【トップインタビュー】半導体の熱励起を利用した地熱発電―elleThermo・生方CEO

エレサーモのメンバーと生方CEO(中央)
東京工業大学発のスタートアップであるelleThermo(エレサーモ)が開発・研究している「半導体増感型熱利用発電(STC)」は、色素増感型太陽電池における「色素の光励起」を「半導体の熱励起」に変えて発電する熱エネルギー変換技術。室温程度の低温度帯の熱で直接発電ができるため、自然エネルギー普及の新たな一手として幅広い活用が期待されている。生方祥子CEOにSTCの強みや今後の展望を聞いた。
生方CEO
――そもそも、STCの着想を得たきっかけは
きっかけは、3.11(東日本大震災)。私は内閣府のグリーイノベーション戦略協議会のメンバーとして活動していたこともあり、娘には安全な電力を使わせてあげたいという強い想いがあった。当然、原子力が日本にとって重要な技術であることも承知していたが、「原発銀座」という言葉を小学校の授業で教えるほど、原発に依存しなくても良いのではないかと。
原子力に代わる何かを探す中で、日本の地理的に優位性のある地熱を活用できないかと考え、太陽電池の研究者として開発していた色素増管型太陽電池の技術を応用することに行き着いた。
elleThermoを2023年2月に操業したのは、研究室レベルでは長寿命なSTCパネルを製造することができなかったため。例えば、電極と電極を張り合わせるためのノリが既存のものでは適合せず、専用のノリの研究開発が必要となったが、無機材料の准教授としてはそれに着手することができなかった。そのため。会社を立ち上げて、他の分野の研究者や有識者とともにSTCの開発を進めることになった。
――STCの強みとは
地熱を直接電力に変換できる点。一般的な地熱発電は、地中深くから取り出した蒸気で直接タービンを回し発電する仕組みだが、STCは熱源に“埋めて”発電できるため、空間を有効活用することが可能となる。条件を満たす空間であればSTCパネルをラックのように縦に積み重ねても問題ない。熱を立体的に活用できる点が強みとなる。
もちろん、室温程度の低温度帯の熱で発電できることもSTCの大きな特徴となる。弊社では約40度の空間を主なSTCの活用空間として定めており、先日、メキシコのナイカ鉱山で実施した実証試験においても温度42℃、湿度100%の環境条件で、熱エネルギーを電力に変え、小型リチウムイオンバッテリー(LiB)へ充電することに成功した。
人間が耐えられることができる温度帯が約40度であるため、日常的に人間が立ち入るわけではないが人的なメンテナンスが必要となる設備・空間は約40度前後であることが多い。したがって。STCが社会実装可能な段階へと至った際は、鉱山だけでなく、データセンターや放射性廃棄物貯蔵施設などの余剰スペースが新たな熱源となると考えている。
――これまでのプロセスで苦労されたことは
STCのメカニズムを理解いただけないケースが多くあり、必要な支援を得るためにとても苦労した。STCは半導体電極、対極、電解質層からなるシンプルなシート構造で、半導体の中で生まれた熱励起電荷が電解質イオンを酸化・還元して発電する仕組みだが、半導体を専門としていない研究者の中には、その原理が理解できない方もいた。
STCの構成(エレサーモホームページより引用)
また、STCは永久機関であるとの誤解を受けることも少なくない。STCは設置温度で化学平衡に到達すると発電が終了し、スイッチを切って熱を与えると再放電が可能になるが、決して永久に持続するわけではないため、注意していただきたい。当社のホームページでは、半導体の励起電荷による酸化還元や放電回復減少に関する説明動画を公開しているため、ぜひご覧いただきたい。
――研究開発の現状と今後の展望は
STCの原理は確認できたため、出力向上や耐久性向上に向けて研究を進めている段階。2028年末までにSTCの技術を搭載したサーマルパネルを市場投入することを目標としている。実を言うと、28年はSTCを開発するきっかけとなった私の娘が成人する年であり、それまでにSTCをプロダクトとして創り上げて娘へのプレゼントとしたい。
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エレサーモは今年8月、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)をリード投資家とした第三者割当増資により、プレシリーズAクローズにて総額3.6億円の資金調達を実施した。これは、同社の研究やその有用性に対する社会からの期待の表れともいえる。恒温槽の熱を使ったBluetooth通信や、鉱山の熱によるリチウムイオン電池の充電など、これまでにも幅広いユースケースが報告されており、エネルギー問題解決への貢献が望まれている。
elleThermoホームページ
(IRuniverse K.Kuribara)
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