エヌ・ピー・シー(6255) 24/8期WEB決算説明会 ややポジティブ継続
24/8期FS向け寄与し15.8%増収、営利2.5倍と伸張、25/8期15%営利減予想も増額期待
株価円(10/25)842円 時価総額185億円 発行済株22052千株
PER(25/8期DO予:10.7X)PBR(1.87X) 配当(25/8期予)10円 配当利回り:1.2%
要約
・24/8期はFS向け部品納入増、円安が寄与し15.8%増収、営利2.5倍と利益増額着地
・25/8期好採算案件減、円安一服で1.2%増収15.0%営利減予想も今期も部品増で増額期待
・新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す
24/8期はFS向け部品納入増、円安が寄与し15.8%増収、営利2.5倍と利益増額着地
10/15に24/8期決算が開示され、10/17に説明会が実施された。24/8期は、売上高107.97億円(期初計画比4.13億円増額、4/10増額修正予想比1.98億円未達、15.8%増)、営業利益24.36億円(同8.52億円増額、同2.87億円増額、2.5倍)、経常利益24.26億円(同8.42億円増額、同2.71億円増額、2.5倍)、受注高86.02億円(23.0%減)、受注残80.79億円(21.4%減)で着地した。計画に対しFS向けの部品売上が計画を上回り、円安も寄与し利益で大幅増額着地に。
セグメント別では装置関連事業が売上高102.79億円(期初計画比4.14億円増額、4/10修正予想比1.98億円未達、18.3%増)、総利益33.93億円(同9.34億円増額、同2.91億円増額、94.8%増)、営業利益30.70億円(4/10予想比3.09億円増額、2.1倍)となった。今回は全体売上の83%がPV装置向けで占められ、30%程度の伸びと推定、加えて9%程度を占める部品売上も16%程度伸び、一方ではFA装置が45%減推定。PV向けはFirstSolar(FS)向け装置でオハイオ工場増設向け、アラバマ新工場向けがある。また薄膜タンデムパネル用開発向けが予定通り売上計上される。これはFSとサンパワーが「タンデム モジュール」と呼ばれる最先端のソーラー パネルの開発で提携、FSのCdTePV薄膜技術とサンパワーの結晶Siセルを組み合わせた「スタック タンデム」設計により従来のモジュールに比べてエネルギー効率を大幅に向上できる製品。
今後、住宅用としても拡販が見込め、26/8期には量産対応機の受注も期待される。さらにFS工場の高稼働率、稼働台数増に伴い部品販売が計画を上回って推移した。また国内向けではペロブスカイト用パイロットラインも計画通り売上となった。PV以外では一部検収タイミングのずれで売上が 4/10修正時点に対し未達成となったが、利益ではMIX良化、高収益の部品売上増額、円安効果もあり利益が大幅上振れとなった。地域別では米国が79.36億円(2.3倍)と伸張、インドは4.63億円(83.6%減)と納入一巡、マレーシア2.36億円(5.9%減)、ベトナム1.39億円(22.8%減)などとなっている。一方、受注は81.29億円(24.0%減)、受注残78.01億円(21.6%減)に。FS向けではルイジアナ新工場向け装置、既設ライン向け追加装置を受注、国内もPV改造等を受注したが、人工衛星用PV装置受注がプロジェクトの遅れで受注できず、PV装置全体では65億円(29%減)推定に止まった。FA装置も国内電子部品メーカー向けが設備投資遅延で低調、一方、米国日系自動車部品メーカー向けは順調で全体では推定9億円弱(29%増)となった。なお受注残高は部材調達難が緩和、FS向けの順調な出荷で適正水準に近付いた。
環境関連事業は売上高5.17億円(計画通り、18.1%減)、総利益1.86億円(期初計画比0.30億円増額、4/10修正予想比0.18億円増額、7.5%減)、営利1.02億円(4/10予想比0.15億円増額、23.3%減)と、売上が計画通りで利益は好採算のパネル解体装置が堅調で減益幅が計画比縮小した。なお解体装置は国内4社向けに4台、海外3社に4台売上計上した。受注は4.73億円(1.1%増)、パネル解体が2.9億円(4%増推定)で横ばい確保に。
25/8期好採算案件減、円安一服で1.2%増収15.0%営利減予想も今期も部品増で増額期待
