荷
一方、トップ10内に初登場となったのは、4位の「資源枯渇(resource/reserve depletion)」と「新規プロジェクト(New Projects)」だ。アンチモンのケースに見られるように、一部の希少な金属は資源枯渇への警戒が根強い。EYは「探査予算は増えているがコストも増大しており、新たに発見される鉱物は減っている」と指摘した。また、「新規プロジェクト」をめぐっては「例えば鉄鉱石は今後も需要の急増が見込まれるが、政府当局の認可手続きの遅れなどから供給が遅れがちで、コストパフォーマンスが悪くなりがちだ」(EY)との問題が見られ、新たな事業が負担になるリスクを生んでいる。
前回調査の首位から2位に転落したが、環境・社会・ガバナンス(ESG)も、引き続き企業の経営にとっては大きなリスクとなった。廃棄物や水を中心とする環境汚染や地域住民との関係性に、企業は細心の注意を払っていることがうかがえる。
(IR Universe Kure)
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