東京精密(7729)25/3H1WEB説明会メモ ややポジティブからポジティブに変更
25/3期AI半導体向け等好調で7.7%増収10.6%営利増予想に増額も再増額期待
株価8156円(11/1) 時価総額3438億円 発行済株42059千株
PER(25/3DO予:13.5X)PBR(2.1X)配当(25/3DO予)242円 配当利回り:3.0%
要約
・25/3H1は12.4%増収17.7%営利増とほぼ計画通り、受注19.5%増とHBM向け等好調
・25/3期半導体製造装置部門増額で7.7%増収10.6%営利増に増額修正も再増額期待
・26/3期は先端半導体設備投資増から収益上伸し最高益更新期待
25/3H1は12.4%増収17.7%営利増とほぼ計画通り、受注19.5%増とHBM向け等好調
25/3H1決算が11/1に開示され、同日WEB説明会が実施された。25/3H1は売上高714.39億円(期初計画比0.61億円増額、8/2修正予想比14.39億円増額、12.4%増)、営利134.05億円(同5.95億円未達、8/2修正予想比4.05億円増額、17.7%増)、経常利益131.58億円(同6.42億円未達、同1.58億円増額、9.0%増)、税引利益135.50億円(同40.50億円増額、同15.50億円増額、58.5%増)と、固定資産売却益43.03億円があり税引利益は大きく上振れた以外、ほぼ計画並みの着地となった。受注高は711.31億円(8/2計画比7億円未達、同期比19.5%増)とこちらもほぼ計画線で着地した。
セグメント別では半導体製造装置事業が売上高543.26億円(期初計画比、8/2計画比13.26億円増額、15.7%増)、営業利益111.39億円(同期比24.0%増)、受注は517.13億円(同77.17億円増額、8/2予想比2.13億円増額、22.2%増)、受注残高727.85億円(14.1%減)となった。売上面では顧客要求納期に沿った出荷を進め、検査装置340億円(計画比22億円増額、同期比1%増推定)、加工装置203億円(同9億円未達、同期比5%増推定)となった。受注面では検査装置300億円(期初計画比58億円増額、同期比26%増推定)、加工装置217億円(期初計画比19億円増額、同期比17%増推定)となった。検査装置はHBM向けが伸長したほか50%程度とみられる中国向けが引き続き堅調に推移、加工装置も生成AI関連の半導体パッケージ向け需要が寄与、民生向けが低調、パワー系もEV変調で伸び悩むも、全体では先端半導体向けが寄与し上振れした。半導体製造向け売上の地域別では中心となるアジア向けが17%増で50%程度を占める中国、韓国向けなどが好調だった模様。
利益面では増収効果、円安も寄与し若干利益率が向上した。実際は四半期で見るとQ1に利益率の低い製品売上が多く営利率が15.0%に止まっていたものが、Q2は増収効果による利益率向上要因が大きいもののQ1比で9.2ポイント改善し24.2%まで向上している。
計測器事業は売上高171.13億円(期初計画比、8/2計画比13.87億円未達、4.27億円未達、同期比3.3%増)、営業利益22.66億円(5.9%減)、受注194.18億円(期初計画比5.82億円未達、8/2予想比21.18億円増額、同期比12.9%増)、受注残149.11億円(14.2%増)となった。売上では一部案件の納入予定変更が影響、汎用計測が売上高112億円(期初計画比26.75億円未達、同期比9%増)となったことが影響している。受注も汎用計測が自動車・機械部品などの新規設備投資停滞で計画未達成が影響、EV向け2次電池用充放電試験装置は全体の10%の構成比で堅調な伸びに。利益面では売上減額、材料高などもあり営利減に。
25/3期半導体製造装置部門増額で7.7%増収10.6%営利増に増額修正も再増額期待
25/3H1実績を踏まえ、25/3期予想を増額修正、売上高1450億円(8/2予想比20億円増額、7.7%増)、営利280億円(同10億円増額、10.6%増)、経常利益280億円(同10億円増額、5.8%増)、税引利益230億円(同12億円増額、18.7%増)予想とした。
事業別では半導体製造装置事業が売上高1095億円(8/2予想比35億円増額、前期比9.4%増)、計測事業を355億円(8/2予想比15億円減額、前期比2.6%増)とした。半導体事業は、現在、アドバンテストが高機能SoCテスタ需要が急拡大、早晩、遅れて連動する形でプローブ需要の急拡大が見込まれる。AI関連受注も下期堅調に推移、具体的な受注数字は公表していないが上期比20%増を織り込んでいるとのこと。但しAI関連は最低限の数字で、実際には上期比50%増もあるとのことで、半導体事業の収益は下期に再度増額が期待される。利益面でもQ1で製品構成で利益率の低い製品構成が高まったことでMIX悪化があったがQ2で売上高総利益率の改善が進み、下期はQ2水準の利益率確保も可能とみられ、利益面でも下期増額が期待される。