25/8期会社予想は、売上高109.25億円(1.2%増)、総利益32.05億円(10.4%減)、営業利益20.69億円(15.1%減)予想とした。受注残高が80.79億円あり、FSルイジアナ向けがQ4に売上計上予定で順調に消化が進む見通し。部門別売上での細目開示は無いが、装置関連事業が推定売上高計画103.5億円(0.7%増)、その他事業推定5.75億円(11.2%増)。装置事業ではFS向けPV装置が減少、国内向けペロブスカイトPV開発装置向けなどは増加、FA装置も検収遅れ分が計上見通しで増加見通し。部品は横ばいを見込む。利益面では国内向けが増加、部品売上横ばいとしてMIX悪化から営業減益を見込むとのこと。但し、FS向けでは毎期同様、期初に横ばい想定も結果として高水準な稼働率、設備台数増などで今期も増収となるとみられ、PV部門の収益の上振れが期待される。環境その他売上はPV解体装置が日本、フランス、チェコ向けなど売上計上見通しで増加、増収増益計画とみられる。全体として今期もPV装置の好調、PV部品の増額、円安継続などで会社計画の上方修正が期待される。受注面では前期比増を見込む(具体的な数字は未公表)。特にFS向けではFSの2024年PV設備投資が18~20億ドル(2023年は13.9億ドル)と拡大予測に。FSの発電受注残高が75.9GW,受注見込みが80.6GW、合計156.5GW予想となっており継続的な設備増強が継続する見通しから、同社受注も下期以降、改めて上伸が期待される。またFSがM&Aで獲得したスゥエーデンのスタートアップEvolar社のペロブスカイトPVの研究開発向けに装置受注を獲得、25/8期に売上計上予定しているほか、量産に向けた受注獲得も期待される。
新中計で前中計比利益増額、27/8期に売上高130億円、営利26億円目指す
同社は中計予想について毎期見直しているが、前中計に対しては利益で大きく上振れたことから、新中計25/8期は24/8期に対し減益予想ながら前中計予想対しては3.69億円上振れた予想数字となっている。今回、新中計見通しとして27/8期に売上高130億円、営利26億円が示されたが、中心となるFS向けは米国国内が中国製PVに対する高額関税もあり国内メーカーへの需要拡大が続く見通しの中でFSの設備増強継続が見込まれる。さらにペロブスカイトPVの本格量産装置受注も期待される。国内においては国内PVメーカーが色素増感を含め薄膜PVを手掛けておらず、FS向けでカドニウムテルル薄膜PV装置を手掛ける同社の薄膜PV装置の電極成形工程やシート積層工程、張合せ工程等で同社技術の活用が可能で、国内のペロブスカイト薄膜PV向けでも生かされるとみられる。また同社はFS社のタンデム型PV装置でも開発に関与、国内も26/8期以降、10億円単位でタンデム型を含め大型のペロブスカイトPV量産装置受注獲得が期待される。さらにPV解体装置では欧州向けに「ホットナイフ分離法」を利用したガラスが再生ガラスの原料として利用し始めている。特にフランスではPV排出パネルの回収量が格段に増加する局面で、今後、全自動パネル解体装置の拡大が本格化しよう。加えてチェコでもチェコ最大の産廃処理業者ASEKOLグループの子会社であるEnviropol社からパネル解体装置の受注を獲得、海外においてリユース規制強化などで更に欧米での受注獲得の拡大が期待される。
全体を通じ、FSの中長期的な需要拡大見通しが定まり、加えてペロブスカイトPV、ホットナイフ分離によるPV解体分離装置の拡大も期待される。改めて同社の成長力が高まり新中計の27/8期収益の前倒し達成が期待される。
株価は4/10の24/8H1決算発表後に株価が急騰、4/12には1050円の年初来高値更新となり、その後も高騰を続け24/8Q3発表の翌日7/10には1497円の高値を付けた。その後は7/13のトランプ氏狙撃未遂などでトランプ氏再選の風が吹いた状況で再エネ見直し機運なども影響、全体相場の下落もあり株価は急落、8/5に745円まで下落した後は緩やかに回復していた。しかし10/10に24/8期増額着地も25/8期減益予想としたことで株価は冴えない動きで推移している。現在、25/8期予想EPS71.88円に対しPER11.7倍は東証グロース市場機械の上場企業が少ないこともあり指標とならないため、東証スタンダードで比較すると機械平均PER11.0倍並みの水準にある。但し同社安値平均PER20.0倍に対し割安と言え、しかも増額修正期待もある。今後、トランプ氏の再選で再エネ投資の見直しが懸念されるが、AIデータセンタ建設でガーファなどが発電設備増強を図る動きもあり、改めて米国でのPV投資拡大機運がある。また、国内ではペロブスカイトPVに対する大型設備助成策も見込まれる。このため、同社収益の拡大が加速する期待もあり、上期は減益となる見通しながら、ややポジティブ継続とする。
(H.Mirai)
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