計測機器は売上高355億円(8/2予想比15億円減額、2.6%増)を見込む。上期が売上高171億円(期初計画比14億円減額、8/2予想比1億円増額、3.0%増)と、期ずれの一部が下期納入されるも影響が若干残る見通し。受注は上期194億円(期初計画比6億円減額、8/2予想比9億円減額、12.8%増)と、設備投資の回復が鈍く計画未達に。充放電システムの受注拡大と工作機械向けがボトムから下期に緩やかな回復、自動車向けも内燃機関向けシュリンクが一巡し、受注増を見込む。現状、計測事業について会社修正計画並みの収益が見込まれる。
全体として下期に半導体事業の収益増額が寄与し今回の会社計画の上振れが期待され、受注については下期上伸で26/3期に向け受注残高が積みあがってこよう。
26/3期は先端半導体設備投資増から収益上伸し最高益更新期待
26/3期は生成AI関連の受注、売上の伸長が期待され、加えて3DNAND向けハイブリッドボンディングの新製品、SiC向けにバックグラインダの拡大、さらには難削材の拡大で精密切断ブレードなどの消耗品事業の拡大も見込める。
半導体製造装置事業は検査装置で高付加価値分野、デパート化を目指す。プローバにおいてはハイエンドロジック、メモリにおいてHBM向けの伸長が追い風となろう。具体的にはHBM2、HMB3まで利用していた検査装置はHBM3E、HBM4では使えない検査精度を要求されており、新規需要が生まれるとのこと。特に先端デバイスでは発熱が大きな課題となっている。温度を一定に保つために、従来のチラーコントロールでは100Wレベルしか対応できず、並列や水冷式などの吸熱機能が必要となる。これに対し同社は独自の吸熱材料マイクロセルウレタンフォームを開発、微少な空気穴で熱を吸収し冷却する方式。実際2000Wの発熱事例では同社しか対応できないとのことで、次世代HBM4向けで既に開発用が成約している模様で、SKハイニックスが2026年投入予定を1年前倒しする動きがあり、HBM4クラスが量産開始となると本格拡大が期待される。また加工装置ではSiC向けの拡大、ディスコ70%シェアに対し2位の16%シェアを持つダイシング装置ではここにきてアブレーションダイサを投入、売上拡大を目指す。
さらに化合物半導体向けグラインダの強化拡大が見込める。グラインダでもシェア50%とディスコが先行も、同社はシェア18%程度と推定されるが、精密、高剛性などで差別化を図っている。化合物半導体についてはSiと比較しグラインダ加工時間が数倍かかり消耗品売上も急拡大が見込める。同社は難作材加工では3割程度シェアを持つとのことで、機械剛性でディスコに対し優位性を持っている。またハイブリッドボンディングについては3DNANNフラッシュ向けに試作向けに受注を獲得しているとみられ、25/3期末までに納入の可能性があり、本格量産向けは26/3期に受注獲得が期待され、本格量産となれば月産10台規模で生産するイメージとなるとのことで、26/3期には大型受注獲得も期待される。
計測事業は充放電電池評価の拡大などでトータルサポートシステムを含め、売上拡大を見込む。またEVモーター分野ではシャフトの真円度、同軸度、同芯度評価でも0.01μクラスの精度を測る3次元測定器や真円度・円筒形状測定器が必要で、同社の超精密測定器の需要拡大が期待される。
26/3期は半導体事業でAIロジック半導体、HBM向けの受注・売上の大幅拡大、パワーデバイスでは一服しているSiC設備投資の回復に伴うバックグラインダの本格拡大、遅延している300mmシリコンウエハグリーンフィールド投資向けの売上寄与などで収益上伸が見込める。このため全体として収益上伸から最高収益更新が期待される。
株価は25/3期中計大幅未達予想の悪材料を織り込んだ後、AI半導体関連として上昇、7/11には13800円まで駆け上がり1999年の16900円以来の高値を付けた。その後は生成AI関連の株価下落とともに下落、日経平均が歴史的な下げ幅を記録し8/1終値10260円に対し8/5には6145円まで下落、その後は8000円前後で推移している。現在、25/3期修正会社予想EPS568.57円に対しPER14.3倍(売却益を除くでは16.9倍)はディスココンセンサス32倍、東京エレクトロン28倍に対し割安、日本マイクロニクスコンセンサス16.9倍と同等となっている。今回の会社予想に対し下期増額が期待されること、また受注の伸びが高まっており、26/3期には最高収益更新も期待され、改めて生成AI半導体関連株として評価が高まるとみられ、ややポジティブからポジティブに評価を高めたい。
(H.Mirai)
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